第186話:アイン・ソフ13
朝の素振りを終えてアインはリリィと朝食を共にする。
ついでにソフも。
ハグハグと食べる。
「美味しいです」
愛らしく、かつ率直。
「恐縮です」
その反応に満足げなリリィだった。
「で、ソフの展望は?」
「お兄ちゃんとイチャイチャ!」
「かか」
大笑する鬼一。
蹴飛ばす。
「暴力反対」
「じゃかあしい」
いつもの漫才だ。
「さて」
食事を終えて身支度。
「とりあえずはまぁ学院に行きますか」
ということになった。
登校すると余計に人目が気になる今日この頃。
アインは美少年だ。
「格好良い」
より、
「甘やかなマスク」
だが、事実さえ知らなければ、爽やかな美少年で通る。
なお成績優良者としても通っているため注目には値する。
リリィとソフは美少女だ。
金髪と蒼髪のソレ。
二人揃ってアインに纏わり付いているため、
「何事か?」
は衆人環視の一致するところ。
リリィは時折愛を囁かれるが、かぶりを振るに留める。
そもそもがアインの愛人。
アインと子を為すための政治的道具だ。
「別に気にしなくても良いぞ」
とはアインの心配だが、
「いえ」
とリリィは言うのだった。
特に事情は知らずとも、アインが魅力的な男子であるのはリリィの了解するところだ。
「趣味が悪い」
とアインは言うが。
「ていうか」
鬼一の柄頭をチョンチョンと叩きながら、
「お前に講義はいらんだろ」
アインはソフに突っ込む。
事実その通りだが、
「お兄ちゃんが言う?」
それもまた確か。
講義という講義で寝こけて、テストで満点取ればそれはもうチートだろう。
原義じゃ無い方で。
「お兄ちゃんには専属コーチがいるからね」
「かか!」
大笑する鬼一。
「師匠も止めろよ」
「構うまいよ」
それが鬼一の結論だった。
「どちらにせよ平穏とは程遠いじゃ」
「…………」
口をへの字に歪める。
反論できないのは痛いところ。
納得もまた出来ないが。
「そもそも魔術の講義を受けるのが無駄」
でファイナルアンサー。
一般教養の方も文明を先んじている。
「だから何だ」
と言われればソレまでだが。
「付き合いも社会の内か」
そんな問題でも無かろうが、
「じゃの」
「にゃあ」
鬼一とソフは同意見らしい。
ソフは学院に在籍するつもりは無いらしい。
元より大学に近いシステムであるから、
「講義に忍び込むのは簡単」
と言える。
ただ貴族の血統を持たない一般人は、魔術の講義をされても、
「意味不明」
で終わってしまうため、結果として差別意識が育つという都合。
「俺も魔術は使えないんだが」
思念で講義。
鬼一が呵々大笑。
「お兄ちゃんにはいらないでしょ」
背景を知っているソフはクスリと。
「因果な渡世だ」
お兄ちゃんに相対した悪鬼が言いそうな言葉ではある。
即ち、
「因果はお前だ」
とのこと。
「お兄ちゃんは後悔してるの?」
「まさか」
「じゃの」
「師匠のおかげで暗雲が晴れたんだ」
「それにしては扱いが雑じゃが……」
あえてスルー。
「別にそれだけじゃないが……」
ウィンク。
軽やかだ。
「前向きの一つの因子だな」




