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第144話:背信の魔窟08


 アインの朝は早い。


 早朝に起きて木刀による素振り。


 朝日が地平線から放射されるまでひたすら振り続ける。


 型を体に馴染ませるためだ。


 それから井戸で水を汲んで汗を流す。


 ここまでは何時ものこと。


 黒衣礼服に着替えて腰に鬼一法眼を差すと、アインは市場に顔を出した。


 先に述べたように流動性は良い。


 であるため食事にも事欠かない。


 朝食を食べ終えて、仕事に従事する。


 ノース神国の間諜。


 情報屋に安くない金銭を支払って帝立魔術学院の学院長の足取りを探る。


 この都市の浄化。


 それも一つの仕事だ。


 なお自然発生は魔族の常ではあるのだが、どう考えても学院街の侵食率は常軌を逸している。


 先の学院祭の一件と同じだ。


 誰かが魔族を召喚している。


 いっそ自然な考えと言えた。


 それからスラムにも足を運ぶ。


 ガラの悪い人間から貧民まで多種多様だ。


「いつの世も金持ちとは貴族と商人と宗教家……ね」


 アインも枢機卿なので此処に含まれる。


「良い度胸してるな兄ちゃん」


 いかにも、


「荒くれです」


 とオーラで体現している男が絡んできた。


「もちろん暴力に訴えるなら死ぬ覚悟も出来てるんだろうな?」


 アインとしてはむしろ当然の思考だ。


 殺人はタブーだが、お仕置きの全てを否定するもものでもない。


「…………」


 裂帛の殺気を放って鬼一の柄に手をやる。


 その濃密な武威は荒くれ者をして黙らせた。


 というより退散させた。


 次に絡んできたのは少年少女だ。


 おこぼれに与りたいらしい。


 むしろそっちが本命だ。


「あー……」


 と少年少女を連れて市場へ。


 マトモな食事をとらせてハートキャッチ。


「学院長を知ってるか?」


 教会で保護して、スラムの少年少女らに問う。


「がくいんちょーって魔術学院の?」


「そ」


 リンゴを囓りながらアインが問う。


「見たことあるかも」


 とはその内の一人。


「とりあえず」


 とアイン。


「探して見つけてきてくれ。代わりに食事は提供しよう」


 そうアインが交渉すると、


「わぁ」


 とスラム街の少年少女らは瞳を輝かせた。


「じゃあお兄ちゃんは待ってて!」


「あいあい」


 そんなこんなで情報屋とスラム街の住人を動かすのだった。


 そのアインはといえば鍛錬に時間を当てる。


 学院長の行方を捜すのは任せているので、後は報告を待てばいい。


「大変じゃの」


「まぁ慣れたな」


 鬼一の皮肉にアインはサッパリという。


「何はともあれ」


 剣を振るう。


「学院街の浄化も必要だろうし」


「コロネはどうする?」


「知らん」


 薄情極まりないが、


「審問官にとって死は殉教」


 も確かだ。


 とりあえずは先送り。


「さて」


 とアイン。


 鍛錬の後に汗を流して、黒衣礼服を纏う。


「人はパンのみに生きるにあらずとは言うが……」


 パンがなければ餓死するのも必然。


 そんなわけでスラム街から連れてきた少年少女たちを定食屋に連れて行く。


 縁のない場所なのだろう。


 少年少女らはオドオドしていた。


「好きな物を頼め」


 むしろ情報の対価としては抑えめな方だ。


「本当に良いの?」


「構わんよ」


 さして痛む懐でもない。


 そんなこんなで少年少女に食事を振る舞って、情報を得る。


「ええと、スラムの一角で姿を消したって情報が」


 少年の一人が報告する。


「さいか」


 とアイン。


「情報屋より役にたつの」


「人海戦術」


「じゃな」


 そんな感じ。


 それからアインは詳しい場所を聞いて、少年少女に禁術をかけた。


 特になにがどうのでもない。


 ジリアと同じ事をしただけ。


 違いがあるとすれば転移座標の違いだろう。


 ノース神国の教会。


 要するに貧民を与る良心的な場所だ。


 レイヴにも話はつけてあった。


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