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第137話:背信の魔窟01


「あ~……」


 アインの何時もの嘆息。


 魔族が現われた。


「王女殿下をこっちに渡せ」


「断る」


「では死ね」


 魔術が襲う。


「――バリア――」


 ジリアが魔術障壁を張った。


 同時に雷鳴が轟いたが、耳にうるさいだけで何かしらの不利益もない。


「器用だな」


 とはアインの賞賛で、


「まぁ帝室でありまして」


 とはジリアの自負。


 王侯貴族が魔術師としての規範であるのは事実だが、それにしてもジリアの技術は中々に興味深かった。


「というか魔族が襲ってくる当たり本人みたいじゃな」


 鬼一が思念で言う。


「騙りじゃないのは知っていたが」


「然りじゃ」


 人が、


「おぞましい」


 と思ってしまうような醜悪の人型。


 純然たる魔族のソレだが、アインには一考にも値しない。


 するりと間合いを詰める。


「え?」


 困惑したのはジリア。


 然もあろう。


 魔術障壁による隔絶をすり抜けたのだから因果を疑うは必然だ。


 その疑念に答えがもたらされるより早く決着した。


「京八流……溜抜」


 神速の踏み込みから神速の抜刀。


 内に溜めた姿勢が斬撃となって破裂する。


 月光が闇に輝いた。


 煌びやかな鋼の反射。


 それがアインの攻撃だと覚ったときには魔族の首は胴から離れていた。


「これで三体目」


 とりあえずジリアにも言い分はあるらしく、次なる魔族が襲ってくるより先に三人は教会に避難した。


 魔術の恩恵もあって、防御の面では比類無い。


 アインもそれはよく知っている。


「なんとか生き残れましたね」


 コロネは盛大に息を吐いた。


 たった一夜で魔族とケイオス派とそれぞれに戦えばプレッシャーにもなる。


「じゃあ後宜しく」


 アインはジリアをコロネに押し付けて教会を出ようとする。


「何を理不尽な」


 とは共感できる言葉であったが、


「俺に出来ることはない」


 アインの現実指摘には説得力があった。


 魔族が何故ジリアを狙うのかは知らないが、どう考えても教会の本分だ。


 アインも枢機卿ではあるが、ここで紋所を出すことは御免被ると云うもの。


 単純に効率の話をするならば、


「教会で匿うのが自然だろ」


 でファイナルアンサー。


「いいのかや?」


「別に死んだところで俺がどうのでもないしなぁ」


 それも事実だ。


 コロネと足並みを揃えるにしても状況そのものは切羽詰まっている。


「間を開ける」


 という機微もあるわけだ。


「とりあえずは宿に戻らんとなぁ」


 そんな感じで教会を出ると、


「――――!」


 魔術が襲ってきた。


 炎。


 雷。


 風。


 氷。


 叩きつけられた現象は座標にて破裂し、残骸が残る。


 アインは影すら存在していなかった。


「亜魔族ねぇ」


 批評するようにアインは言う。


 先ほど教会の結界から出てきたアインを襲った四つの魔術。


 そを放った四人のケイオス派は声のした方に視線を走らせる。


 アインがいた。


 避けた素振りも防いだ素振りもない。


 が、事実は事実としてアインは無病息災だ。


「こうまでケイオス派に侵食されているとなると……」


 枢機卿としては座視できない。


 とはいえ、ここでケイオス派と戦うのも違う。


「どうしたものか?」


「いつも通りじゃろ」


「哀しくなるなぁ」


「業じゃの」


 そんなやりとりも何時ものこと。


「――――!」


 ケイオス派が魔術を使う。


「まぁ頑張れ」


 叩きつけられた現象を疎んじながらアインは姿を消した。


「ブラックリストに載ったかね?」


「原因はジリアの嬢ちゃんにありそうじゃがの」


「ご尤も」


 鬼一の言がこの際は正しいだろう。


 帝都からこちらまで避難してきたジリア。


 そのジリアを狙う魔族とケイオス派。


 そして帝室の暴走。


「なんかよほどの面倒事か」


 とはアインの思惑だが、


「何時ものことじゃろ」


 鬼一の指摘も事実ではあった。


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