クロード視点
本日2話目です。
最近、アンドレアが可愛い。
いや、昔から可愛かった。
でも、一緒にハープを奏でようとか。
パーティーのエスコートとダンスを念押をしてきたりとか。
挙げ句の果てに、今日は、私の髪をブラッシングしたいだと。
私を萌え殺す気か?
パーティーでは、アンドレアを独り占め出来たし。
周りへの牽制は順調だ。
アンドレアは希少種の白虎。
その上あの美貌。
彼女に懸想する不埒ものは多い。
加えて、可愛すぎるアンドレアとの婚約は、未だ保留のままだ。
アンドレアは、縁談の申し込みがこないと思っているようだが、私が長年外堀を埋めて囲ってきたものに手を出すような愚か者はこの国にいない。
私はアンドレアと出会った時の耳無しと蔑まれていた非力な子供ではない。
もう、私を侮るものはいない。
来年、アンドレアが15歳なったタイミングで、彼女を手に入れる。
キーン
頭の中に甲高い不快な音が響いた。
私の頭の中から、咆哮が聞こえた。
頭にビジョンが映る。
経験したことのない事態に動揺する。
しかし、ビジョンがアンドレアを映したことで、平静に戻った。
アンドレアは、国境を越えようとしていた。
『赦さない』
頭に怒りの声が響く。
『逃がさない。』
『私から逃れるのならば、喰らってしまおう。』
視界が変わる。完全獣化していた。
王子宮の窓から飛び出した。怒りの咆哮が空をつんざく。
空を駆ける。
私は黄金竜に変わっていた。
まばたきする程の時間ですぐにアンドレアの馬車に追い付いた。
『どうしてくれよう。馬車から引きずり出して、二度と離れないよう喰らうか。王子宮に一生閉じ込めて飼うか。』
凶暴な獣性に支配されそうになったとき。
突然馬車が止まった。
馬車の窓からアンドレアが顔を出した。
驚きで目を見開いた彼女は「クロード殿下。」と俺を呼んだ。
なんで。わかる?
アンドレアが馬車から飛び出し躊躇いもなく黄金竜の身体に抱きついた。
俺の中で荒れ狂っていた獣性が鎮まる。
と、同時に彼女が、運命の番であることを唐突に理解した。
アンドレアが、愛おしそうに私の鱗を撫でる。
こんなに愛おしい番を喰らおうなんて。
何を考えていたんだろうな。
「クロード殿下、私を食べても、いいですよ。」
「…。」
さっきまでの思考が読まれていたのかと、焦る。
「私から、離れなければ、喰わない。」
「私、隣国に留学します。しばらく離れますが、卒業したら戻ります。」
「わかった。」
私も留学しよう。
腕試しに受けた試験に合格していたのは幸いだった。
しかも、当初留学予定だった弟のアルバートは、先月運命の番と出逢ったせいで行きたくないとごねている。
あいつに恩も売れるし一石二鳥だな。
「何も言わずに、勝手に出ていってごめんなさい。」
「わかったのなら、大丈夫だよ。」
すぐ追いかけるし。
絶対に逃がさないし。
アンドレアは黄金竜の執着の深さを見くびるなよ。
ちゃんと見張って二度と離れないように首輪を付けておかなければ。
心配なので、彼女の馬車が無事隣国のアカデミーへ着くのを空から見守り、王子宮に帰還した。
一刻も早く彼女を追って隣国へ行かねば。
しかし、黄金竜出現の後始末に追われ、私の隣国行きはギリギリになってしまうのだった。
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