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十五話 いつの間にか条件達成?

 時は何もしなくても過ぎる。

 コレと言って今日も平和…とまぁ言える日々かな。

 まるで聞いていた話と違うなぁと思う。

 毒殺未遂や泥棒騒ぎやらがあるらしいが全くそんな気配もないし、他のモブと呼んで良いか分からないけど彼等もここしばらく表立って嫌味も悪口も言わない。

 ピヨピヨと毎日のように聞こえて少し耳障りだなぁと思ってたのもいざ無くなるとやはり寂しいもの。


「ここ最近は大人しいな。俺の側で大人しくもしてるし。」


「……」


「声は相変わらずだが。」


 まぁ、表立った悪口がなくなったのは四六時中付き纏う胡悠天の所為なのは明確だけど。

 私も正直何も抵抗をしなければ殴られないしと言う事で最近は反発はしない。正直、面倒臭い。どうして、許思浩はあんなにも反発したのか謎だ。

 最近思うのが寧ろ、この酔っぱらいが居るから何も起きないのかもしれないという事だ。まぁ、恐ろしい事が起きないのは本当に有難いのは確かだったりする。


 それはさておき、あれ以来、王芳と朱願凜ともすれ違いもしない。会おうと探すにも朝起きて部屋を出ると胡悠天が外で立って待ってるのだから。こいつどんだけ暇の?って何度思ったか。


「お前が毎日毎日嫌な顔してるのは相変わらずだからもう何も言わないが、どうして俺が付き纏ってるのかとか思ってんだろ。薬老師が俺に知らせたんだよ。アイツが動いてるって。テメェが奴隷としていた時の状況は俺には分からねぇ。けどな、アイツは門霊が出来るからきっと聞いたんだろうよ。」


 思わず今日もようやく部屋に戻って休む時間になったと安心した矢先に聞きたかったけど何処に地雷のあるかわからなこの男に聞きたくなくて聞かなかったことの質問の答えを言われた事に驚いてぽかーんとしてしまう。アイツと言うと恐らく楊陳翔の事だろうか。どうやら、胡悠天は楊陳翔の部下がした事を知ったからこんなに付き纏っているかと混乱した頭で理解する。

 きっと、原作では捕まったのは許思浩だから未だに閉じ込められて一人泣いてるか、胡悠天は何も知らないままだったのだろう。と言うか薬老師って誰にでも平等って感じに思えるなぁと改めて感心する。あの殴ってきた林游露とか言う男の腕も丁寧に施術や励ましの言葉を掛けていたように見えた。まぁ、楊陳翔とは仲が良くないと言うか、楊陳翔が一方的に薬老師を毛嫌いしてるような感じだったけれど。ともあれ、平等に治療をする医者がいるってだけで安心できるのは良い事だ。面倒だからと情報を流されるなんて事もしないみたいだし。


「お前はきっと信じてくれないだろうが、もう二度と約束は違える気はないからな。」


 ごちゃごちゃと考えてるうちに胡悠天はそう言って最近毎日言われて聞き取れるようになった「晚安」…おやすみと言うか言葉が聞こえて、部屋の扉は閉まる。


 部屋が閉まると同時にピロンと機械音が聞こえる。最近はめっきりと聞かなくなった音だ。そしてアイちゃんの声が言う。


【キャラクター隠し情報『胡悠天との関係①』の解放条件が全て達成されました。】


 はぁ?!?!?え????てか、そんなのありましたね!!すっかり忘れてましたよね!まさかの全て達成?条件の一つをとかじゃなく?と言うか条件なんだったっけ?確かある一定の時間を過ごして何かの任務を一緒にこなすだったっけ?それを達成したって事?


【キャラクター隠し情報『胡悠天との関係①』の情報を再生しますか?  はい ・ いいえ】


 あー、今なら確かにもう寝るだけだからはいを選びますけど…その前に心準備させてよ!!急過ぎて情緒が追いつかないって!


 私は落ち着きたいから常備されてる水差しから水を器に注いで飲む。そうして深呼吸する。そして、意を決して何だかんだ待ってくれていたアイちゃんに言う。


 すーはー……よしっ!アイちゃん、それじゃあお願いしますっ!


【かしこまりました。それでは再生に辺り床ついて下さい。目を閉じると自動的に意識が落ち、情報が夢として再生されます。】


 私は指示通りに床について目を閉じる。するとまるでブツリと意識が切断される感覚の後に視界が広がった。


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 そこは見覚えのある部屋だ。

 確か、医務室だったか。少し見渡すとそこには床に座り窶れた許思浩と包帯とガーゼを所々にした胡悠天がいた。


 この部屋の空気はどんよりと重く、許思浩は窓の外の方を向き、胡悠天は床を見つめていて、二人は同じ空間にいながらその視線は合わさらないし、言葉を交わすことは無い。


「……どうして、今更。」


 そんな、しばらくの沈黙の中で今にも消え入りそうな声でそれを破ったのは許思浩だった。それにすかさず答えを胡悠天は返す。


「すまない、迎えに来るのが遅くなった。」


「違う、そんな事を聞いたんじゃない。」


 素直に謝罪を口にした胡悠天に許思浩は直ぐに否定の言葉を口にした。その余りにも憎悪を含む声に胡悠天は困惑した声で愛称を口にした。


「…あ、阿思?」


「それで呼ぶな!貴方なんて死んでれば良かったんだっ……あぁ!もう!」


 愛称を呼ばれたのが余程癪に触ったのか、か細い声だった許思浩は怒声を上げて、苦しげに目に涙を浮かべながらそう告げた。そんな許思浩の姿を見て胡悠天は困惑して尋ねる。


「阿思?何言って…?」


「っ!貴方なんて死んでれば良かった!そう言ったんだ!!そうしたらっ!!!ぐぁっ!!」


 再度同じ言葉を口にした許思浩に胡悠天は思い切り、手を振り上げて許思浩の頬を叩いた。同じ言葉の後があっただろうにそれは消えて、許思浩は泣き崩れる。


「ハッ…あ、こ、こんな事をしたかったわけじゃ……。違うんだ…俺はお前を傷つけたく無い。そうだ、思浩、俺はお前が生きてる限り生きるし、お前との約束の為に生きる。」


「うるさい!!お前が生きてなきゃ、私は死ねたんだ!!私はお前が死んでると思った方が救われた!!助けなんて来ないと信じられたから!!なのにどうして生きてるんだ!!ならもっと早く助けて欲しかった!!なんで生きてたんだ!!なんで……なんでっ!!」


 許思浩を叩いた手を震わせながら言い訳を言う胡悠天にうるさいと叫び、許思浩は悲痛に叫んで、胡悠天の胸倉を弱々しく掴みかかりながら言う。胡悠天はそれに力無くただされるがままに聞いて、その“なんで“と言う言葉にそのまま力無く答える。


「…俺をずっと恨んでくれて良い。それでも俺はこれからもずっとお前との誓いを守るから…。」


 胡悠天は許思浩を叩いた手を少し見つめた後にギュッと手を握り、優しく開いて泣きじゃくる許思浩を抱きしめてそう言った。


「嘘吐きっ、私は絶対に信じないから…絶対に信じてあげないから…」


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 意識が今と繋がって浮上する感覚で目を開くと朝日が差していた。


 もう最後の方は許思浩が泣き疲れて眠るまでずっと胡悠天が慰めてるだけだった。その間も許思浩の心はぐちゃぐちゃと色々思ってたのは何となくわかったけどそこは私には上部以外解らなかった。

 全く眠っていた気がしないなと目に触れるとどうやら泣いていたらしい。情報の再生中は第三者視点的な感じで余り同調してるとは感じなかったが意識が戻るとあの許思浩の思いがドッと流れてきて酷く辛い気持ちになる。

 彼が言葉にできなかった、読み取れる限りの思いは生きてて嬉しいのにとか、そんな事言いたくないのにとかと言う思いから、生きてたなら何で直ぐに迎えにきてからなかっただとか、あの時逃げろなんて言わなで側にいさせてくれればとか、ごちゃごちゃとした色んな思いがぐちゃぐちゃと頭の中にある。私には彼らの過去に何があったかまでは未だな解らない。だだ、あの時が初対面でないことはわかった。けど私は思わずこんな想いになるなら見なきゃ良かったと少し後悔してしまうほどだった。今日もこの後きっと会わないといけないだろうにどんな気持ちで会えばいいのかと溜め息が出てしまう。


 悶々とする中で容赦なくピロンと音がして今度は何と思う。


【キャラクター隠し情報『胡悠天との関係①』の観覧により、キャラクター隠し情報『胡悠天との関係②』の解放条件が解放されました。続いての条件は“ある事故の時に彼に報告する“です。】


 あーーーー!!!そう言えば①でしたね!!!そんでもってまた曖昧過ぎる条件だし!!とある事故って何!!と言うか①のとある任務もいつの間にかクリアだったし!思い当たる任務なんてほぼ主人公様と王芳と行動した筈なのにって感じだったよね!曖昧なだけに割と大雑把な感じなのが助かるけどさ…。


 思わず、シリアスに浸ってればアイちゃんが追い討ちのように情報を知らせてくれる。

 コレはあれだ、読んでた話がしんど過ぎて受け入れられない状態の中更新通知が来たみたいな感じだ。嬉しいけどまだ心の準備ができてないし、でも、確信的なネタバレは嫌だしって言う複雑なヤツだ…。


 で、でもあれだ、まだ解放条件だからね。取り敢えずとある事故と言うのを聞きたいなぁ。


【お応えします。とある事故はこの物語においての血染之花嫁同様のキーになる出来事と推察されます。】


 推察って…内容はやっぱり教えてくれないのね。ここの生活ってやっぱり私には不利な事ばかりだよ。と言うか胡悠天との関係って本当に必要なのかも疑問だし、許思浩は胡悠天を憎悪しつつも何処か大切に思ったる?って感じだし、そもそも今回の情報ってそれ以外は全くわからなかったよね。結局、約束とやらもわからないし、どんな関係だったかもわからないしだし…。と言うかコレいつの話だったの?


【お応えします。『胡悠天との関係①』はここ10年以内に起きた出来事です。このシリーズの中でもっとも新しい情報です。】


 まさかの最新…と言うかナンバリングされてるんだからそれなりにシリーズがあるんだよねこれ…。せっかくなら一番古いのからが良かったよ…もう。


 本当に今まで読んできた憑依転生ものの主人公は本当にお膳立てされてて羨ましいよ。私も一応アイちゃんとかいるけど、憑依先の記憶すら見られないし、言葉もわからない。最近はようやくよく聞く挨拶とかは覚えられた気がするけど日常会話なんて夢のまた夢…世の中のホームステイする人達や留学生達はやはり私と地頭が違いすぎる。と言うか私自身文学の苦手意識が強すぎて非常に不味い、そんな事言ってられないはずなのにと思いながらも頭が真っ白になるのだから。ネットで何でも調べられる文明社会が恋しいわ…。


 と言うか何度同じ事で私は悩んでのよ。ちっとも前に進めない私が本当嫌だ。もう、自己嫌悪が凄まじ過ぎる。と言うか許思浩も許思浩だよ!何なの本当!何でこんなに嫌われてるの?記憶がわからないから尚更訳がわからないし、陰口やら悪口やらに聞き耳を立てても碌な理由も解らないし、なんならこの間の事件ですら何が理由でそんな事されていたのか解らないし、そもそも、嫌がらせが意味不明の胸糞ってぐらいだし、と言うかそもそも大した理由もないのかもしれない。ただ元奴隷だったってだけでそうなったの?日本じゃ何かやらかしたら確かに村八分とか当たり前だけど制度とかでは無いからなぁ…そもそも、自分には関係ないとか関わりたくないって思ってる人が大半だろうし、私としては差別とか楽しく無い事したく無いから、初対面でいきなり嫌いなんてしないからなぁ。むむ、結論、解らない。

 王芳とかに会えたら何か知ってるのかもだけど、今日も扉の外には胡悠天がもう居るみたいだしなぁ…。


 最近の日々は胡悠天に付き纏われながら食事や身の回りの家事をこなして、琴の練習の後に碌に書物読めない書物をアイちゃんの翻訳と合わせながら読み、瞑想して剣舞の練習なんかの繰り返し。それ以外何をしていいか正直わからないし、それで何か困った事が今は無い。文句も言われなければ、イジメの典型な仕事の押し付けやパシリなんてされた事がない。だからこそ、初めはなんか嫌われてるなぁ程度だった訳だ。まぁ、そんな嫌われてるなんて実際可愛いものじゃなかったみたいだけど。


「おい、もうそろそろ起きろ。飯が無くなるぞ。」


 おっと、悶々と考えていたら胡悠天から催促が来てしまった。と言うか、会いたくなかったからウダウダ考えて居た訳だけど、私もお腹が空いて来たのも事実だから仕方ないから身支度してでる。ようやく、この中国式の服…確か漢服だったか。日本でも最早着ても祭りの日に簡易的な浴衣しか着ないご時世を生きてきた私にはなかなかに着替えは苦戦したがこちらはもう着慣れた。やはり動作は言葉よりも覚えやすい。と言うかこの漢服がオシャレ過ぎるからついつい早く着こなしいたいが故に頑張ってしまった訳だ。言語も頑張れと正直私は私に言いたい。身支度の最後に朱願凜からもらった紙紐で髪を結えば完了だ。


 憂鬱だが、今日も一日が始まった。


 自分でイマイチ動く勇気なんて私には無いから無意味に過ぎて行くこの日々がいつまで続く。

 この日々が早く自分にとって日常と呼べるようになればいいと思うばかりだ。


長らくお待たせしました。

間がだいぶ空いてしまいましたが、また、少しづつ更新して行きたいと思いますので宜しくお願いします。

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