06、モフモフが大好きなため 買い物に行った
「登録ありがとうございます。これから召喚術士の一員として頑張ってください」
『[召喚術士見習い]に就職しました』
『称号:[召喚術士見習い]を取得しました』
「これで、協会登録完了だよね」
昨日に引き続いて[New Fantasy World]にログインしていたメアリーは新しい友達のライナーからの勧めを受け、召喚術士協会に行き着いて登録していた。
職業について、各職にはそれぞれ十数軒の協会がある。
登録すると、三つの専用スキルは最大レベルを6にアップさせることができる。
しかも、ゲームのアップデートと共に、転職クエストをクリアしたら、更なる二次職、三次職に転職できるようになることである。
「今日もモフモフといっぱい遊ぼうよ。昨日は確か西よね。なら、今日は東の門に行こう!」
新しい召喚獣を集めるつもりのメアリーは鼻歌を歌いながら東の門に歩を進める。
城門に繋がる大通りの道端に、戸惑った顔をしている老婆の姿が目に留まる。
それに気がついたメアリーが老婆に尋ねる。
「おばあちゃん、何か悩みごとがありますか?」
「あぁ、勇者様!私の願いを話してもいいですか?」
「えええ! わっ、私は勇者ではありませんよ」
メアリーの受け答えに対し、老婆はまだ同じ言葉を繰り返すだけであった。
ゲームを始めたばかりのメアリーはまたプレイヤーとNPCを見分けられなかったのだ。
慌てふためく際に、システムの効果音が耳元に流れる。
『クエスト:悲しいネクロマンサーの怨念〈1〉開始条件:レベル15以上の召喚術士、一人限定』
「ネクロマンサー?確か死霊の召喚ってことよね。面白そう、やってみよう」
普通の女の子なら、死霊や亡者などの言葉を聞いたら、すぐパスしてしまうだろう。
しかし、中二病少女は、闇や深淵などのセリフを聞くだけですぐにワクワクしてしまうのだ。
何も考えずに『YES』のボタンを押したメアリーもこういう少女なのだ。
「ありがとうございます」
「いいえいいえ」
「私はこの宿屋を経営している者である。先月から、うちの地下室から女性の泣き声が聞こえてくるんだ」
「えええ! そんなことがあるんですか」
「あの日から、お客様がだんだんと少なくなってしまってね」
「それは大変だよね」
「このままでは、先代から継承した宿屋が倒れてしまうよ。勇者様、助けてください」
実は、メアリーが何も話さなくてもクエストも進められるが、ゲームのルールが分からないか、それともどうしても返事したいか。その理由は本人しか分からない。
「続けるのは……うむうむ、夜で宿屋の地下室に情報を探すことか」
夜まであと30分ぐらいのため、心配性のメアリーはメルラの店で回復ポーションを買いに行くのを決める。
メルラは既に露店をやめ、賑やかな広場の向こう側にある店舗で正式に商売を始めている。
メアリーは店の扉を引き開け、「リンリン」と冴えた鈴の音が響いた。
一人カウンターの後ろにいるメルラが声を掛けている。
「いらっしゃい、メアリーちゃんじゃないかしら」
「こんにちわ。ここがメルラさんの店か、想像より広いね」
「でしょう~ 内装はどう思う?」
メアリーは店をざっと見渡す。商品の種類や用途により分けられて陳列している。飾り気の無いが、人に落ち着きを感じさせる。
家が店を経営しているメアリーはこのような雰囲気に結構気に入るのだ。
「とても素敵よ。あぁ、今日はMPポーションが欲しんだ。一万ゼニでいくつを買えるの」
「一つは500ゼニで、20個だよ。うん、メアリーちゃんは可愛いから、二つをサービスしよう」
「ありがとう、メルラさん」
元々、メアリーは早く[闇の深淵]を買うため、薬品を買うつもりないが。昨日の戦いで既に捨て駒石の価値を存分に理解していた今では、クエストを攻略する前にできるだけ捨て駒石を補給したいのだ。
メルラがポーションを用意している際に、「リンリン」と鈴の音が響き、赤いマントを纏った男性は店に足を踏み入れる。
「いらっしゃい、あら~ クックロじゃないの」
「そういう名前を呼ぶな!オレはクラウトだ!っていうか、先客があったげ」
クラウトという男性の目線がメアリーにかぶっている冠に引かれる。
メアリーはクラウトに対して嫌な感じがないが、このようなじろじろ見られる感じは嫌に決まっているじゃない。
「ダン」とメルラが拳でクラウトの頭を叩いた。
「そんなにじろじろと見てはダメよ!次やったら、頭を殴るぞう!」
「もう殴ったぞう!いてて……」
二人の漫才みたいな口喧嘩を見たメアリーはさっきの不快感が吹き飛ばされたように「ウフフ~」って笑い出した。
「ごめんね、メアリーちゃん、うちのバカ弟が失礼なことを……さっさと謝罪しなさい! 土下座で!」
「マジ!土下座ってやりすぎでない?」
「土下座はいりませんよ!わっ、私は大丈夫ですから」
いくらゲーム内でも、大人の男性がいきなり土下座で謝罪する何て、誰でも受け入れられないだろう。
そもそも、メアリーはクラウトの目に悪意などを感じられなかったのだ。
「メアリーちゃんの顔に免じて土下座がいいんだ。さっさと謝れ」
「ごめんごめん。オレはメルラの弟、クラウトだ。さっきは嬢ちゃんの頭に飾ってる冠に引かれて、すみませんでした!」
「クラウトさんだよね。私はもう大丈夫よ。でも、どうしてこれを……」
「それは[争いの女神の冠]ってことよね。まさか、嬢ちゃんがあのダンジョンをクリアしたか?」
「えっ!あぁ、はい……」
そう、クラウトは掲示板『隠すダンジョン捜査隊』の名無しアルケミストだったのだ。
メアリーは昨日のことを二人にライナーに念を押されたため、[狩りの女神の目]とクリア方法以外を教えた。
「うん、成る程。でも……どう考えても……」
クラウトはまた聞きたいが、微笑んで拳を上げるメルラを見て、苦笑いをして諦めていた。
「お待たせ、これはメアリーちゃんのMPポーションだわ~クエスト頑張ってね」
「ありがとう、メルラさん。それでは、行ってきまーす」
メアリーが店から出ていくのを見送るメルラは弟のクラウトに尋ねる。
「可愛い子だよね。っていうか、あんたは何しに来たの?」
「あっ、姉貴、うちのボスたちがもうすぐ来るぞう!」
「ええええ!深淵の堕天使と疾風の女武神なの!何で早く言わなかったよ!!」
「オレに話すチャンスを与えたのか!」
店から出っていたメアリーの真正面から身長160無いくらい女性の二人は店に向かって歩いて来て、彼女とすれ違っていた。
全身が黒い神官服を纏った女性は何かに気付いたように、メアリーの後ろ姿をじっと見ている。
銀色の軽鎧を纏った片手剣を持つ女性は怪訝な面持ちで問い掛ける。
「エルザ姉、何故急に足をとめたんだ?」
「いや、なっ、何でもない。気のせいか……」
「捨て駒石は……これぐらいで十分。早くクエストへ行こう!フンフン~」
準備万端のメアリーは胸を張って早足で宿屋に向かう。
お読みいただきありがとうございます。
今日は初めての街を紹介します。
王都 フランクス
豊かな大自然に巡らしているインスシュライター平野の中心部に位置するインスシュライター王国の首都である。
東、西、南の三つ城門が別々にセミルカ村、アルミ村、ミノン川と繋がっている。北側には王城と大聖堂が聳えている。
この度、自分の拙作をお読み頂き、誠にありがとうございます。
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