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第134話:魔族が街にやってくる16


「何者です」


「こっちの台詞だ」


 あまり建設的な会話でもなかった。


「私は名をコロネ。あなた方を滅する者です」


「どうも」


 他に言い様もない。


「光あれ」


 サクリと審問官……コロネは魔術を取り扱う。


 質量魔術。


 仮想聖釘。


 魔を討ち滅ぼす聖なる釘。


 その投擲による殺傷。


「なんだかね」


 とはアインの感想。


 躱さなかった。


 自動防御。


 レジデントコーピング。


 鏡の国からの干渉。


 放たれた仮想聖釘はアインに接触するや消失した。


 それは審問官にとってあまりに意味不明で……その事象を考察しようにも根拠となる証拠が何もない不可思議だった。


「っ?」


 本気で何が起こったのかわからなかったのだろう。


 コロネは不審げに見やる。


「ケイオス派は不思議なことをしますね」


 全くの不条理だ。


「俺はケイオス派じゃないぞ」


 弁明するアインに、


「嘘を仰い」


 とのコロネ審問官。


「裏目に出たの」


 鬼一がホケッと言った。


 言いたいことは大体分かる。


 魔族の闊歩するガギア帝国。


 そこにおいて剣術と魔術……二足のわらじを実現するアイン。


 正確には魔術ではなく禁術なのだが、


「師匠以外には区別なんて付かんよな」


 と相成る。


 基本的に魔術師は剣を持たず、剣士は魔術を修めない。


 その基本に則って考えるなら、


「アインが剣を修めて、なお魔族に身を売って魔術を修めたイレギュラー」


 との思考は自然。


 あるいは必然。


 通念の話になる。


「で、俺がケイオス派……と」


「地獄で懺悔なさい」


 仮想聖釘が襲う。


 レジデントコーピングに任せても良いが、アインは剣で打ち払った。


 金属音が謳い、チリンと地面に落ちる聖釘。


「やりますね」


「まぁこれくらいはな」


 肩をすくめる。


「で、話し合う気は?」


「滅殺した後でなら」


「まぁそういうよな」


 審問官の視野の狭さはアインも知っている。


「しかしその状況で俺に襲いかかるって事は……」


「後者の可能性かの?」


 議論するアインと鬼一。


 投擲される仮想聖釘を弾きながら思考を進める。


 ケイオス派による戦力補強。


 それを統率する急造部隊。


 名を魔法騎士団。


 魔族の闊歩と審問官の襲撃。


 あまりに説得力がありすぎた。


「精神的な案件で労災はおりるんだろうか?」


 そんなことすらアインは思う。


 金属音。


 鬼一が聖釘を切り払う音だ。


「やりますね」


「この程度は」


 謙遜ではあったが、この場に於いて有益とは言えない。


「では物理的に殺します」


「やれるもんなら」


 頭の痛い案件だ。


 少なくともアインにとっては。


「では」


 グッと力を溜める。


 解放は一瞬だ。


「行きます」


 神速でアインとの間合いを詰めるコロネ。


 手に持つはナイフ。


 振るわれるが届かず。


 アインの剣術に阻まれる。


 クンと力が込められる。


 巻き技。


 コロネのナイフが手元から離れる。


 宙に浮くそのナイフの軌道を呆然と見守るコロネの側頭部に蹴撃が襲う。


 アインの蹴りだ。


 吹っ飛ばされてレンガの壁に激突。


「あう?」


 困惑するコロネ。


「とりあえず落ち着け」


 説得するアイン。


「むう」


 フルフルと頭を振る。


「不覚」


「お前の認識がな」


 案外容赦ないアイン。


 事実なのだから如何ともしがたいが。


 南無阿弥陀仏。


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