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第102話:学院祭ときどきイビルパニック19


 アイス枢機卿の名は学院に轟いた。


「だから嫌だったんだ」


 アイス……引いてはアインがそう愚痴った。


 あくまで思念で。


「アイス卿が居れば魔族が襲っても安泰」


 そんな風潮が出来上がりつつあった。


 そんなアイスは今はいない。


 代わりにアインが和服の着付けを手芸部に手伝って貰っていた。


 濃霧が消えたと同時に、


「アイス卿は?」


 と囁かれたが、アインが此処に居る以上、アイスが姿を消すのは自然なことだ。


 記者たちが追いかけ回しているが、


「元よりアイスはアインが禁術を解放するための仮面」


 という前提があるため、晒し者には出来ないのである。


 レイヴもその辺はよく分かっているため、


「アイス卿は人見知りで」


 などとフォローになっていないフォローをするのだった。


 魔族による襲撃も済みケイオス派も全員封印処置を施されて学院には平穏が戻ってきた。


 無論全てがそうとは言えない。


 アイスが出遅れたせいで魔族の犠牲になった人間は両手両足の指では数え切れない。


 その祝福もレイヴの仕事だ。


 だがそれはそれとして学院祭の最終日。


 盛り上がらないはずもない。


 午後からのファッションショーに向けて和服を着るアインである。


 黒髪ロングのウィッグを付けて黒い口紅を付けると大和撫子の完成。


 和服の腰には鬼一を差し、それがまた色を添える。


 リリィはゴスロリだ。


 ダークな雰囲気の服装に萎縮するリリィがアインには輝いて見えた。


 黒い傘もポイントの一つである。


「そういえば教皇猊下もファッションショーを見に来るらしいですよ?」


 手芸部の部員の一人がそう言った。


「部長があんなことをした後で責任をこっちが取らされると云うことは……」


 ちなみに手芸部の部長はケイオス派に堕ちたソルトである。


「大丈夫だろ」


 これはアインの言。


「後ろめたいことが無けりゃ堂々としてればいい」


 元よりレイヴはソルトの関係者まで道連れにする気は無いのである。


 ここでそれを云うわけには行かないが、


「教皇猊下はお優しい人だろ?」


 そんな気休めをアインは口にする。


 そんなこんなでアインは和服美女となった。


「似合っているぞい」


 鬼一が皮肉ってくる。


「恐悦至極」


 アインも皮肉った。


「ふわわ」


 とリリィ。


 顔を赤くしている。


「それはそれで不本意なんだが……」


 アインのマスクは甘い。


 であるため絶世の美少女になり得る。


 化粧の仕方によれば。


 肉体のラインも整っているし、場合によっては男子すら魅了する。


 そしてファッションショーが始まった。


 何でも学院でも美貌で知られる生徒たちのプロデュースを行なっているショーらしく、注目度は抜群とのこと。


「なんでそこに俺が?」


 とアインは首を捻ったが、


「アインさんも負けていませんよ」


 そんな部員の言葉だった。


 納得できるはずもないが、


「自身の顔が愛らしい」


 とはリリィから散々聞かされている。


「仕方ねえか」


 そんなわけでアインはファッションショーに出るのだった。


「おお……っ!」


 とはファッションショーを見に来た客の反応。


 ブラックシルクのような黒いロングヘアー。


 黒真珠のような瞳。


 整った顔立ち。


 完璧に計算された黄金比の体つき。


 そこに和服と和刀と舞傘を纏って現れたのだ。


 サウス王国の美的感覚を持っていれば絶句の一つもする。


「何の拷問だ」


 アインの感想はそれだけだったが。


 アインがファッションショーの舞台で一つパフォーマンスをしていると、次にリリィが現れた。


 こちらもこちらでショーの舞台向きだった。


 黒い傘。


 黒いフリフリドレス。


 そんな重たい彩を金髪と碧眼が浮遊させている。


 そつなく纏まった美少女。


 反応はアインと五十歩百歩と云ったところだ。


「なんでリリィと同じ評価だよ」


 とはアインの思念。


「愛らしい顔してるからじゃ」


 鬼一はカラカラと笑っていた。


 和服の腰に差しているため思念による会話も明瞭だ。


「問題は……」


「問題は?」


「なんでもにゃ」


「おい」


 アインが突っ込む。


「きさんが気にすることじゃないの」


「さいでっか」


 アインはふて腐れた。


 それが、


「かっかっか」


 更なる鬼一の笑いを呼んだが。


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