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第146話:背信の魔窟10


 とりあえず魔法陣も消去してやることはやった。


「あー、後味の悪い」


 言葉ほど参ってはいないが、それでも思うところもあるらしい。


 ギルドに顔を出して、チョコレートを頼む。


 苦々しさが心地よい。


「何かしら苦慮している様ですね」


 カウンター席の反対側。


 マスターがグラスを磨きながら尋ねる。


「知っているのか?」


「スラム街の子どもを使って情報収集しているのは」


「ああ、なる」


 それはまぁ子どもが派手に動けば耳にもするだろう。


「学院長は見つかりましたか?」


「どうなんだろなアレは?」


 自問するアインに、


「?」


 意味不明なマスター。


 事実を述べても良いのだが、別に苦い思いをする必要もない。


 チョコレートを飲む。


「どうする気じゃ?」


「レイヴの管轄な気もするが……」


「審問官の派遣かや」


「以外に無いだろ」


 憮然として言う。


 そこに、


「此処に居ましたか!」


 コロネの声が聞こえた。


 審問官。


「よう」


 チョコレートの入った陶器を持ち上げる。


「教会に居ないから心配しました」


「こっちの台詞だ」


「殿下は?」


「ノース神国に向けて南下」


「そうなのですか?」


「そうなのです」


「ふむ……」


 天井を見上げるコロネだった。


「それで?」


「とは?」


「あなたは此処で何を?」


「チョコレートを嗜んでますが?」


「まさか一人で殿下をノース神国へ?」


「はあ、まあ」


 他に言い様もない。


 目眩を覚えたらしい。


 双眸に手を当てるコロネ。


「それが那辺に起因するか?」


 はアインの知ったことではなかったが。


「そういうお前は今まで何処に?」


「学院の浄化です」


「まぁ必要悪ではあるよな」


 そういう問題でもない。


「とりあえず注文くらいはしろよ」


 マスターを指差す。


「ジュースを」


 ソフトドリンクを頼んだのは良心故か。


 特に案じる件でもないが。


「街での魔族とケイオス派の動向は?」


「知らんよ」


 枢機卿としては有り得ない言葉だが、今のアインは流浪人だ。


 ぼんやりとチョコレートを飲みながら、


「…………」


 無言で回避行動を取った。


 残像がナイフに切り裂かれる。


「何のつもりか……なんて聞くのも野暮だな魔族には」


「抜け目のない」


「いや順当な結果だが」


「なに?」


「腐敗臭くらい処理しておけ。死人が動くなら警戒もする」


「ふむ」


 一考に値したらしい。


「大河の前の一滴だがな」


 チョコレートを飲み干して、カウンター席に置く。


 それから鬼一法眼をスラリと抜いた。


 同時にがたりとテーブル席で動きがある。


 傭兵や冒険者の類だ。


 ギラギラと殺気を放ってアインを見据える。


 襲ってきたのはほぼ同時だが、アインにしてみれば連携の取れていない襲撃の一つに過ぎない。


 加速。


 ヒュンと鬼一が風を鳴らした。


 コロネの双眸が切り裂かれる。


 ついでケイオス派の処理。


 目を切り裂いて腱を斬る。


 全てが一瞬だ。


「コロネ」


 アインは穏やかに名を呼んだ。


「残念は主の腕手の中で懺悔しろ」


「何を……!」


 それ以上言えなかった。


 まるで手品のようにフツリと消える。


 空間転移……ではない。


 禁術も基礎は基礎。


 質量の引き算だ。


 跡形もなく消え失せる。


「最近こんなんばっかりじゃの」


「だぁなぁ」


 反論の気力もアインには無かった。


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