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第100話:学院祭ときどきイビルパニック17


 現場は地獄の再現。


 阿鼻叫喚だった。


 知恵の無い下級魔族が無差別に人を襲う。


 中級魔族は命乞いする人間と契約してケイオス派と成っていった。


 そんな絶望の中にアイスは突っ込んだ。


 和刀は既に抜いている。


 尤も……あまり必要では無いが。


 アイスは禁術を行使する。


 視界に映る魔族たちが不意に痕跡も残さず消え去る。


 消滅が禁術の基本だ。


 であればこの程度はお茶の子さいさいである。


「アイス枢機卿猊下……!」


 魔族に襲われようとして、間一髪助かった市民の一人がアイスを呼ぶ。


「安心なさい。これより神の代行として魔族の殲滅をはかります。あなた方はお逃げなさい」


 自分自身でも薄ら寒くなるような言葉を吐いてアイスはさらに魔族の中に突貫する。


 審問官たちも代行師の登場に発破をかけられて士気向上を果たしていた。


「師匠」


「何じゃ」


「ソルトの居場所」


「そのまま真っ直ぐ」


「あいよ」


「まるで雪崩じゃの」


 押し寄せるという意味ではそうだろう。


 魔族に取り込まれたソルトが無尽蔵に魔族を召喚しているのだから数においては確実に敵側が有利である。


「ケイオス派は?」


「確認しているだけで六人」


「多いな……」


「仕方あるまいよ」


「他人事かよ」


「他人事じゃ」


「そうだったな」


 アイスは苦笑した。


 アイスの視界に入った魔族は瞬く間に消え去っていく。


「何が起こっている……?」


 事情を知らない審問官の一人が困惑していた。


 説明してやる気はさらさら無かったが。


 視界外から襲ってくる魔族は刀の錆となる。


 こと戦力という面において数は質を上回るが、アイスはある種の例外だ。


 禁術と剣術を高いレベルで行使するため、防御不能かつ不意打ち不可を可能とする。


 次々と召喚される魔族の群れを消滅させ、切り滅ぼし、前へ前へ。


 頭上から熱波が襲った。


 ケイオス派の魔術だ。


 チラリと見やって禁術で相殺する。


 頭上の魔術を見やったアイスの足下が隆起する。


 剣山のように地面が針となって隆起し、アイスを刺し貫かんと襲いかかる。


 が、


「馬鹿な……!」


 ケイオス派は困惑していた。


 地面の針がアイスに触れるや消え去ってしまったのだから。


 レジデントコーピング。


 アイスの持つ絶対防御だ。


 自動で害性情報を消滅させる絶対防御。


 ニアリーイコールで無敵と呼んで差し支えない禁術である。


 アインは軽々と跳躍した。


 頭上……建物の屋上から魔術を放ったケイオス派の一人に肉薄する。


「――ストライクウィンド――」


 ケイオス派が魔術を行使するが、顕現には至らなかった。


「何!?」


 もはやアイスの能力は意味不明である。


 消滅。


 心眼。


 絶対防御。


 魔術封殺。


 確認できるだけでも異常と言って良い技術の数々。


 ケイオス派が恐れるのも無理はない。


 アイスは握った和刀でケイオス派の双眸を切り裂く。


「……っ! がぁぁ!」


 強烈な痛みと暗黒がケイオス派を襲い無力化される。


 同時にアイスは建物の屋上から下を見た。


 審問官と魔族との抗争が続いている。


 そこに禁術を適応させる。


 サクリと下級魔族は居なくなった。


「……っ?」


 いきなりの魔族の消失に困惑する審問官。


 だが、


「誰が行なったか?」


 だけは理解したらしい。


「アイス卿……!」


 審問官たちがアイスを神聖視していた。


 アイスにとっては毒にもならないのだが。


 ともあれ禁術でかけていた負荷は既に無い。


 アイスは己の能力の有る限りを全力で使える。


 その能力で以て屋根から屋根へ飛び続ける。


 ケイオス派が魔術を行使する。


 起動する間もなく封殺される。


 こと禁術の前では魔術はあまりに無力な存在だ。


 無論、それはアイスのたゆまぬ努力と修練の後押しがあって初めて成立する事柄ではあるが。


 こと代行師と任命された教会の絶対戦力。


 その恐ろしさの一端が具現していた。


 審問官でさえケイオス派にとっては脅威のはずであるのに、代行師に至ってはもはや敵対することが馬鹿馬鹿しくなるほどの、いわゆる、


「開いた口が塞がらない」


 類の戦力である。


 なおアイスは容赦というモノを知らなかった。


 次々と溢れ出る下級魔族を消滅させていく。


 その根幹が視界の有無だろうとケイオス派の一人が睨んだ。


 その通りではある。


 であるため、ケイオス派の一人はアイスの視界から離れて魔術を行使した。


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