婚約回避します
本日2話目です。
私は可愛い。
何を着ても似合う。まだ、5才なのに。この真っ赤な悪役令嬢ドレスの似合うこと。
「キャ」
私の迫力にびびったのか新人メイドが粗相した。ドレスがちょびっと汚れた。
今日は、クロード殿下の婚約者や学友を選ぶパーティー。同年代の高位貴族の子弟が集められる。
目立ちたくない。メイドよ。よくやった。
「今日は、このドレスの気分じゃないわ。もっと地味なものにしてちょうだい。」
悪役令嬢のワガママ風に言ってみる。
汚れたドレスをみて固まっていたメイド達がさーっと動き出した。
何事もなかったように緑色の可憐なドレスに着替えさせる。
可愛い。
年相応だし、ガーデンパーティーなら、周りの緑に溶け込んで目立たないだろう。ふふふ。
「ありがとう。気に入ったわ。」
悪役令嬢っぽく言えたかな?
王子宮のお庭についた。ここからは子供達で親睦をふかめるのだそうだ。
目立たないよう、庭園の端にひっそりと佇む。
メイド達は良い仕事をした。
背景のグリーンに馴染んで目立たない。
あとは、この自慢の真っ白なふわふわのしっぽ、シマシマなのが、チャームポイントだ。
白虎とバレるのはまずいのだ。
とりあえず耳としっぽは隠そう。婚約回避の為に目立たないのが大切だ。
婚約せず、クロード殿下と距離を保たねば。
ヒロインにも関わらない!
いくら推しとはいえ、黄金竜にバリバリ生きたまま食べられるなんて、怖すぎる。
「お前、耳は?」
何故だろう?ここは上品な王宮のガーデンパーティーだったはず。
目立たない場所にいるから絡まれたの?
原作にこんなシーンあったっけ?
「あなたに見せる耳などなくってよ。」
悪役令嬢らしく尊大に言ってみる。
「耳無しのくせに生意気なんだよ。」
バカにしたように囃し立ててくる。
「耳が無ければ、生意気なのか?」怒りを押し殺した声が響く。私を小突こうとしていた奴の手がとまる。彼らはその場に崩れ落ちた。
脳が蕩けるような芳しい薫りがする。
愛おしさで胸が締め付けられる。
ここに最愛が、運命の番がいる。
己の半身を確かめようと顔を上げた。番の顔を見る。
そして、絶望した。
私の番は、クロード殿下だった。
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