表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
188/242

第188話:アイン・ソフ15


「リリィさん!」


「はあ……」


「俺と付き合ってください!」


「謹んで申し訳ありません」


 サックリ否定した。


「そうなるよな」


 とはアインの心中。


 学院は貴族が基本だ。


 であるため、此度の愛の告白も貴族の嫡子。


「俺ならリリィさんを幸せに出来ます!」


「もう幸せですので」


 ギュッとリリィはアインの腕を抱きしめた。


「そんな男が――」


「愛しております」


 有無を言わせぬ口調。


「それにアイン様はノース神国の大貴族でありますから」


「ぐ……」


 それ以上言葉が出ないらしい。


 ノース神国。


 唯一神教の聖地。


 つまり世界で最も貴重な座標。


 その土地を管理する大貴族となれば、ある意味で小国の王族より権威が高い場合もないではない。


 アインは、


「何の自慢にも為らんが」


 とこぼしたが。


「受け止め方は人それぞれじゃな」


 鬼一はいつも通り。


「師匠が羨ましいよ」


 アインの心底。


 そこにペチッと柔らかな何かが叩きつけられた。


「?」


 意味不明なアイン。


 見れば手袋だった。


「何のつもりだ?」


「決闘を申し込む」


「…………」


 意味が、というよりテンションが、意味不明だった。


「決闘?」


「リリィさんを賭けて勝負しろ!」


「めんどい」


 そのあたりはアイニズムだった。


 基本的に、


「面倒が嫌い」


 を第一義とする。


 かといってトラブルに巻き込まれるのはいつものこととも言えるが。


「暴力で俺を排してリリィがお前に懐くと思うか?」


「お前よりよほど俺の方がリリィさんを愛してる!」


「さいか」


 頷くアイン。


「で、リリィはどうなんだ?」


「有り得ません」


 断じるように言ってのけた。


「まぁそうだよな」


 とアイン。


「にゃはは」


 とソフ。


「お兄ちゃん?」


「何だ?」


「全力で相手すれば?」


「断る」


「騎士道に悖る気か!」


「騎士じゃないからな」


 むしろ枢機卿だ。


 有り体に言えば、


「男子の家名にギロチンが設置してある」


 という状況。


「レイヴが何と言うか……」


「面白がるじゃろ」


 真理だ。


 その結論にはアインも納得できた。


 鬼一の認識は普遍的で抗しがたい。


「決闘を拒否するならソレも良かろう!」


「良いのか。なら拒否する」


「その場合、俺は不戦勝でリリィさんを囲うがソレでも良いな?」


「えー」


 色々と複雑な少年模様。


「では決闘だ」


「どう思う?」


 アインは鬼一を通して全員に問う。


「面白かろう」


 と鬼一。


「アイン様の格好良いところを見たいです」


 とリリィ。


「暇潰しには最適にゃ」


 とソフ。


「気楽でいいな。お前らは……」


 当事者は肩をすくめる。


「で、スケジュールは?」


「別に客を呼ぶ必要も無かろう」


 もとが個人の縁だ。


「修練場を借りて一対一。魔術あり武器ありの勝負だ」


「へぇへ」


 こと此処まで来たら否定するのも面倒だ。


 言葉の意味で肯定する。


 もっとも、


「なんでこうなるかね?」


「天運じゃろ」


 運命の神様を恨んでみたり。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ