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第20話:国家共有魔術学院13


 それから魔術実践論の講義に出るアインとリリィだった。


 二人が二人でいられたのある意味で僥倖で、昨今の小さく細やかな不幸の前ではどうにもリリィの可愛さが眩しく映る。


 アンネは研究室に用事があるらしい。


 シャウトは少年と一勝負中。


 アインの気疲れもわからないではない。


「馬鹿は何処まで行っても馬鹿だ」


 そんな結論だった。


「そうは言うがな」


 鬼一が思念で話しかけてくる。


「小生にして見ればあれらは中々練度が高いぞ?」


「魔術においては……だろ?」


「しかりじゃが」


 アイン本来の能力には及ばない。


 それがアインと鬼一の通念だった。


 魔術実践論において前半は講義で後半は魔術の実践講義だった。


「ではこれから魔術の実践をして貰う」


 講師がそう云う。


 そもそも魔術を使えなければ国家共有魔術学院には入学できない。


 で、あるため魔術を使えるのは大前提だ。


 実践講義はコロシアムで行なわれた。


 魔術師どうしの決闘に使われる場所だ。


 ここでなら幾らでも魔術を使える。


「魔力は補填されてるかや?」


「一応な」


 鬼一の皮肉にアインは素っ気なく答える。


「しかし面倒くさいことを考えたもんじゃのう」


「俺に言われてもな」


 アインとて不本意な立場であることは自覚している。


 そもそもにして、


「何で俺が魔術師を?」


 と思わざるを得ない。


 馬鹿兄二人のしわ寄せがこっちに襲いかかったのは理解している。


 だからとて、


『魔術の才能が完璧に無い』


 アインに業を押し付けるのは正気の沙汰とは思えない。


「結局巻き込まれるしかないってのもな……」


 思念で語って嘆息。


「まぁきさんは器用だから万事問題あるまい」


「魔術が使えないのにか?」


「今は使えるじゃろう?」


「師匠はマジで人が悪いな」


「若人をからかうのは年寄りの楽しみじゃ」


「殺してぇ」


「やれるもんならのう?」


 ケラケラと笑う鬼一だった。


「何を期待してるんだか……」


 世界を呪うアイン。


「生徒アイン」


 講師がアインの名を呼ぶ。


「何でがしょ?」


 アインは応答する。


「魔術を使ってみせなさい」


「へぇへ」


 そしてアインが学ランの下に隠している精霊石に意志を通す。


 魔力の供給。


 そして着色。


「エアエッジ」


 呪文を唱えると風の刃が具現化した。


 それも生中なモノではない。


 コロシアムの観客席をぶった切って場外にまで届く強力な斬撃であった。


「……っ!」


 リリィ以外の全員がそれに驚愕していた。


「マジか……」


「本当に新入生か?」


「有り得ねぇ……」


 困惑する衆人環視。


 リリィの魔力を持ってすればこの程度はなんてことも無いのだが。


 一々説明するのも面倒くさい


 どこまでもアインはアインだった。


「では次に生徒リリィ。魔術を再現なさい」


「はい」


 頷いて観客席に手を向けると、


「フレイムウェイブ」


 炎の波を再現した。


 灼熱が津波となってうねり狂う。


 結論として観客席は灰へと帰った。


 客席に人がいないのがこの際の安全事案だった。


「すげぇ」


「ふわぁ」


「いいな」


「可愛いし」


 そんな憧れの瞳がリリィに注がれる。


「アイン様……どうでしたでしょうか?」


 リリィがおずおずと尋ねてくる。


「良きかな」


 アインはリリィの金髪を撫でる。


「あは」


 それだけでほころぶリリィの笑顔。


 それは万金にも値する。


「可愛いなお前は」


「恐縮です」


 リリィはニコニコ。


 そんな二人を、


「ぐぬぬ……」


「あうう……」


 衆人環視は睨むように見つめていた。


 男子生徒はアインに嫉妬。


 女子生徒はリリィに嫉妬。


 それほどアインもリリィも魅力的だと云う逆説的証明だ。


「アイン様の魔術の精度も素晴らしかったですね」


「恐縮だ」


 いつもの台詞を口にするアインだった。


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