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第185話:アイン・ソフ12


 ソフとの再会もそこそこに、


「…………」


 アインは運動着姿で学院街を走っていた。


 食人鬼注意報発令。


 夜は何時もより静かだ。


 死体も出たため、説得力も加味される。


 アインの場合、


「どうでもいい」


 という案件だが、


「まさか」


 が一般人の反応。


 人を喰らうモンスターはいる。


 魔族やケイオス派とは違う意味での天敵だが、


「まぁなぁ」


 此度は少々厄介だ。


 ソフの言葉を信じるなら、


「アンデッド」


 そんな存在。


 正に、


「襲ってくれ」


 と言わんばかりのアイン。


 静かな夜のランニング。


「状況は?」


「こちらでは確認できません」


 鬼一を通してライトと会話。


 学院にいる教会協会が此度のアンデッドを探して東奔西走している次第だ。


 アインを枢機卿だと知っているのはライトだけなので、その辺は臨機応変に対処しなければならないというか。


 鬼一は寮部屋にいるが、


「そもそも時間と空間の操作なぞ些事」


 という規格外であるため、帯刀していなくとも思念チャットは可能だ。


「猊下は……その……宜しいので?」


「治安維持も唯一神教の大義だからな」


 心にも無いことをいけしゃあしゃあと。


 そんな人間性はライトも慣れている。


「さてどうしたものか?」


 考えながらランニングしていると、


「――――」


 殺気がアインを襲った。


 呼吸。


 脈拍。


 衣擦れの音。


 ソレらの総合がアインに敵の察知を授ける。


「――――」


 吠えず。


 呼気一つ。


 暗がりから襲いかかる食人鬼。


 改めアンデッド。


 鋭い手刀。


「懲りないなお前も」


 アインはその手刀の手首を掴んで合気の要領で叩きのめす。


「がはっ!」


 呻くアンデッド。


「判断は任せるが」


 アインは素朴に言う。


「お前の奇行は教会協会が知っているぞ」


 唯一神教の暴力装置。


 その代表だ。


「なら喰うだけだ!」


「気合いは結構」


 意気込みも大事だ。


「ただお前をどうにかするつもりが俺には無いのがなぁ」


「…………?」


「…………」


 叩き伏せられたアンデッドを蹴り飛ばすアイン。


 腹に一撃。


 ソレを以て距離を取る。


「よくも……!」


 すぐに再生するアンデッド。


「お前、名は?」


「ケイロン。そっちは?」


「アインだ」


「アイン……?」


 心当たりがあるらしい。


「じゃの」


 とは鬼一。


 ソフと友誼があればアインのことは知っていて当然だろう。


「貴公が?」


「信じなくとも構わんがな」


 サクリとアイン。


「さて、ケイロン」


「何だ?」


「実力差の認識は?」


「ぐ……っ!」


「ちなみにもうすぐ審問官が来るぞ」


 そういうアインは、


『代行師』


 なのだが。


「時間は然程無い。賢明な選択を」


「あなたは本物ですか?」


「喰えば分かるんじゃないか?」


「ではそうしましょう」


 そう言って闇の溶けるアンデッド……ケイロン。


「あなたの手品は私が与ります」


 そしてアンデッドの気配は消えた。


「それが出来るなら世話ないんだが」


 誰に向かってか。


 月を見上げて。


 アインはポツリと漏らした。


 南無阿弥陀仏。


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