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十三話 目指すはハッピーエンド

「それで、このズレズレなこの原作についてなのだけど」


 そんな、王芳の言葉から再開された茶会見たいな何か。

 一息ついてら何かドッと疲れやら恐怖心やらが出てきて洗い流して着替えた筈なのに胸から腹の辺りまで未だにネットリとした血がこびり付いてる気がして気持ち悪くって胸のあたりを摩ってしまう。


「…違和感があるのはわかるが摩ると痛くなるから止めろ。それは気の所為だ。」


 私は確かにと思って止める。多分、気が付いたら触ってるかもだが。血がまだ付いてらと言うのが気の所為なのは事実だ。


「それで、ズレズレとは言ったが大筋の流れは未だに変わってないんだよな。鬼姫編も終わりは変わらず今日のだって懲罰房に送られたのが主人公なった以外は原作とも昼当たりから俺が聞いた噂が変わらずだ。だから、きっとこのままだと許思浩の未来も変わらない。」


 ん?と私は疑問に思う。この人は原作通りに事を進めたいと考えてるから私に原作の事を教えてくれてるのかと思っているが、どうして私の未来とかの話をしてるのだろうか。


「なんだよ。」


 “貴方は原作通りになる事を望んでたんじゃないの?“


「ちょちょ!!なんだよそれ!そんな訳無いだろ!!お前ちょっと色々あり過ぎて疲れてないか?!俺はハッピーエンド主義だからな!!原作を知ってる以上死なせたくない。殺す為の手引きなんてする訳無いだろ!!」


 王芳はあたふたとしながらに慌てて捲し立てる。確かに原作通りに事が進めば許思浩と言う私は死ぬ訳でそれを知っていて私に原作通りに動けと言うのは他ならぬ殺す為の手引きになるのは確かだ。

 確かにこの言われれば嫌な気分だなと思った。


「と言うか、なんでそんな必死じゃないわけだ。普通、殺される手引きしてるかもって思ってたら何とかしようとか思わないか?」


 私はそう言われて考える。死ぬと言われても原作を知らないし、死ぬまでには二十三年ほどあるらしいしで危機感と言うものはない。寧ろ、怖い思いばかりが続いてそっちに手一杯だ。そんな先の事は成る様になればいいと思うからなんとかなるだろうと特に焦ってもと思ってしまう。


 “あまり?成る様になればと。“


「おまっ……お前なぁ、マイペースそうだと思ってたけど…はぁ…。あーそのさ、この原作さ朱願凜が愛され主人公として周りにチヤホヤされてる話で各キャラとキスシーンも在ればRシーンもある。けど、最終回は李梦蝶視点で語られてて、主人公を訪ねる為に彼女がそれぞれの所に赴くのだけど誰一人幸せとは言えなさそうで主人公は結ばれずに忽然と居なくなってるんだ。だからさ、このままじゃ、主人公もきっと幸せにならない。あーつまりだな、俺はそのエンドを回避したい。」


 至極真面目な顔をして王芳は語る。この話ってR指定あったのかなんて事に気を取られつつ、愛され主人公の話だとはアイちゃんの説明もあったからわかっていたからなんで現状反発しまくってるのかと疑問な程なのだから。けど、最終回で誰とも結ばれずに姿を消すだけならどっかで幸せになっててもおかしくないと思うけどってのは現実の話で物語の話しとしてはハッピーエンドでは無いのは確かだ。ハッピーエンドと言うの愛されな訳だから皆んなで末長く幸せに暮らしましたとさが求められてると私は思うし。


「それには多分、許思浩が鍵だと思ってる。俺が確かに許思浩ってキャラが好きだったのもあるし、やたらと回想に出てきたりしたのも理由だ。だから、お前が憑依者か何かかも知れないって思った時はチャンスだと思った。それに憑依者なら当たり前に生存しようとするとも思ったしな。」


 あー聞かされてるなら確かにセオリーはそうかも知れない。けど、なんと言っても人は理解が及ばない事に対しては現実味というモノを感じられずに後回しにするだろう。少なくとも私はそれだし、何よりも異国過ぎて言葉も字幕なのだから先より目の前。


 “王芳の目的は原作改変なの?“


「え、あぁ、そうなるな。そう言う綾咲は何が目的なんだ?」


 私の目的?目的なんて大層な事は無いけど、目標は残りの余生二十三年を平穏に過ごす事で拷問されるのだけでも回避する事。しかし現状は平穏ってなんだって感じだけど。


 “目的では無いけど、目標は平穏に過ごすかな。“


「ふ、ははっ!良かった、もっとやばい事言われるかと思ったけど平穏って聞いて安心した。なら、平穏と幸せの為に先ずはこれからの原作の展開について知ってもらった上で行動しよう。」


 王芳には確か兄で妹がいたのだったなぁと思い出す。彼の死んだ年齢は知らないし私より年上なのか年下なのかは知らない。相手も知らないのだから私を妹やら思うとな様に親身になってくれてるのだろうか。まぁ、頼れるのなら頼るしか無い。アイちゃんに不安がある今、一番頼れるのは多分この人だ。


 アイちゃんが今どうして話に割ってこないのかも何を考えてかはわからないけど字幕やら私の言葉を翻訳して文字にしてくれる。これが本当にその通りなのかは分からないけどこれが無ければ私には会話も出来ない。私の生きた現代なら日本語とか拙い英語を喋って相手に助けを求める事もできるし、スマホの翻訳機能でとか手はあるけどここはそんな事は出来ない。それに日本語も私が使う現代語では無いだろうから中国に渡った平安時代辺りの渡来人って言う日本人に私が話しかけた所で会話できるかも分からない。をかしとかちはやぶるとか古文とか場合によっては方言が凄すぎてきっと会話も難しいかも知れない。古文は良いけど方言は多分わからない。関東圏の都心部に住んでたから方言なてにわかの憧れ程度なのだから。

 思考が逸れたけどアイちゃんの指示通りにして頼った結果がこのアイちゃん曰く最善は私にとっては最悪にも思える程だった。殴られるのは恐ろしかったし、切り落とされて落ちた手も知られて私に降り注ぐ血を流すその腕の断面を真面に見たのだから。血が少しぐらいなら私も女だった訳で毎月嫌でも見るから鼻血とか擦り傷程度なら平気だが、流石に切断は無理だ。


「おい、変なの思い出してるだろう。」


 ぽんと頭撫でられて思考の海から戻ると心配気な顔で覗く少女の顔だった。男口調で喋っていても今は彼は少女だ。私自身今は男でも正直未だに自覚は薄いから女の子が居るのは男が側にいるよりも安心できる。


「だいぶ弱ってるな。鬼姫の後直ぐにこれじゃ気も休まらないよな。…明日、部屋に引きこもってるか?俺は流石に不安だから主人公の様子を見に行くけど、割とショッキングかもだぞ?」


 私は怯んでしまう。恐ろしくって正直行きたく無い。


 そんな事を思ってるとピロンとウィンドウが表示される。常時でてる会話ログとは違うヤツだ。そこにはあの日パニックになっていた時に出たタブのタイトルと同じ【許思浩】と表示されていて、【怖い?私も怖い。】と表示されていた。前みたいに音声は聞こえない。


 怖い?私も怖い?何故そんな事を尋ねてそう打ち明けたの?


【理由…。…私は君に助けられてる。それだけだ。】


 私に助けられてる?心当たりが全くないのだけど?


【君は君の思うままだからこそさ。】


 思うがままにって…確かに私は感情的に動くと言うか考えているけど嫌な事嫌だと言わないと止まらないのを知ってるし、好きな事も好きだと言わなければ無意味なのも知ってる。口にするのは苦手だし、そんなに勇気もないけど、私は我慢強くもない。だから、つい要らない事を言いがちだし、言葉も足らないから相手を傷付けてしまう事も多い。思考に口はついて来れないから良いけれど言われた一言一言に答えを返してる私が居るのは確かで……。


【君はどうしたい。お礼を言いたい?それとも謝るかい?勿論目を逸らして良い。私は何時も逸らして後悔してるけど、私は勇気がない。】


 後悔。行かないと言う選択肢は簡単だ。でも、行かないと後悔するのは確かかも知れない。

 と言うかこの許思浩というチャットをしてくれてる人は多分だけどアイちゃんが試行錯誤してそう会話してくれてるかも知れないと少し感じる。私の思考は多分全部アイちゃんには丸見えなのだから、不信感を抱く私に意見をする為はそうしたのだろう。


 アイちゃん、明日会いに行くの推奨するの?


 そう尋ねると【許思浩】とタブに書かれたウィンドウは消える。


【…お応えします。行く事を推奨します。】


 何時もアイちゃんの音声が聞こえる。アイちゃんは私よりも正しいと思う。私は直ぐにごちゃごちゃと考えて沈む時は奈落の底。上がる時は空の高く。


「サポートAIと相談は終わったか?俺も李梦蝶に生まれ変わった時は赤ん坊で喋れなかったから良く助けて貰った。今でも良い相談役だな。」


 あ、ダメだ。マイナス思考になり過ぎてる。その言葉を聞いて真っ先に思い付いたのが否定する言葉だ。アイちゃんは確かに私をよく助けてくれる。今だってリアタイの字幕付けて、ログに残してくれて、相談に乗ってくれてるし、勝手に決めない。決めるのは私だ。何時も是非を問う為のボタンがあるのだから。

 明るくいたい。だから私はにこりと口を引き上げて頷く。私もそう思うと意味を込めて笑う。


「今日、ようやく笑ったな。許思浩のキャラデザ見た時から思ってたけどやっぱり美人だな。と言うか二次元だからか顔面偏差値がヤバいよなここ。モブすら大抵整ってる。」


 モブすらか。許思浩にとってのモブ達は悪口ばかりしか発せないそれに目を向けてなかったから私も関わりたくなくって顔がボンヤリしてる。流石にメインキャラの顔は良いのは目の当たりしてるけど。


「それで、原作についてなのだけどこの詩白龍派編を一言で纏めると主人公と許思浩の溝を作る為の章って感じだな。」


 “何それ…スッゴイ嫌なのだけど。“


「ここが許思浩の見せ場ってぐらいに登場するし、その後にある六仙派大会編で許思浩を孤立させて追い詰める目的もあったからなのかもな。アレはなんと言うか、大声を上げない許思浩が違うって一回だけ叫ぶシーンは本当文章なのに迫力があったな。それきり黙って逃亡するんだけどさ。」


 “孤立って…今も孤立してるけど。大会編で何か事件が起きるの?ってか大会って何時なの?“


「大会は随分後だな。十五年位先か。何でも五十年に一回らしいから。その後、許思浩の逃亡して捕らえられたのが八年後か。その後即刻処刑だったな。」


 “随分先だね。今の編って長いの?“


「まぁ、原作では何個か事件があった後に数年後って飛んだけど長いには長いと思うな。それに今回のもこんな早く起こるなんて思ってなかった。この後のイベントもどう言った間隔は解らないから用心は必要だ。」


 "因みにそのイベントって?"


「そうだな、毒殺未遂に法器紛失騒ぎ、それから呪詛騒ぎか。どれも許思浩の所為になったが、主人公にそれを回避させるキッカケを与えたのも許思浩って言う自作自演扱いになってるんだ。そこも許思浩の考察所だな。」


 もしかしたら今回みたいな濡れ衣がまた起こるかも知れないという事かと気が重くなる。


「これについては取り敢えず、後日この間みたいな英語の箇条書きにでも纏めるさ。」


 "ありがとう、アレはとても有難かった。“


「何よりだ。明日の件だが、予想が二つある。先ずは何事なく明日普通に朱願凜が許されて出てくる場合。これだったら問題が無いが、もう一つは許思浩が受けたのと同じ若しくは似たような事だな。何をしたかは主人公の身に起きてないから分からないが相当な怪我をしていて胡悠天が騒ぎ立てる事件も起きたんだ。まぁ、胡悠天がどう出るかはわからないけどな。」


 許思浩に何かあると騒ぎ立てるか…楊陳翔も似た事を言っていたっけか。冷静君に何かすれば嫌われてしまうとか何とか…。もしかしたら、ここの間で胡悠天との関係のクエストみたいながクリアする何かがあるかもだからそれも気をつけなきゃか。


「とにかく、明日お前も行くなら、早朝のに寅の正刻あー4時に迎えに行く。それまでに起きてろ。」


 どうやら、一旦は話はひとまとまりになり、私の腹の虫が鳴る。そう言えば昼は食べそびれたのだったと思う。


「そう言えば、飯もこの部屋に運べって薬老師に言われたな、冷静歌君が食べるいつもので通じるとか言ってたけど、何か食べたいのあるか?」


 “何があるか正直知らないし、私もこの身体も多分辛いのは苦手だからいつもので平気かな“


「中華料理って言っても場所だからな。俺のも見繕ってくるから一緒に食べよう。」


 そう言って気分良さげに出て行った王芳がその後いつものにプラスして多くの料理を持ってきて、あらもこれもと食べさせられる事になるとは私は予想もしてなかった。


美鈴は浮き沈みの激しめな子だとは思うので広い心で付き合って欲しいです。

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