第201話:物騒な巷08
結局のところ、
「全てをバッチリ解決」
という案は出なかった。
鬼一ですらも、
「フォロー外」
と云った様子だ。
そしてアインとソフは夜中の学院街を走って、それによる事象への対処というか適応をせねばならなかった。
ランニングだ。
釣りとも言う。
「お前までついてこなくとも」
とはアインの言葉だが、
「こっちの方が話は早いでしょ」
それもまた事実。
アインの体力は常識の埒外にあるが、
「まぁこれくらいなら」
とソフは同じペースでついてきていた。
此処では割愛するが。
ゾクリと寒気が奔った。
「…………」
立ち止まるアイン。
「?」
困惑のソフ。
闇夜から爪が薙がれる。
「っ!」
背後からだ。
身を低くして避けるアイン。
蹴り上げ。
襲撃者の顎を打つ。
が、意識は刈り取れない。
さらに爪。
躱す。
距離を取る。
「お前は……」
アンデッド……ケイロンがそう呟いた。
「あ、ケイロン」
ソフの今更。
「おやソフ」
ケイロンも当然だがソフを見知っている。
「め、だよ」
ソフは戒める。
「人を殺しちゃ」
「既に遅い」
それもまた確か。
「私が作り替えてあげる」
「遠慮する」
「何で?」
本気で分からない。
そう蒼い瞳で困惑を表現。
「俺は人を超越した」
「アンデッドってだけだよ」
「だからソレが証左だ」
人の捕食。
生物のピラミッド。
人間より更に上位。
そうケイロンは言う。
「楽しい?」
「愉悦だ」
不明なソフ。
断じるケイロン。
血彩の瞳は陶酔を映していた。
「そっか」
納得……ではない。
「じゃあ無理矢理にでも直そっかな」
むしろ宣戦布告だった。
「南無」
アインが印を切る。
「っ!」
危険を感じてケイロンは後方に飛び退く。
「別に乱暴はしないよ」
ソフの言葉はあまりに正しい。
ケイロンが怯えるのはその一点だが。
「お兄ちゃんはどう思う?」
「ソフに任せるより他に無し」
肩をすくめる。
少なくともアインには不可能事だ。
「にゃ」
ソフは嬉しそうに笑った。
殺気が夜風に流れる。
ケイロンのソレだ。
「アンデッド」
アインが言う。
「お前は教会に捕捉されてるぞ?」
「それが何か?」
「駆逐も時間の問題だ」
「可能だと考えてるのか?」
「心配はしている」
紛う事なきアインの言葉。
というか、
「その教会代表が俺なんだよな」
言葉にはせず無明に思う。
「返り討ちにするだけだ」
「意気込みは買うが……」
どうしたものか?
アインとソフの眼での会話。
「とりあえずここは逃げさせて貰う」
血彩の瞳が月光を反射した。
「大丈夫?」
なお心配するのはソフだったが、
「アンデッド故」
ケイロンは論を変えなかった。




