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第120話:魔族が街にやってくる02


 ノース神国とガギア帝国の国境沿いでのこと。


「ふむ」


 アインは入国審査を受けていた。


 肩書きは国家共有魔術学院の生徒。


 夏期休暇を利用したガギア帝国魔術学院の見学。


 不自然では無いが、そのもう一段階上で少し不利だった。


 ノース神国の大貴族。


 クインの直系。


 帝国の不審を誘う程度は働く。


 一応宗教国であるため貴族がどうのはあまり重きも置かないのだが、軍事的緊張感に過敏な反応は付き物だ。


 精々無害を装う程度しかやりようは無い。


 まさか書類から枢機卿には結びつかないため審査は通りガギア帝国の土を踏む。


「久しぶりじゃの」


 鬼一はそう言った。


「だぁなぁ」


 アインとしても首肯する。


 一応レイヴに枢機卿に選ばれてから、何度か訪問したことはある。


 陰で色々と悪巧みをする類だが。


 一般的にアイスとして訪問していたため、周りの人間は気付いていないが。


「それで」


 と鬼一。


「どうするんじゃ?」


「学院だな」


 まずは名目上の消化だ。


 魔術学院の興味を持つ魔術師。


 アインの今の肩書き。


 だいたい時を同じくしてノース神国からの審問官が国境を越えてきているため紛れて入国できたのは有り難い。


 当然教皇の意見であるため拒絶も出来ず、


「南無八幡大菩薩」


 と印を切るアインだったが。


「ま、審問官が時間を稼いでくれるだろ」


 アインはそう言った。


「じゃな」


 鬼一も同様だ。


「学院は王都と国境の間にあるから何かしら動きがあるなら情報を掴める……はず」


 一生徒に国家の政争が耳に入るというのも中々思いは付かないが。


 が、軍事行動が起これば隠す方が難しいのも事実。


 審査のあった国境そのものは平穏だったので、軍備増強の観念はまだ一部の政だろうとも思える。


 ノース神国に進軍するなら、相応の対策は必要だ。


 何せ不可侵条約を破るのだ。


 隣接する国家を刺激する。


「聖地を犯した堕国」


 と正義を掲げて隣国がガギア帝国に宣戦布告することは火を見るより明らか。


 八方に戦線を維持するならば、


「ノース神国への進軍は軍全体の三割を切る」


 それが鬼一の概算だった。


「ていうか何処まで本気なのか」


 とはアインの言葉。


 別段レイヴの情報を疑うわけでは無いが、ノース神国への侵略がメリット以上のデメリットを抱えるのは自然の発想だ。


 政治家なら馬鹿でも分かる。


 となれば当然の思惑。


 アインにしろ鬼一にしろ思うところはある。


「魔族か?」


「可能性はあるじゃろな」


 そういうことだ。


 ケイオス派。


 魔族と契約して魔術を授かる人間をそう呼ぶ。


 宗教的には罪人で、判決は死刑。


 そしてその権限をアイン並びにアイスは持っている。


「国の暴走が魔族によるモノ」


 なら腑にも落ちるが、


「政治が魔族に乗っ取られるか?」


 という命題には疑問符はしょうがない。


 ケイオス派は散発する常駐悪だが、基本的にアイデンティティと相比して決定する人間は少数派だ。


 魔族と契約すれば無尽蔵の魔術を手には出来るが、結果論として魔族の傀儡に成り下がることを意味する。


 アインはそんなケイオス派をここ十年ばっかり滅ぼしてきた。


 聖務。


 そうではある。


 が、国家レベルでの動向はいっそ蠢動と言うべきだ。


「ガギア帝国が何を考えているのやら」


 とっかかりはそこだろう。


「こうなると殺人を戒律としているのが辛いな」


 アインも枢機卿だ。


 教義で殺人は禁じられている。


 禁術でガギア帝国を更地に変えれば話は早いが、


「何ともなぁ」


 と云った所。


「ま、それは先の事じゃ」


 鬼一は楽観論を提出する。


 重視することは大事だが、気負って始まる任務でも無い。


 その意図はアインも受け取れる。


「まずは魔術学院だな」


「じゃのう」


 チョンチョンと鬼一の柄頭をつつく。


「軍事的にどうのって話にはならんのかね?」


「それはきさん次第じゃな」


「うへぇ」


 毎度の嘆息。


 神威の代行。


 神権の代用。


「何故に俺は」


 との自己疑念も今更。


 代行師としては聖務の一部だ。


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