第136話:魔族が街にやってくる18
「結局」
とはアインの言。
魔術学院の学院街でのこと。
相手は当然コロネ。
「魔術学院も一枚噛んでいるのか?」
「知りません」
それが審問官のお言葉だった。
「わからないから調べるのです」
「魔族が襲ってきたら?」
「覆滅」
「他に無いよな」
その点では共有できる。
「アインの防御の魔術はどういう理屈なんですか?」
「企業秘密」
そも魔術ではない。
レジデントコーピングについて語るわけにもいかないため、言葉であしらう他ない。
そんなこんなで学院街を歩く。
アインは串焼きを食べながら。
コロネは特に腹が減ってはいないらしい。
「どう思う師匠?」
「とりあえずは学院の意見を聞くのが先じゃろ」
そういうことだった。
そのつもりでここに来たのだから当然ではあるが、
「コロネがなぁ」
も本音だ。
審問官が一緒となると警戒される。
アインは一市民として紛れているのだから。
「とりあえず学院か」
足が重くなる。
「ですです」
コロネの目的もソレだ。
そんなこんなで学院街を歩く。
そこで、
「――――」
爆音が鳴り響いた。
魔術だろう。
爆弾の可能性も無いではないが、こと学院街で発破させる意味もない。
「っ!」
コロネは義務感に従って爆音の方へ疾駆した。
アインは、
「どうしたものか?」
串焼きを食べながら困惑する。
「ま、袖擦り合うもと言うしの」
「さいか」
鬼一の言に頷いた。
爆発の地点に向かう。
特に飛び火するでもなく爆発は収まっているらしかった。
そこにいたのはアインと鬼一。
それからコロネと少女。
燈色の髪の美少女だ。
コロネが殺気立って誰何する。
「何某たるや?」
と。
少女は云った。
「ジリアですわ」
そんな言の葉。
「えーと」
聞いたことが有るような無いような。
しばし悩んでいると、
「ジリア殿下にあらせられますか……っ」
コロネの方は驚愕しているらしい。
「誰?」
問うと、
「ガギア帝の第一王女殿下です」
サックリ言ってのけた。
「第一王女……」
ジリア姫。
今の今まで忘れていたが、
「たしかにそんな名前の王女が帝国にはいたな」
と反芻するアイン。
「あなた方は?」
「旅行者です」
「審問官です」
一人が嘘を、一人が事実を、それぞれ述べる。
「ノース神国の?」
「はあ」
「ええ」
サクリと。
「お助けください!」
真摯に王女ジリアは語った。
「何から?」
とはアインの言。
「この国から」
壮大な言葉だ。
それ故に不透明でもある。
「えーと」
しばし勘案。
「お前様は王女殿下で?」
「ありますわ」
「味方なら国内にいるのでは?」
「あう……」
言葉を失うジリア
「何やらあるみたいじゃの」
鬼一のそんな言葉に、
「不安になるな」
アインは嘆息しながら答えた。
事実その通りではあったのだ。




