第19話:国家共有魔術学院12
講義が終わり昼食と相成った。
学院街に出向く。
アインはチキン南蛮定食を。
リリィは唐揚げ定食を。
それぞれ頼んだ。
そして、
「なんでお前らまで付いてくるんだよ……」
アンネとシャウトの存在にツッコむアイン。
「好きだから」
「愛しているよアイン」
「芽が無い恋は諦めろ」
ちなみにアンネは焼き魚定食を、シャウトはアインと同じチキン南蛮を頼んでいた。
「ていうか魔術の研鑽を積まなくて良いのか?」
「そちらについては問題ないよ」
余裕綽々でアンネが言う。
「然りだな」
シャウトも同意した。
「元より魔術の研鑽は怠らないべきだ」
そんな二人だった。
「なんならアインに魔術の指導をしてもいいぞ?」
シャウトはそう言った。
当然慈善事業ではない。
乗っかるほど馬鹿ではないアインでもあるのだが。
チキン南蛮をアグリ。
「アインは風の属性と親和性が高いみたいだね」
「まぁな」
嘘である。
が、バラしていいことでもない。
「リリィは?」
「特に属性に縛られることはありませんが……」
万能である。
器用貧乏ではない。
あらゆる属性の魔術をそつなくこなす。
ファーストワンたる所以だ。
「そういうお前らは?」
アインが問う。
「私は火の属性」
「俺は否の属性だね」
「否?」
「要するに対抗魔術と呼ばれる技術だよ」
ニコリと笑うシャウト。
それは魅力的な笑顔だったが立て板に水である。
そもアインは男に興味が無い。
「ほう。アンチマジックか」
食いついたのは鬼一である。
当然思念による会話。
「アンチマジックねぇ」
面倒くさい。
それがアインの第一印象だった。
「ま、きさんには関係無かろうがな」
「当たり前だ」
あらゆる意味で『意味が無い』のである。
ここで言うことでも無いが。
「で? 風の魔術をどう指導する?」
「使えないわけじゃ無いよ?」
「然りだ」
どうやら器用らしい。
「なら別の生徒を指導しろ」
けんもほろろ。
「アインだからいいんじゃない」
「その通りだとも」
一貫してブレない二人だった。
「その熱量を他に回してくれんかね?」
思念でそう云う。
実際には嘆息しただけだ。
「そう云うな」
鬼一が答える。
「しかしな師匠……」
「きさんの気持ちは分かるぞ?」
「なら同情してくれ」
「しかしてアンネもシャウトもきさんに惚れている」
「知ったこっちゃねえな」
二人に比べればまだリリィの方が魅力的だ。
アインはそう云う。
「然りじゃな」
からからと鬼一は笑った。
「こっちとしては笑い事じゃ無いんだが」
そんなことを思っていると、
「シャウト先輩!」
第三者の声が響いた。
定食屋に幼い声が響く。
そっちを見れば礼服を着た少年が立っていた。
「なんだい?」
シャウトは余裕だ。
「僕と……付き合ってください……」
「う、わーお」
疲労の驚愕を口にするアイン。
「可愛い子だ」
シャウトは赤面する少年のおとがいを撫でる。
そして蠱惑的な表情をすると、
「一夜の夢であれば提供できるがどうかな?」
「お願い……します……っ!」
少年は真っ赤になってポーッとシャウトを見つめる。
「モテモテだな」
皮肉を言うアイン。
「嫉妬かい?」
「脳に深刻な障害があるな」
やはり皮肉るアインだった。
そしてシャウトと少年は二人そろって店を出た。
おそらく抱くのだろう。
それだけは確実だ。
「性病で死ねばいい」
アインはポツリとそう言った。