表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/242

第10話:国家共有魔術学院03


 次の日。


 アインとリリィは講義を受けていた。


 魔術学院に入学して最初の講義だ。


 とりあえず単位を取らねば学院から脱退せざるを得ないため講義には臨まねばならないのであった。


「で、ここでいう魔力とは――」


 さも偉そうに講師は魔力の何たるかを語っていた。


 全く以て、


「的外れ」


 そう言いたいアインではあったが。


「こんな講義が平然とまかり通っていることに驚くんだが」


 思念で腰に差した鬼一に話しかける。


「まぁそう言ってやるな」


 鬼一は寛大だ。


「この世界には熱力学が存在しない」


 当然だ。


「であるため魔術を世界法則とイコールで結ぶのもしょうがないことじゃろう」


「まぁな」


 既に古典物理学から相対性理論……量子力学から超弦理論まで修得しているアインにとっては欠伸の出る講義内容だった。


 そんな講義を、


「…………」


 真剣に受けている生徒も居る。


 リリィである。


 高価な白紙にペンを走らせて講義を飲み込む少女。


 アインにしてみれば、


「冗長だ」


 と云った具合だがリリィには有益らしい。


 特にツッコむこともしなかった。


 鬼一を椅子の傍に立てかけて突っ伏すアイン。


「講義が終わったら呼んで」


 リリィにそう伝える。


「了解しました」


 リリィは請け負った。


「嬢ちゃんは勤勉じゃの」


 思念で語る鬼一。


「未熟者です故」


 リリィの返答も中々のものだ。


「アインについて思うところはないのか?」


「愛人ですから」


 思念ではあるが皮肉の成分は薄れていなかった。


「アイン様は魅力的な男の子です」


「否定はしないがの」


「であれば私なんかに及びもつかない素敵な女性と結ばれるはずです」


「リリィも素敵な女子じゃがのう」


「いえ、私なんてアイン様とはつり合いません」


 あわあわと狼狽えるリリィだった。


「かっか」


 鬼一は笑う。


「そんなアインの子を宿そうとするのとは矛盾するのぅ」


「聞こえてるぞテメェら……」


 アインが思念で語った。


「あう……」


 怯むリリィ。


 突っ伏した状態のまま思念の会話に加わるアイン。


「リリィにだって恋愛の自由はあるだろ?」


「私はアイン様に惚れているので……」


「正気か?」


「そのつもり……ですが……」


 少なくともリリィの言葉は本音だ。


 アインが美少年であるのは事実である。


「格好良いですよね?」


「恐縮だ」


 皮肉気にアイン。


「私なら幾らでも性欲をぶつけてくださって構いませんから」


「気が向いたらな」


 ふて腐れる。


 自分の家族を守るため。


 そのために貴族に身を売ったリリィ。


 そを容易く抱くほどアインはやり手ではなかった。


 というか童貞だった。


「魔力とは細粒子であり――」


 そんな風に講義は進む。


 思念で会話をしながらリリィは講義内容を記述する。


「師匠」


「何じゃ?」


 当然思念でのやりとりだ。


「リリィにも物理学を教えれば?」


「無理じゃろう」


「何ゆえ?」


「あのな。この世界においては相対性理論も量子物理学もまだ成立しておらん」


「そりゃそうだが……」


「きさんの様に学術を受け入れられる人材は希少じゃ。地頭が良くないとまだ受け入れられん法則じゃよ」


「有り体に言えば馬鹿、と?」


「恐れず言えばな」


 特に鬼一も否定はしなかった。


「俺に対しては講義したのに……」


「きさんは例外じゃ」


「どういう意味で?」


「あらゆる意味で……じゃ」


「なんだかなぁ」


 不満げなアイン。


 さもあろう。


 自身を、


「異質だ」


 と師匠に言われたわけだから。


 そしてソレを否定する根拠も無かったのだった。


 講義はアインをほっぽって無事終わった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ