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第14話:国家共有魔術学院07


 次の日。


 その早朝。


 日課として寮の裏で素振りをし部屋に帰ると、


「やーほー」


 ダイニングからアンネがヒラヒラと手を振って迎えてくれた。


「何かご用でも?」


 言外に、


「帰れ」


 との意を含んだ言葉だったが、表面的にアンネは無視した。


「お姉さん、アインに惚れちゃった。これからは仲良くしようね?」


「お前なら男なんてよりどりみどりだろ」


「だからアインなんじゃない」


 言っている意味が分からない。


 半眼でそうツッコむと、


「普通の男の子なら一目で私に惚れるのね」


「魅了の魔術でもかけてんのか?」


「素で」


 さもあらん。


 垢抜けた美少女であるから惚れた腫れたは日常だろう。


「そんな下心を持たない男の子。それがアイン」


「ぞんざいに扱われただけなのによくまぁそんなポジティブシンキングが出来るな」


「良い性格してるよね」


「恐縮だ」


「だから可愛いんだけど」


「恐縮だ」


 押して駄目なら引くしか無い。


「リリィ?」


「何でしょうアイン様?」


「紅茶」


「はい。ただいま」


 そしてアインにタオルを手渡してキッチンに消えるリリィ。


 アインは汗を流すために浴場に向かった。


 サッパリした後、ダイニングに顔を出してリリィの淹れてくれた紅茶を飲む。


 それから朝食と相成った。


 二人分。


 アンネは朝食に参加しない。


 トーストにジャム、サラダにスープ。


 簡素ながらしっかりとしたソレ。


「美味しゅうござった」


 パンと一拍するアイン。


 そして食後の茶を飲みながらリリィに問う。


「今日の講義は?」


「基礎魔術概論とトランスセットです」


「じゃあ、その通りに」


「お姉さんが教えてあげるわよ?」


「謹んで断る」


 掠りもしないアインの態度。


「えへへぇ」


 アンネは至福だと笑った。


 アンネに対して素っ気ない態度をとる男子がアインしか居ないのだからしょうがない。


 変に媚びへつらわれる事に慣れきったアンネはアインの態度が斬新に映っていた。


「面倒くさい」


 とはアインの言。


 実際にアインは何とも思っていなかったのだ。




    *




「自然界には属性と呼ばれる概念があり――」


 基礎魔術概論の講義はアインにしてみれば退屈の一言だった。


「自然界を構成する要素を四つの属性に分けて理解し、そに干渉することが肝要だ」


 という理論が下地にある。


 鬼一の知識を得ているアインにしてみれば馬鹿馬鹿しいにも程がある。


 たかだか四つの属性で世界が説明できるのなら人間はとっくに万能になっている。


 それも鬼一に習ったことだったのだが。


「退屈なんだが……」


「ま、きさんにはの」


「師匠の世界ってのは偉大だな」


「それでもなお世界を説明するには足りんがのう」


「あそこまで突き詰めておいて?」


「重力の根源も、四つの力の統合も、特異点で働く物理法則も、まだまだわからないことだらけじゃよ」


「言ってたな」


 やれやれと首を振る。


 当然テレパシーによるやりとりだ。


「それよりきさん」


「何だ師匠?」


「本当にアンネを何とも思っていないのかや?」


「可愛いとは思う」


「リリィとどっちじゃ?」


「リリィ」


 思案する間もなくアインは断じた。


「ライトもおるしの」


「あれはもう別の何かだろ」


 嫌そうな顔をするアインだった。


「因果じゃの」


「師匠が言うか?」


「それも然りじゃ」


 悪びれない鬼一だった。


「つーか異世界からの干渉ってのがまずもって有り得んのだが……」


「単なる暇つぶしじゃ」


「俺との邂逅は偶然だと?」


「《神媒体の記録》については話したろう?」


「聞いたな」


「それが今のところ事実じゃ」


「さいでっか」


「何とはなれば頼れ」


「師匠にしては殊勝だな」


「恐縮じゃ」


 嫌味が通じないのは師弟の共通項目らしかった。


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