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第12話:国家共有魔術学院05


「私が魔術を指南してあげよっか?」


「間に合ってる」


 再度云うアイン。


「そっちのリリィさん?」


 リリィを見やってアンネ。


「ああ、俺の師匠だ」


 気後れ無くアイン。


「小生は?」


「とりあえずここでは黙っててくれ」


 思念で会話するアインと鬼一。


「一応お姉さん研究室所属の魔術師なんだけど」


「研究頑張ってください」


 アインは何処までも相手にしない。


「むぅ」


 アンネは不満げだった。


 燈色の瞳が責めるようにアインを見る。


 無論ソレで怯むアインでも無いが。


「何の魔術が使えるの?」


「風系統と親和性が高いようですね」


 まったく違和感なく嘘を吐くアインだった。


 ここまで道化を演じられれば喝采ものだ。


 実際にアインは風の斬撃魔術……エアエッジを披露して学院に入学したのである。


 魔力の根源は学ランの下に隠してある精霊石のネックレスのおかげなのだが。


 そにはリリィの魔力が十二分に込められている。


 さすがにファーストワンだけあってリリィの魔力供給量は桁外れだ。


 安心して魔術を行使できるアインだった。


「風属性ね……」


 ふむ。


 そう思案するアンネ。


 それからカルボナーラを食べて、


「リリィさんはどんな魔術が得意なの?」


 今度は興味をリリィに移したらしかった。


「特にコレと云って」


 謙遜のつもりだ。


 当人は。


「アインの師匠なんでしょ?」


「いえ」


 否定。


「アイン様の従者です」


「まぁ貴族が従者を連れるのは不思議じゃないけど……」


 再度になるが魔術師とは貴族の血統である。


 魔術師を従者にするのは珍しくはないが不思議ではある。


 かと云って『ある事情』からリリィの現状……即ちファーストワンを口に出すことは躊躇われる。


 それはアインとリリィの共通概念だ。


「ふぅん?」


 元よりリリィはアインの従者として学院に入った身だ。


 で、あるからその力量は学院も把握していない。


 そもそも魔術師であると語ったのは数えるほどだ。


「憎いの」


「何が?」


「きさんがじゃ」


「人間関係に絡まれてるこっちの身にもなれ……」


 アインと鬼一は疲れる会話をしていた。


 もちろん思念で。


「しかしてアンネ嬢ちゃんはきさんに興味を持っているのじゃろ?」


「どこまでの深度かはわからんがな」


「受けるのも一手」


「他人事のように云いやがって」


「小生にとってみれば他人事じゃ」


 カラカラと鬼一は笑う。


「はぁ……」


 嘆息。


 ピッツァの最後のピースを食べ終わる。


「アイン?」


「何だ?」


 甚だ非友好的なアインの言。


「私と恋人にならない?」


「謹んで断る」


 サックリ介錯してのける。


「お前様なら男なんて向こうから寄ってくるだろ」


「だから魅力的でしょ?」


「否定はしない」


「リリィさんに義理を感じてるの?」


「それとこれとは関係ない」


「ならいいじゃん」


「なら構わなくてもいいな」


「なんでそうなるのよ?」


「興味ないし」


「あう……」


 と最後はリリィの呟き。


「従者なんでしょ?」


「まぁな」


「お姉さんはその辺の心は広いわよ?」


「でしたら広い心で別の人間を抱擁なさってくれ」


「アインは捻くれてるわね」


 アンネがそう云い、


「まったくじゃ」


 鬼一が同意した。


「誰のせいだ誰の」


 思念で鬼一にツッコむアイン。


「小生のせいだと?」


「師匠との十年の付き合い以外に人格形成を受けた覚えは無いがな」


「然りじゃ」


 この際鬼一の言葉はむしろ楽しそうだ。


「ま、そんなわけで諦めて候」


 どこまでもアインは平常運転だった。


「むぅ」


 不満げなアンネ。


 知ったこっちゃなかったが。


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