52、モフモフが大好きなため 決着
「疾風迅雷!」
ライナーはドラゴンの注意を引くため逆方向に駆け出したが、不意に地面の氷で滑って転んでしまった。
「ライナー!危ない!早く逃げろう!!」
ネフェはドラゴンの動きに気付くと大声で叫び出したが、それはもう遅くなってしまったのだ。
ドラゴンはこのタイミングで鋭い爪での攻撃がぎっしりとライナーの体に食い込んでいた。
攻撃に斬られた時点はまた3秒の無敵時間内であったため、ライナーはダメージを受けなかったが、事情は思わぬ展開されていた。
ドラゴンはそのままに倒れたライナーをしっかりと掴むと、口までに運んでくる。
「うわぁ!放せ!何をするつもりだ!?僕は美味しくなぇ!!!」
ライナーは渾身の力でもがくでも、何の役にも立たなかった。
ドラゴンがその鮮紅な舌を出し、ライナーを舌先に乗せると口に戻ってしまった。
「付加、攻撃反射!」
ライナーがもうすぐドラゴンに噛み殺される際、ネフェはとっておきの手を出した。
ネフェの切り札が奇跡を引き起こした。
それは、ドラゴンの刃物より鋭い牙が攻撃反射の効果で全て粉々になっていたのだ。
しかし、戦闘は開発者たちさえ予想していなかった方向に展開されていた。さっきの攻撃は致死ダメージではなかったので、まだ無敵状態のドラゴンのHPバーが全く減っていなかったが、まるで咬み攻撃が終っていないように、噛みの動きを繰り返している。勿論、牙のない歯茎での攻撃はライナーにダメージを与えられないのだ。
つまり、ライナーを噛み殺さないと決して攻撃パターンを変えられないのだ。
しかし、敵に倒されないと敵を倒せるのは全く違う意味なのだ。無敵状態のドラゴンを倒さない限り戦いの行方は見えないのである。
「助かったぞ!でも、どうやってあいつを倒せるか?あっ、それは!」
ライナーはドラゴンの真っ赤な口の奥に何も見えない暗闇を見ると、それは影として入るかどうかと思って、[シャドウムーブ]を使った。
奇跡が再び起こした。
ライナーは思う通りにドラゴンの体内に忍び込んでいた。
元々、一部のモンスターの体の内部に入られるが、瞬きの間にプレイヤーを殺す強力な胃酸があったため、そういう攻略法を使うプレイヤーがほんとういなかった。
しかし、ライナーは影の中に潜り込んでいるため、その胃酸が全く通じなかったのだ。
「お前の胃袋も無敵かどうか、試して見るぞ!くらえ!」
メイプルが剣圧で肉壁を千切りつつ叫ぶ。
「うん、攻撃が通じるかどうか全く分からねぇな……まぁ、ここまでに来たら続けしかないぞ!くらえ!」
中にはドラゴンのHPバーを見えないため、ライナーは斬り続けしかできないのだ。
でも、ダメージがほんの少しだけだが、ドラゴンのHPバーが確実に減り続かった。
「うわぁ!HPが減ってるぜ!ライナーがホーントウに出来るぜ!こういう方法もあったか!」
僅かな1割のHPがあっという間に空になってきた。
HPがゼロになると共にドラゴンの体が光に変わり爆散し、ライナーが地面に落ちる。
それと同時に、地面を覆っていた氷が全て溶けていた。
二人がほっとすると地面にへたり込んだところでアナウンスが響く。
『隠しボス[アクアドラゴン]ランクA討伐成功。ただいま8ポイントを贈呈します!』
「おっと……ふぅ、やっと終わったぞ!こいつはただA級か?」
「あぁ、手強い敵だぜ!S級ならきっともうやられた。切り札を使い切りなんて、全く思わなかったぜ!」
二人は互いの疲れ顔を見ると子供のようにあどけなく笑い出す。
「「アハハハ~!」」
「どうやら僕たちが何の用もない人じゃなさそうだぜ!」
「当たり前だぞ! ほら、宝箱が出た!」
ドラゴンの消えた場所で透き通った水のように青い宝箱が現れていた。
二人は宝箱のところに着き、力を込めてふたを持ちあげると青い光が輝く二つの装備が目を引かれる。
中にはドラゴンの鱗で作られたサファイアのようにピカピカとしてロングブーツ。
そして透き通った水のように輝いて鏡で作られた六角形の小型盾であった。
「おおお!これやばくない?見るだけでその強さを感じられるぜ!」
「あぁ、僕も、早く確かめよ!」
二人はウキウキして装備の説明パネルを呼び出す。
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[水竜ノ靴]
[AGI+30]、二段ジャンプが可能になる、破壊不可
[水竜ノ鏡]
[INT+10、MP+30]、スキル[コピーマジック]、破壊不可
[コピーマジック]
鏡に映した魔法をコピーする、威力はINTに依存する、最大異なる五つの魔法をコピーできる、消費MPはコピーしたスキルの1.5倍
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「アハハハ~!凄いスキルだぞ!これで僕たちの存在意義がやっと見つかったぞ!」
「あぁ、後で皆にビックリさせるぜ!皆がどんな顔を見せるかな~もうワクワクするぜ!」
「僕もだ、それじゃ、そろそろ帰ろうっか!」
二人は脱出魔法に足を踏み入れて、湖の辺に戻ってきた。
しかし、そこにメアリーとモフモフたちの姿がもう見えなかったのだ。
「ただいま!……アレ?メアリーたちは何処に行ってたの?」
「多分クエストを探しに行ったでしょう。大丈夫だぞ!もう疲れた、早くベッドに横になりたい…」
「あぁ、あたしも」
倦怠感に襲われて二人は各自の部屋に帰り、ベッドに入ると瞬きの間に夢に誘われていた。
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