表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
192/242

第192話:アイン・ソフ19


 喪服姿で学院に通う。


 講義を睡眠学習して、時間を浪費する。


 が、そんな当たり前がアインには好ましい。


「ややこしい事態」


 という嵐の前の静けさだと理解しているため、


「なんだかな」


 という気分だが。


 昼食をとりながら講義内容に目を通す。


 リリィが筆記した講義内容だ。


 アインとソフには今更だ。


「つまりこの時のタンジェントが……」


 数学。


 三角比についてだ。


 距離を計る時に良く用いられる知識で、土木や建築に於いては必須技能……ではあるのだが、今の世界では役に立つのかどうか。


 無論アインにしろソフにしろ、そちらの職能は持っていないが。


 色々と講説しているところに、


「此処にいたか」


 少年の声が届いた。


 昨日のソレだ。


「やっほ」


 アインは気さくだった。


 何も考えていない。


 それが下地にはあったが。


「決闘の件は覚えているな」


「一応」


「ついてこい」


 言われて場所を移す。






 中略。





 魔術の修練場の一つにアインと少年は立っていた。


「リリィさんをかけての決闘。始めるか」


「俺のメリットは?」


 別に何かを期待して言っているわけでも無いが、


「そも薬にもならない」


 はアインの本音だ。


「むぅ」


 呻く少年。


「金銭を支払おう」


「要らん」


「女」


「要らん」


「俺の家の発言力」


「まぁそんなところか」


 言ってしまえば、


「無価値」


 に相違ない。


 アインは唯一神教の枢機卿。


 それも教皇レイヴの懐刀だ。


 貴族の発言力がどうのは、


「理論として破綻している」


 も事実の一つ。


 説明できないため、


「じゃ、始めるか」


 アインはサクッと戦闘態勢に入った。


 黒衣礼服。


 所謂基準世界での学ラン。


 その腰に師匠、


「鬼一法眼」


 を差している。


 半身になって柄に手を添える。


「わお」


 とはソフの感想。


 アインの剣術の突き抜け方をよく知っている一角だ。


 魔族すら滅ぼす魔性の剣。


 少年が知らないのも無理はない。


「魔術は使わないのか?」


 少年の具申。


 一応真っ当な疑問ではあるだろう。


 魔術を修める学院での決闘。


 当然、


「魔術師同士の諍い」


 に他ならない。


「剣を握っている場合か?」


 は学院の通念でもある。


「良いから掛かってこい」


 一から説明するのも疲れる。


「では参る」


 少年は手を此方にかざした。


「――ウィンドウェイブ――」


 風の波。


 不可視の津波がアインを襲う。


 が、


「…………」


 一瞬でソレらは霧散した。


「?」


 何が起きたのか?


 少年は捉えられなかった。


 それはリリィも同様だ。


 ソフだけがかろうじて認識している。


 アインと鬼一は言わずもがな。


「防御魔術か?」


 思案する少年。


 そこにアインは気をあてる。


 狙いは首と心臓と丹田。


 正確に突き穿ったが、


「では」


 少年は全く気付いていなかった。


「だよな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ