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第131話:魔族が街にやってくる13


「ありがとよ坊ちゃん」


 傭兵がそんな感じで声をかけてきた。


 下卑た声に下卑た表情。


 慣れた物だが受け入れるかは別問題。


「ボトル奢ってくれたろ」


「だぁな」


 必要経費であるため別に気にしてもいなかった。


 金銭の授受がなければ情報を得られないのは世の常だ。


「坊ちゃんも傭兵か?」


「まぁ」


 平然と虚言を吐く。


 ギルドに顔を出して帯剣していれば、真っ先にそう思われるのも自然だ。


 黒衣礼服。


 学ラン姿で防具の類は身につけていないが、そもそも防御の物理的な作用を必要としていないためコレも宜しい。


「なんなら俺らと飲まないか?」


「色々教えてやるぜ?」


「…………」


 腰に差している鬼一の柄を握っては離す。


 抜くべきか否か。


 その思案の最中だ。


「おたくらは……」


 店主から聞いた情報から算出。


「帝都に向かうのか?」


「おう」


「稼ぎ時だからな」


「何でも一般人でも魔術を教えてくれるってよ」


「頭固い貴族連中なんてざまあみろだな」


 酔っ払って豪快に笑う。


「魔法騎士団……な」


「坊主もだろ?」


「どうかね」


 否定も肯定もしなかった。


 そもそもさっき聞いたばかりの概念だ。


「なんなら俺らと一緒に帝都に向かおうぜ」


「遠慮する」


「まぁそう言わず」


 声に誠意は含有しない。


 どう考えても狙っている。


「師匠。笑いすぎだ」


 爆笑している鬼一に思念でツッコむ。


「まぁそう言うな。色々と手取り足取り教えてやるからよ」


「男色の趣味は俺にはねえよ」


「ハマれば楽しいぜ?」


「分際を弁えろ……と言ったんだが?」


 酷薄な声で挑発すると、


「ほう?」


 傭兵たちも殺気立った。


「餓鬼のくせにいっぱしの口を聞くじゃねえか」


「大人でありながら子どもを狙う賊よりマシだがなぁ」


 平然とチョコレートを飲む。


「お客様。店内では穏便に」


 店主はサクッと牽制した。


 中々に練度の高い仕草だ。


 尤もそうでなければギルド兼酒場を任されはしないだろう。


「表に出ろ」


 傭兵の目は据わっていた。


「へぇへ」


 チョコレートを飲み干して通りに出る。


 傭兵の一人が剣を抜いた。


「挑発したからにはこういう覚悟もしてるんだろ?」


「別に」


 事実だ。


「まぁ教育はしっかりしてやるから安心しろ」


「そんなに俺の顔は魅力的かね?」


 中々骨太な星の下。


 他者は他者で色々と思うこともあるのだろう。


 体を半身にして、和刀の柄に手を添える。


「剣を抜け」


「必要ない」


 コンマ単位の回答。


「何時でも掛かってこい」


「よく言った!」


 あっさり挑発に乗る傭兵の一人。


 仲間三人は見物に回っている。


 直進。


 直接的に肩が狙われる。


 刺突。


 動かないアイン。


「決着した」


 傭兵がそう確信したのも無理なからぬ。


 剣の刺突がアインの肩に刺さろうとした次の瞬間、


「っ?」


 アインの全身がぶれた。


 映像的な意味で。


 その意味を理解し得ないのはアイン以外の全員だ。


 傭兵。


 その仲間。


 それから野次馬。


 まるで蜃気楼の様にアインの映像が消える。


 残像。


 そして実像は襲った傭兵の側面にいた。


 和刀は鞘に収められたままだ。


「何を……っ」


 剣を振ろうとして傭兵は違和感に気付く。


 握った柄の重みが軽いのだ。


「?」


 手元の剣を見やれば根元から切り裂かれていた。


「……っ?」


 何が起きたか……まで懇切丁寧に答える義理もないアインだった。


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