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第17話:国家共有魔術学院10


 這々の体で親衛隊が逃げ出すと、サークル棟の裏に残ったのはアインと青年シャウトの二人だけとなった。


「ども」


 手を上げるアイン。


「助かった」


 目上に対してもアインは不遜だ。


 が、シャウトはそれを咎めなかった。


「正義として正当なことをしたまでだよ」


 明るく言う。


「ではこれで」


「待ちなさい」


 シャウトが声をかけてくる。


「何だ?」


 面倒事は御免だった。


「少し茶に付き合ってはくれぬか?」


「奢りか?」


「だな」


「俺に構ってどうしようと?」


「怖い思いをしたろう?」


 シャウトは言う。


「であるからアフターサービスだ」


 シャウトはそう言ってのけた。


「特にそんなつもりはないがなぁ」


 思念で答えて頭をガシガシと掻く。


「きさんはほんに面倒事に絡まれるのう」


 鬼一は呆れたらしい。


 気持ちはアインも一緒だ。


「とりあえず茶にしよう」


 そういうことでそういうことになった。


 アインとシャウトは学院街の喫茶店に足を運んだ。


 そのテラス席で対面に座って紅茶を飲む。


 シャウトはオペラをフォークで崩して食べる。


 アインは紅茶のみを頼んでいた。


「アインはどこの家系だい?」


 紅茶を飲んでいるとシャウトがそんな質問をしてきた。


「ノース神国。そのクイン家だ」


「ほう。中々の出じゃないか」


「そういうそっちは?」


「ウェス帝国の貴族だ」


「大陸間戦争の真っ最中だろう?」


「俺には関係ないがね」


 オペラを食べながらサクリとシャウトは言ってのける。


 どうやら魔術に魅せられた奴らしい。


 そんなことをアインは思った。


「どう思う師匠?」


「ま、魔術師ということじゃろう」


「だな」


「問題は」


「問題は?」


「意識が那辺にあるかじゃな」


「どういう意味だ?」


「それはこれからわかる」


 思念で答えて鬼一は口を閉ざした。


「何なんだ……」


 ぼやくアイン。


「何がだい?」


 シャウトが問う。


「なんでもね」


 アインははぐらかした。


 元より鬼一法眼を紹介する気は無い。


 であれば誤魔化すより他にない。


「アイン?」


「何だ?」


「君は愛らしいね」


「恐縮だ」


「しかもクイン家と来る」


「出生の功績は俺のものじゃないがな」


 皮肉を交えずにはいられないアインだった。


 そに答えるようにシャウトはぶっちゃけた。


「君。俺の愛人となりなさい」


「…………」


 さすがに絶句せざるを得ないアイン。


「だははははっ!」


 鬼一、大爆笑。


「笑い事かっ」


 深刻に状況を案じるアイン。


「俺にそっちのケはねえよ」


 紅茶を飲みながらそう云うと、


「――チャーム――」


 とシャウトが呪文を唱える。


 チャーム。


 魅了の魔術だ。


 人を恋に落とす魔術でもある。


 が、


「親衛隊よりもタチが悪いなお前」


 アインは平然としていた。


「暗示が利かない……?」


 さもあろう。


 魔術による洗脳はさして珍しいことではない。


 そしてソレに対抗する技術も豊富だ。


 特に暗示に関してはアインは意識だけではね除ける才を持っていた。


 鬼一の鍛錬のおかげだが。


「男に抱かれる趣味はなくてな」


「男色は貴族の嗜みだろう?」


「別の人間でやってくれ」


 疲れたように嘆息するアインだった。


「最近嘆息してばっかりだな」


 そう思わざるを得ない。


 面倒事が次から次へと襲ってくるのだ。


 致し方ない。


 そうには違いないのだ。


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