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四話 原作の概要

 周囲に誰もいない事を確認してパタリと部屋の戸を閉める。

 そうしてアイちゃんに声帯ロックの解除をしてもらう様に頼んで私は緊張しながら彼女と向き合う。


「……それで?何故喋れないフリをしてるんだ?話してもらおうか。」


「“……私が日本語しか喋れないから。“」


「!?異国語?それも日本語か?」


 私は頷く。


「“これが私が喋る訳にいかない理由。“」


「……お前何故中国語が出来ないのに何故会話が成立してる?」


 私はこの言葉が通じてないと感じてメモを取り出して書く。


 “サポートシステムが翻訳してくれるお陰。あなたにはいないの?“


「サポートシステム?お前にも付いてるのか?」


 “私も憑依転生者だから。まぁ、原作とか何も知らないけど。“


「サポートシステムってデフォだったのか。…しかし、原作を知らない?いや、中国語を喋れないのだからそれも不思議じゃないか。いや、そもそもなんでそんな奴が憑依してるんだ?可笑しいだろ。」


 "なんでもくじ運らしいよ。…そこで相談なのだけど、私に原作を教えて欲しい。“


「…本当に喋れないのか?英語も喋れないと?」


 “喋れないよ。多分、日本人の大半は碌な英語を喋れないのは有名だと思うけど?そもそも私は海外には行った事もないし行く気も無かったから特に。“


「…都市伝説かと思ってた。」


 “残念だけど少なくとも私は碌に喋れない。単語と使い道の無い文法とかね。まぁ、聞けば少しわかる程度。“


 しかし、都市伝説って…日本に居ると正直日本語がだけで何とかなるし、最低限の英単語読み聞き出来れば何とかなってしまう。グローバルなんて言っても日本じゃ関係ないのが現実で私の周りでペラペラと喋れる人なんて何人かに一人居るかなって感じだった。結局、島にいる限り国境なんて空や海を渡らない限り現実味なんてないのだ。ベースが近くにあったり、外国人に多く出会う地域に住んでいようと、観光客よりも品行方正で軍人や役職持ちが多い為なのかトラブルも少ないし、バイトとかで出会う外国人学生は日本語学校を基本でている為に会話はどこの国の出身で有ろうと英語と日本語の混ざったものだったりするが会話が平気で成り立っていた。正直、今の方が日本語が全く通じないし英語がこの時代に浸透してるわけではないしの苦しみをここ数日嫌と言う程思い知ってる。

 この耳に聞こえるのは解らない言葉で聞き取れない言葉、字幕だって正直魔翻訳になってないかなんて分からない。こうしてここに居るだけで不安に押しつぶされそうだ。

 思わず、ここ最近で直面してる言語間の問題をここでも目の当たりにして前世はどれ程恵まれてたかを思い息を吐く。


「……溜息を吐きたいの俺だ。まさか原作知らない奴が憑依してるなんて予想外伝だ。そりゃ原作通りだなんて無茶だろうさ。仕方ないから話してやる。」


 “ありがとう“


 そう答えたメモを見せると、まずは自己紹介からだなと言われた。


「俺は王芳(ワンファン)。元は男でこの話は妹が好きで俺にもと押し付けられたら最後どっぷりハマってた。そんでお前の名前は?」


 私はアイちゃんの翻訳の細かさに少し驚く。確かに男の様な口調が所々あったけど、本当に男だったとはと。それにしても、何処でも腐女子の妹に毒される兄はいるのだと少し和んだ。


 ”私は綾崎美鈴。元は女。アニメも漫画も実写もなんでも好き。恋愛なら尚更愛し合ってれば性別も種族も関係なしの雑食。中華BLに付いては仙侠ものとか神様?の話を3、4作齧った程度だからよろしく。“


「ハハッ、転生後は俺は女でお前は男か!お互いそれだけでも苦労するな。しかし、へぇ…じゃあ仙侠モノは少し知ってるのか。それなら話は早い。さて、この話の許思浩が死ぬまでのあらすじでも手始めに話すか。って言っても、前提として言うが許思浩ってキャラは謎と伏線だらけのキャラだ。本当はその為の許思浩がメインになる作品が新章として連載される予定だったが、それは作者が死んだ事で謎のまま。」


 “この話未完成なの!?“


「まぁ、ある意味そうだ。だけど本編は終わってて、俺が死ぬ前には書籍化にコミカライズ、ドラマ化が決まってた筈だ。」


 “そんなに人気だったんだ…観たかったな。"


「俺だって観たかった。妹が羨ましいさ。それで、原作の話だがもう主人公の入門からの序章が終わって、今は鬼姫編ってヤツの冒頭だな。許思浩はその少し前にどっかの池で一人歌の練習をしてる姿を主人公が見かけたのが初登場で本来ならさっきの顔合わせで初めて知り合うんだ。」


 "あぁ、だからあの池に主人公が来たのか。私が池を覗いてたら入水自殺と間違えられて…主人公が話しかけてきたんだよね。それでそのまま顔合わせに…“


「この見掛けた時ってそんなに近い時間軸だったのかよ。まぁ、あまり原作とはズレてないみたいで少し安心した。まぁ、失声症の方が大それてるしな。まぁ、それでこれから鬼姫編が始まる訳だけどその前にざっくりとどんな話が何編あるかを説明するぞ。……まず、序章編が少なめの3話程で次に入門編が10話あってそれは既に終わってる。その後にこれから始まる鬼姫編が15話、次に詩白龍派編が20話、六仙派大会編が30話の後に転落編が60話ある中でその最初の話で許思浩が処刑されるんだ。その後に決戦編が最後に25話とエピローグ2話の全165話の長編小説として連載されていた。」


 165話って思ってたより話は少ないと言うかある意味で未完成なのだからまぁ本当に少ないのだろう。


「許思浩はその中でも出番が多かった訳じゃない。寧ろ中盤までしかいないから少なく、口数も多くない。大半は暴言を静かに吐いても、反論されると言い争う事を諦めるキャラだった。だけど、後半の主人公の回想には割と多いでるが、数少ない出番とセリフがどれも何故そこでとモノばかりで深読みがとてもできる登場とか言い方でさぁ。本当に見所の多いキャラな訳よ。」


 この人もしかしてこのキャラ結構好きなのだろうか、と言うか暴言を言うだけ言って諦めるキャラって事なの?深読みができるキャラって…それ本当に本人考えてるのか?取り敢えず性格は掴み辛いキャラってのはよくわかった。


「…って話が脱線し過ぎたな。それで目先の鬼姫編だが」


 その肝心の話が始まろうとした時にノックが聞こえる。誰が私の部屋に?ここに来るのなんて師尊以外ではあの薬老師だけ…まさか師尊か?と思いながら、でも彼らは割と勝手に戸を開けるな…と疑問に思いながら戸を開けるとそこには主人公様、朱願凜がいた。

 その姿を目にした時に、最初に出会った時、同様どうしようもなく胸騒ぎの様な感覚がする。


「許師兄。僕の準備をしっかり終えたので手伝いに来ました。……阿蝶?何故この部屋に?姿を見ないと思ったら。」


 ただ、扉の前で立ちすくんで居ると彼は優しい笑みを浮かべて用件を告げる。その際にようやく固まった私の体は動いた。けれど、その動作は誰かが勝手に自分の身体を動かした様に私の意思とは関係なく彼を部屋に招き入れたのだった。それを私は少し軽率な行動じゃないかと思った。中にはまだ王芳居て、彼にはまだ聞きたい事が山ほどある。けれど、彼…いや彼女はまるで威圧される様に朱願凜は声をかけられて話の続き所ではなくなる。

 そもそも、朱願凜が指摘しなくとも彼女がここに居るのは不自然だ。この威圧はもしかしたら仲の良い同期を心配して、許思浩が威圧されてるとも言えるのかもしれない。


「あ、えっと、私ちょっと冷静歌君が落とし物をしたのを届けに来たの。私も準備しなきゃだからこれで失礼します!」


 明らかに説明してた時と違うthe女の子と言う可愛らしい声音と口調でぶりっ子しながらそれらしい言い訳を言う。

 そして、目線だけを少し向けて、ちょ…!なんか、ごめん!逃げるわ☆ってなんか文末に星が付いてる様にも見えるその心の内が見えた気がした。


 確かに何か睨まれてるけどもやましい事はしてないのだからここに居てもいいと思うけど!?と言うかこの状況で1人にしないで!!間にいて私を助けて!!


【アイだけでは不満ですか?】


 アイちゃん、そこツッコミいる?アイちゃんには大変助かってるよ。

 しかし、その願いも虚しく李梦蝶こと王芳は部屋から出て行った。肝心の現在進行形の鬼姫編とやらの情報が聞けなかった。


 大まかな流れがあるのはわかったけども…肝心なのは目先なのよ。


「許師兄、その…ご迷惑でしたか?僕、その貴方が一人で何でも来なそうとするので…怪我が悪化しないかと不安で…。」


 善意100%と言わんばかりの台詞とペカーっと後光でも見えそうな程にキラキラした目で見られて思わず、自分の事しか考えてない様な自分に恥ずかしくなって背を背けてしまう。こんなの見てるだけでライフポイント減るわ。ただでさえ一緒に居るだけで胸騒ぎというかモヤモヤがずっと消えないっていうのに。


 私は走り書きで好きしろと書いた。こんなの無理矢理追い出すのは私には無理!と言うか許思浩自体の性格の掴みづらいってのはわかったけど、質問とか聞けなかったじゃん!!許思浩の今わかってる情報と言えば、生きるのがド下手くそで、怖がりで強がりで虚勢を張ってて、思わせな事言う子らしくって…ここを総合して強気な思わせキャラって事なのだらうけど…!


「はい。好きにさせてもらいます。」


 取り敢えず準備なんて許思浩の物の少なさなら直ぐに終わるだろう。さっさと終わらせて正当に出て行って貰えば良い。

 アイちゃん、取り敢えず再度声帯ロックと何をどう準備すればって言う参考みたいなのある?


【お応えします。声帯ロックは先程完了しました。準備の参考にはこちらの資料をご参考にして下さい。】


 表示されたウィンドウには本当に少ない荷物が書かれていた。その準備をと思うと主人公…もうそう言うのもアレだから朱願凜で今後呼ぶけど、まるで何も言わずにも知ってるとばかりに準備を終えていた。


「許師兄、基本の準備は終えました。他に必要な物は?心なしか物が少ない様にも思いますが。」


 “問題ない。もう何もさせる事など無いから部屋に戻れ。“


 その文字をしばらく見つめて朱願凜は一度口を刹那引き結んで笑って言った。「はい、わかりました。」と、そのまま部屋を出てようやく1人になる。

 どうやら本当に荷造りを手伝いに来ただけの様でアッサリと部屋を出て行った。

 な、なんなの…?本当に…?主人公に懐かれる事何かしたの?ライバルキャラと言うか主人公蔑めるキャラでしょ?それがそもそも違くて私の解釈違いなの?もう、どうやって接したら良いか分からないよ。


 私は自分を落ち着かせようと彼の準備した物を見た。正直何が必要で何が足りないかなんて分からなかったから結果としては助かってる。その荷物には琴も含まれてる様だ。

 琴は中国琴で日本で触った琴の様に琴柱(ことじ)と言う物がどうやらない様だ。昔、音楽の選択授業で琴を少しばかり学んだがどうやら中国琴はギターなどに更に近いのだろうか。私の触った琴は琴柱で音階を作るが…。


 そんな事を考えて気を落ち着かせようと画策しているとアイちゃんのログが表示される。


【お応えします。今、見ている琴は許思浩が得意としていた楽器の"古琴"又の名を"揺琴(ようきん)"です。八音と言う区切りの宗教音楽において用いられた楽器です。八音の中の種類では糸"に属する楽器で七本の弦を持ち琴柱の代わりに()と言われる十三の印に従って左手を添え、右手で弦を弾く事で音階が作られる楽器です。】


 アイちゃんがまるでwkiの様な説明をしてくれた。そう言う事も教えてくれるなんてサポートは伊達じゃない。

 しかし、やっぱコードを押さえるの感じはやはりギターとかに近いのか。少し弾いて見ようかな。そう言えば中国の楽譜って私読めるかな?琴の楽譜と言うか昔の日本の楽譜も西洋の楽譜も一応読めるけど古代中国の楽譜って見た事ないからなぁ。

 部屋の引き出しを少しばかり好奇心で漁って見るとそれらしき物を見つけるが書き込みのやり方が楽譜にする様な物だった為にらしき物とわかっただけで全く読めなかった。日本の古いと言うか和楽器系の楽譜は数字とプラスαだったからなぁ。まぁ、私は音符の方がわかりやすいけど。

 試しに徽に左手を添えて右手で弦を弾く。どうやら弦はズレていない様でチューニングは必要無さそうだ。音階さえ分かれば簡単な曲ぐらいは記憶にあるし和楽器定番の桜とかなら私にも弾けるだろうか。


 私の気分転換は見事に成功をしてしばらく夢中で琴を弾いて過ごした。

 一頻りに琴を弾いて基礎の音階は何とか分かったが難しい曲は無理だろう…と言うのに落ち着く。しかし許思浩は琴が得意として多分戦いにも使うのだろう。


 アイちゃん、琴ってオートマ対象?


【はい。対象です。曲も貴方が楽譜を確認時にスキャン済みです。】


 流石!アイちゃん!最初の数ページ以外はまともに見てなかったけどスキャン出来るとか私の時代より遥かにスペックが高いよね!


 気分も落ち着いて、不意にこの部屋の探索をさっき始めてしたなと思った。と言っても殆どの棚の中は空で出てきたのは数冊の楽譜らしき物と普通の写本数冊。後は少しの装束品に服。その他には碌なものがない。本当にどんな生活をしてたんだか。


 アイちゃん、この本のどれかが許思浩の日記とか手記とかって無いの?


【残念ながらございません。】


 手がかり無しか。本当にこのキャラって何者なんだろう。部屋の私物は少ないし、他のキャラ達との関わりも全く見えないに等しい。


 そう言えば明日は何時に出なきゃ行けないの?


【明日は今日と同じ時刻に起床後に身支度を終え、朝食に部屋にストックしてある果物を食べた後に正門に行けば間に合います。】


 私はそれを聴いてベッドに横たわる。

 この身体の持ち主のキャラもそうだけど、これから始まる鬼姫編なんて言う物騒な話の方も気が重い。

 内容が聞けたら少しぐらいは気構えとかできただろうけど、何の策略か相変わらずの情弱なまま。


 今日はもう寝てしまった方がいいだろう。一日でイベントが三つも起きたのだから。朝、昼、晩の三食キッチリイベントなんてやらされたら正直しんどいのに明日からは更に未知なる外だ。中国の地理なんて正直デカい土地だなぁって思ってただけで現代の首都が北京ってのしか知識がないって言う無知さよ。

 明日からまた気が滅入りそうだと寝床に倒れこむと疲れで眠気が一気に襲ってきてうとうとしながらそのまま眠ってしまった。



こうしてハマってみると、中国ってどんな場所なのかと言う興味が尽きません。いつか、情勢とかが落ち着いて海外に行く度胸が出来たら旅行してみたいです。

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