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第138話:背信の魔窟02


 宿で目を覚ましてアインは日課の訓練を行なう。


 それから水浴びを行なって宿をチェックアウト。


 黒衣礼服を身に纏って腰に鬼一法眼を差す。


「昨夜が悪夢だったのではないか?」


 そう思わせるほど市場は流動性が活発だった。


 少し金銭を払って干し肉を購入。


 スープもないのでガジガジと硬い肉を噛む。


 塩味はきつかったが、旨みもある。


「で、どうする気じゃ?」


 とは腰に差した鬼一。


 この剣としても一定の憂慮はしているのか……あるいは単なる興味の範疇なのかはアインにも少しわからない。


「代行師としては見過ごせないのも事実ではあるが……」


 もちろんアインも心がこもっていなかった。


「とりあえずは学院のスタンスだな」


 帝立魔術学院。


 大凡の根幹だろう。


 まさかこの学院街の闇を見て、


「無関係ですとはほざけまい」


 との意見も然りだ。


「昼間は安穏とした物だな」


「逆説的に……じゃな」


「さいか」


 あまり不安を抱えたくはないが、目を逸らして解決する類でもない。


 干し肉をガジガジ。


 学院街の教会に顔を出すと、


「アインですわね?」


 ジリアが出迎えた。


「殿下におかれては御機嫌でしょうか」


「あまりです」


「ま、気にすんな」


 帝室相手にも怯まないのはアインの悪癖だ。


 肝が太いと言うより空気を読めないに順ずる。


「コロネはどうした?」


「学院に向かうと仰っていましたわ」


「学院ね」


「わたくしも状況を把握したいのですけど……」


「好きにしろよ」


「むぅ」


 ジリアにとってアインは旅行者だ。


 色々と考えることもあるのだろう。


「さて」


 アインはジリアを透かして見た後、


「ま、安全地帯は此処だけだから軽率な行動はとらんようにな」


 サクッと言い切る。


「教会としては帝国の現状をどう思ってらっしゃるので?」


「…………」


 枢機卿としてしばし考えた後、


「コロネに聞け」


 逃げるアインだった。


 そして教会を出て学院街を歩く。


「なんだかね」


 アインが嘆息すると、


「気付いてはおるか」


 鬼一が笑った。


「尊師のおかげで」


 これはいっそ皮肉だが、鬼一に通じるはずもない。


「人気者は辛いな」


「それも然りじゃ」


 皮肉を言い合っていると、


「止まれ貴様」


 警護の兵士がアインを引き留めた。


 あくまで言葉で。


「…………」


 聞いていない振りをして足を進める。


「貴様! 逆らうか!」


 武威が発せられる。


 そこから威力を逆算するが、


「まぁまぁ」


 程度だ。


 警備兵は槍を握ってアインに向ける。


「貴様だ!」


「はあ……」


 ぼんやりと返事して、しかし足は止めない。


「何か御用で?」


「ジリア様を何処に連れ去った」


「知らんよ」


 呼吸をするように嘘を吐く。


 アインの特技だ。


「戯れるか!」


「誠心誠意ではないな」


 そこは肯定する。


 槍が襲ってきた。


 アインは鬼一の柄に手を添える。


 次の瞬間、


「?」


 警備兵の困惑。


 アインの姿がぶれたのだ。


 その残像を追って槍を振るうが、


「っ?」


 さらに困惑する。


 槍の穂先が地面に落ちていた。


「何が起きたのか?」


 まったく意味不明だ。


「ま、お仕事ご苦労さん」


 ヒラヒラと手を振ってアインはその場を後にした。


「…………」


 警備兵の方は狐につままれたと言ったご様子。


「ケイオス派かの?」


「さてな」


 警備兵の勤労精神の可能性も無いでは無いのだ。


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