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第148話:背信の魔窟12


 次の日。


 街に震撼が走った。


 帝立魔術学院。


 その学院都市全域にレイヴの旨が通達されたためだ。


「剣聖のガギア帝国派遣」


 剣聖。


 名をアイスという枢機卿。


 教会の最高顧問であり、ノース神国の保有する切り札の一つ。


 一部で、


「内政干渉も甚だしい」


 との異論も出たが、ガギア帝国内での不満に限る。


 魔族の跳梁跋扈。


 聖地侵略を企む外交的失策。


 ケイオス派を部隊編成する。


 エトセトラ。


 ノース神国を含むガギア帝国に隣接した国々は、


「まさか」


 というより、


「やはり」


 と云った感想だ。


 ガギア帝国はノース神国侵攻に際して政治的理由で掣肘しようとした隣国の国境沿いの戦力を駆逐している。


 二正面作戦に出なかったのは、当然とも言えるし作為的とも言える。


 で、


「ガギア帝は何を考えているのか?」


 との疑問が浮かぶわけだが、


「さてな」


 がアインの結論だった。


 特に王侯貴族の乱心は珍しくも無い。


 鬼一と出会ってからその手の与太話には数える程度に首を突っ込んできたアインでもあった。


 であるから今更どうこう言う気も無い。


 情報源はあるが、全てはコロネの仇を討ってからのこと。


「剣聖枢機卿が」


 とは市民の反応。


 特に目立つのが帝都と学院都市。


 帝都の方のざわめきは当たり前だがアインの範疇外。


 そも馬で何日かの距離にあるため耳に届くには時間がかかる。


 対する学院都市側の反応はホテルから窓を眺めやるだけで受け取れる。


 だれしもそわそわしているが、


「さてケイオス派の心境は?」


 意地悪くそうも思う。


 とはいえ学院街周りの意見は好意的だ。


 それはそうだろう。


 魔族とケイオス派が闊歩すれば畏れるのが一般市民。


「迷惑そのもの」


 が根幹にあり、


「剣聖枢機卿がいらっしゃる」


 は福音だ。


「ワールドキャンサー」


 たまに鬼一は魔族をそう定義する。


 人類の否定。


 人類の反動。


 皮肉のスパイスは利いているが、アインも感想としては順ずる。


「で、施術の必要あり」


 で剣聖が関わるわけだ。


「もしかして枢機卿ってブラック企業か?」


 そんなことを思う。


 唯一神教において淡泊なのはアインの悪癖。


 その根幹は鬼一による魔術指導とインテリジェンスデザインの講義による物だ。


 フラスコの中の世界。


「ま、別段きさんがきにすることじゃないんじゃが」


 呵々大笑する鬼一だった。


 日の昇らぬ北方はガギア帝国。


 一人対一国の戦が始まる。


 足がかりは学院都市。


 その魔窟に潜むケイオス派。


 日課の鍛錬をこなしながらアインは夜を待った。


 別に魔族は吸血鬼ではないため昼間に行動できないではない。


 が、今回に限って云えば夜間が動きやすいのも一側面。


 何せ昼間の学院街の市場は盛り上がる。


 そして『何故か』ケイオス派は、


「自重」


 という言葉を覚えたらしい。


 幾つか推論はたつが、アインとしても根こそぎ滅ぼすつもりで居るためスケジュールの管理程度はする。


「ていうか」


 木刀を振りながらアインは反芻する。


「そもそも自分は何をしているのか?」


 怒りはある。


 憎しみもある。


 悲しみも悔やみも。


 あるっちゃある。


 が、


「なんでせっかくの夏期休暇を国政に充てているのか?」


 知られちゃいけないデビルマン。


「枢機卿としてなら真っ当じゃろ」


 常識論の体を為してはいるが皮肉にしか聞こえないのが鬼一の悪いところ。


 常日頃の態度の結果とも言える。


 アインとしても愚兄の尻ぬぐいで色々と、


「ややこしいことに巻き込まれている」


 との不満はあれど、


「レイヴには逆らえんし……」


 嘆息して木刀を振るう。


 鍛錬が終わると冷水で体を清めてタオルで拭う。


 月の出る夜。


 血みどろの制裁が始まる。


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