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第196話:物騒な巷03


 アインは夜の学院街を走っていた。


 いつもの体力作りだ。


 それとは別の意味合いもある。


 アンデッド。


 その拘束。


「どうしたものか?」


 そう云う意味では頭が痛い。


 ヒュルリと殺気が吹き抜けた。


「師匠」


「あいあい」


 手元に和刀が握られる。


 運動着にベルトを回して、そこに鬼一を差す。


「で、何用?」


「バレていますか」


 奇っ怪なマネキンが姿を現わした。


 魔族。


 特にあげつらうほどでもないが。


 元よりその殲滅は代行師の悲願。


「アンデッドだけでも頭が痛いのに……」


 その上魔族が横行すれば精神疲労も五割増し。


「――――」


 魔族に囲まれた。


 言葉を交わした魔族がアインの正面に。


 そしてそれより一回り小さな魔族が左右と後方に。


「…………」


「行きずりの駄賃じゃの」


「そう割り切れればいいんだが」


 スラッと鬼一を抜く。


「争う気満々ですね」


 苦笑に近い声質だった。


「言っとくが契約はしないぞ」


 ケイオス派に零落れるほどアインは賢しくない。


「魔術が手に入りますよ?」


「魅力的な案だが止めておこう」


「剣一本で切り抜けられると?」


「急いては事をご覧じろ」


「殺せ」


 マネキンが下級魔族に指示を出す。


「――――」


 三方から魔族が襲う。


 アインは結界を張った。


 魔術……ではない。


 無論禁術でもない。


 単なる剣術。


 が、その効果は侮れない。


「…………」


 ユラリと脱力。


 魔族の腕がアインに届こうとしたその瞬間、


「――――」


 アインは残像を残して消えた。


「?」


 その残像も闇に溶けて消える。


 魔族がアインを認識した瞬間に、三方からの魔族はそのタイミングを認識されない刹那に、切って捨てられていた。


「――――」


 自身らが何を受けたのかも分からないままに。


「恐ろしいですね」


 マネキンの魔族は苦言を呈す。


「さほどでもないな」


 謙遜では無い。


 アインにしてみれば、


「魔族程度に剣の最奥を見せる気にもならない」


 といったところ。


「ていうかお前らはほんに暇潰しが好きだよな」


 剣をぶらりと垂れ下げてアインは正面の魔族に歩み寄る。


「っ!」


 魔族が魔術を放った。


 風の斬撃。


 アインは切り払う。


 鬼一の魔術。


 アンチマテリアルだ。


「っ?」


「じゃあな」


 アインはサクリと間合いを詰めると、マネキンを縦一文字に両断した。


「ところでだな」


 アインは鬼一に尋ねる。


「魔族ってのはどういう理屈だ?」


「目的は知っておろう」


「存在維持の理屈についてだ」


「どうじゃろな」


「しかし物騒な巷だな」


 辟易。


「アンデッドに魔族の横行か」


「万国ビックリショー……」


「全くだ」


 アインは鬼一を鞘に収める。


「ま、血糊がつかないのは良い事だけどよ」


「そこなのか」


 鬼一のツッコミも冴えない。


「基本的に敵対することも無い気はするんだが……」


 アインにしてみれば魔族は猛獣だ。


 いるだけで人様に迷惑を掛ける。


 そして猟師……この場合は審問官や代行師に駆逐される。


 そんな存在。


「とはいえ敵対してくるのは魔族の方じゃしの」


「否定は出来んが……」


 気疲れ。


 無償労働の一環だ。


 別に金が欲しくてやっている枢機卿でもないのだが。


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