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第175話:アイン・ソフ02


 神都を出る。


 クイン家の馬車に乗って国際共有魔術学院へ。


 途中の旅で傭兵に出会って、彼から委細を聞く……というか言われなくても報告の義務があったとでも思われたのか。


「この辺りに根を張っていた山賊は駆逐しました」


 敬礼して説明してくる。


 ギルドの傭兵らしい。


 チップを渡す。


「つまらんのう」


 とは鬼一。


「ま、殺人はそっちに任せた方が都合も良いだろう」


「ではあるんじゃが」


 その辺は弁えている。


「治安維持も仕事の内か」


「山賊が出るからギルドも安泰というのは皮肉じゃがの」


「因果としては良く出来ている」


 そこは通念だ。


「アイン様なら鎧袖一触では?」


「山賊に後れを取ることは無い気もするが……」


 元の素養。


 鬼一の指導


 そして先天的な才能。


 ある意味で、


「人間を止めている」


 と評せるが、


「面倒事は嫌いだ」


 それもまた事実。


「はあ」


 とリリィ。


 攻性魔術に於いては一家言持つ魔術師だ。


 特筆すべき戦闘能力は獲得していないが、


「一対一」


 かつ、


「ヨーイドン」


 で始めるなら、おそらく勝率は高い。


 アインとはさすがに比較も出来ないが。


「チップを払う必要があるのですか?」


「貴族が金銭を回すという意味では有益だろ」


 前提が消費物だ。


 使わなければ意味が無い。


「それより問題は学院だよな」


 前期試験を受けて暇潰しに解答。


 結果として成績優良者に名を連ねてしまった。


 鬼一の教養もあって、この世界の勉学以上の知識を保有するアインだ。


 正直なところ、


「何故学院に通っているのか?」


 そこから既に不明だ。


 無論建前はある。


「魔術師になること」


 クインの願いでもある。


「無理だろ」


 が率直な意見だが、


「好きで貴様を立てていると思うか」


 クインの心情はそんなところ。


「背景をぶちまければ解決もするんだろうが……」


 嘆息。


 出来れば苦労は無い。


 そんな風に収束する。


 南無三宝。


「迷惑でしたか?」


 リリィのか細い声。


「そこで自責するのはお前らしいが自惚れるな」


「…………」


「場合によっては力尽くで事態を解決するだけだ」


「出来ますか?」


「俺を信じられないか?」


「ズルいです」


「褒め言葉だ」


 アインは失笑した。


 他に出来ることがない。


 それもまた事実だが。


「嬢ちゃんは優しいの」


 鬼一の嬉しそうな声。


「普通のつもりですけど……」


「かりにそうなら人類は世界平和を獲得しとるよ」


「だな」


 アインも鬼一に同感だ。


「然程でもないつもりなのですけど……」


「いい子いい子」


 頭を撫でる。


「あうぅ」


 真っ赤になるリリィだった。


「可愛いな」


「じゃの」


「なら」


「なら?」


「抱いてください」


「却下」


「うぅ……」


「俺が家督を継いだら自由にしてやるから」


「それは……っ!」


「無論リリィの家族も蔑ろにはしない」


「そこまでは甘えられません」


「身一つで純潔を売ったお前が言うか?」


「あう」


 こういうところは乙女らしい。


「ま、気が向いたらな」


 他に言い様もない。


「じゃの」


 鬼一も似たような感想らしかった。


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