03、モフモフが大好きなため パーティーに誘われた
「えっと、MPを全部使うと24個になるね。なら、全部コピーしよう」
『[スライム召喚石(劣化品LV1)]22個を取得しました、[スライム召喚石]2個を取得しました』
『スキル:[複製Ⅰ]が[複製Ⅱ]にレベルアップしました』
「あれ?劣化品だけじゃないかしら?うむうむ、成る程」
疑問を持ったメアリーはスキルのパネルを呼び出す。
『複製Ⅱ:消費アイテムを劣化品にコピーする、劣化品の効果は本来の2%、1%の確率で普通のアイテムを取得できる、消費MP1。
「うむうむ、1%なら大当たりってことよね、ラッキー」
メアリーは僅か百分の一に当たったことで嬉しくてたまらないが、実はそうでなかった。
[複製]のような生産職スキルの成功率においては、[DEX]に左右されるのがゲームの常識であった。元々、器用はそういう言葉であったはずだ。
「それでは、早速召喚してみよ!よーし、出でよ、スライム君2号!」
劣化品の石で召喚されたスライムは普通のスライムと変わらないように見える。
この際に、もう一体野生のスライムがメアリーに襲い掛かって来る。
「新たな敵が現れた、いくよ!スライム君1号、2号!」
敵からの体当たりを受ける瞬間に、劣化品のスライムが消えてしまった。
まぁ、1%の能力なら、この結果は当然だろう。
更に、さっきの戦いでスライム1号は既に瀕死状態であったため、敵の一撃で消えさってしまった。
「えええ!何でこうなるの!来ないでぇ!」
攻めてくる敵に対し、慌てているメアリーは、新たに召喚するという行為が頭からすっぽ抜けてしまい、城門まで逃げ出した。
「大地よ!我が命ずるにより敵を打ち倒せ!」
澄んだ少女の声が響くと共に、小さな土ボコが地面に突起して敵を打ち倒した。
「あなた、大丈夫か?」
声に沿って、二人のメアリーとほぼ同じ年くらいの少女が目に映る。短い黒髪をしている凛々しい少女が声を掛ける。
「だっ、大丈夫、助けてくれてありがとう」
「それは何よりだ。僕はライナー、こいつは……」
「自己紹介できるのじゃ!あたしはアヤメ、魔法使いなのじゃ」
杖を持つ金髪をしている元気な少女は紹介を待たずに、自己紹介した。
「私はメアリー、職って……召喚術士だ。よろしくお願いします」
一番不遇職である召喚術士と聞いても、二人は少しも嫌な顔をしなかった。何故なら、彼女たちも[NFW]を初めたばかりの初心者さんだったのだ。
「そういえば、メアリーさんは僕たちと一緒にアルミ村へ行ってみるか?」
「アルミ村って?」
「あそこの森の向こう側、海辺の綺麗な村らしいよ」
「そうじゃ!新しいモンスターとクエストがあるのじゃ!」
新しいモンスターと聞いて、メアリーの目は即座にキラキラし出した。
「いくいく、行きたい!ライナーさん、アヤメさん、よろしくお願いします」
「それじゃ、すぐパーティーを組みましょう。ライナーでいい」
「そうじゃ、あたしもアヤメちゃんでいいのじゃ、メアリーちゃん」
のじゃ少女アヤメの魔法詠唱セリフを言ってるところを思い浮かべれば、メアリーはこの子と仲間になれるだろうと感じている。
「これからよろしく、ライナー、アヤメちゃん」
城の周りには、スライムやゴブリンなどの弱いモンスターしかいなかったため、三人はさしたる時間も掛けずに道程の半分を歩いていた。
澄んだ川に架かる石橋を渡り、アルミの森が目に入る。
「うん……攻略サイトによると、森にはトラハチが群れでいるそうだ。二人とも、気を付けて」
「「はい(なのじゃ)」」
三人は樹木が茂った林をゆっくりと進んでいる。
メアリーは何かを見つけたように二人に声を掛ける。
「二人とも、敵が来るよ、気を付けて」
「えっ!何処からなのじゃな!?」
「そうよ。僕も全然気付かなかった、気のせいじゃないか?」
「前から三体、右は……五体が来るよ」
「そんなに詳しく分かるなら、やるしかないね。アヤメ、右を任せろ!」
「ラジャー!」
三人が迎撃の構えを取ると、うるさい羽音を立てて黒い柄が付いたハチが目に映る。
「地獄の炎よ!我に歯向かう敵を焼き払え!」
呪文を唱えると共に、火の玉が向かい来るハチへ飛んだ。
まだ反応がないうちに、五体のハチが焼き倒された。
『レベルアップ!』
効果音を聞きながらもメアリーは、ライナーと一緒に三体のハチを相手に苦戦している。
二人と共闘するとはいえ、攻撃手段がスライムしかないメアリーは後ろから応援するしかなかった。
ライナーはハチの針に突き刺される瞬間に姿を消す。
「ツイン!」と斬撃音がすると共に、一体のハチが光となって消えていた。
ライナーが使ったのは盗賊系のスキル[隠蔽]であった。自分の気配を消し、敵の後ろから奇襲する戦法であった。
同じ方法で二体目のハチを破る時に、三体目のハチが既にライナーの近くにくる。
元々、[隠蔽]状態を維持しているライナーは敵に見つかることはあまり無いのだが、偶然にもハチの移動ルートとぶつかってしまったのだ。
ライナーがハチの針に突き刺されそうになった時、メアリーはハチに向けて、劣化品のスライム召喚石を投げた。
石が空中でスライムに変わり、ライナーの代わりに攻撃を受けて消えていた。
この隙に、ライナーがハチを斬って倒していた。
「ふうー、あぶね。助かったぜ、サンキュー、メアリー」
「いやいや、二人のお陰で、敵を打ち倒せたよ。私は何の役にも立たなかったし、アハハ……」
「謙遜する必要がないのじゃ!メアリーちゃんのお陰で、敵が来る前に攻撃を準備できるのじゃよ。さもないと、あたしは詠唱が間に合わないのじゃよ」
「そもそも、詠唱の意味は何?スキルの名前を読まなくても使えるのに!」
「いいや、あたしは詠唱しないと魔法を使えない種族なのじゃよ」
「このゲームは種族なんかないぞ!」
緊張感ばっかりの戦いが終わる。アヤメとふざけているライナーが何かを思い出すようにメアリーに尋ねる。
「メアリー、助けてくれた時、何故僕の場所が分かったの?僕は確か[隠蔽]状態のはずだったんだけど……」
ライナーの疑問を聞き、メアリーは意味分からないように受け答える。
「アレ?私、ライナーの姿がずっと見えたんだよ」
「まじ!僕の[隠蔽]は確か今まで誰も気付かなかったはず……」
「ひょっとして、同じパーティーだから見えるのかしら?」
「その可能性があるのかも。アヤメ、僕の姿が見えた?」
「いいえ、いつもの通り何も見えないのじゃ」
「それは変だね……まさかメアリーが特別なスキルを持ってるのかな」
「そんなスキルに覚えはないよ、ほら……」
メアリーはステータスのパネルを呼び出して二人に見せる。
メアリーの不思議なステータスとスキルを見た二人が目を見開き、震える声で尋ねる。
「めっ、メアリー、そのとんでもない[DEX]と[射程距離]は何なんだ?」
一応、メアリーは極振りの理由を二人に教えた。
ライナーが聞きながら、何かを思いついたように大声で口を出す。
「わかった!自分の[DEX]が相手の[AGI]の四倍以上だった場合に、隠れてる相手の姿を見破れるんだ!」
「そういうことなのかな? 私はあんまり気にした事なかったし、アハハ……」
さっきの戦いはメアリーの視点から見ると、ライナーがただ敵の後ろへ歩いて倒してるだけなのだ。
二人が話し合う時、ずっとパネルを見っているアヤメが急に大声で叫び出す。
「メアリーちゃん!このスキルはどうやって手に入れたのじゃ!?」
「どれどれ、[狩りの女神の目]ってスキルよね、これは……」
「ストップ!」
メアリーはスキルの習得方法を教えようとしたところ、ライナーが話を止めた。
「アヤメ、それは基本的にNGだよ。しかも、君はいらないだろう?」
「そうじゃ。あたしは極限の威力を目指すのじゃ!ダメージが半分になる何ていらないのじゃよ」
「そして、メアリー。このような強いスキルの取り方が広がれば、どんなことになるか分かってるか?」
メアリーは全然知らなかった。これが普及したら、β版からの戦法や育成方針などが覆される恐れがあるのだ。
「という訳で、それを誰にも教えてはいけないよ。分かったね? メアリー」
「はっ、はい、わかった」
三人が再び出発するつもり時、メアリーが地面に光っている石に目が引かれる。
『[トラハチ召喚石]を取得しました』
「えええ!何で落ちてるの!?」
「なになに?ピカピカの石なのじゃ!」
「これはさっきのハチを召喚できる石なんだけど、でも、私が倒さなくてもいいの?」
「たぶん、パーティーメンバーが倒しても落とすのかもね」
「でも、三人で倒した敵から落ちるものだし……」
「いいよ、早く召喚してみて、これは即戦力だ!」
「わかった、少し待ってください」
メアリーはレベル上げる貰った4ポイントを全部[DEX]に注ぎ込む。すべてのMPを用いて複製する。
『[トラハチ召喚石(劣化品LV2)]25個を取得しました、[トラハチ召喚石]3個を取得しました』
「オー!今回も大当たりか!出でよ!風を突き刺すイカズチ!」
メアリーは石を空に投げる。羽音を立てて虎柄を付けるハチを召喚した。
「オー!メアリーちゃんはなかなかいいのじゃ!」
「ウフフ〜 アヤメちゃん程じゃないよ」
「もう!勘弁してくれ!中二病少女共!」
三人の少女は笑いながら、再びアルミの村に向かう。
お読みいただきありがとうございます。
[トラハチ]
レベル D
HP 20
MP 0
STR 22
AGI 20
INT 2
DEX 10
VIT 2
スキル:[針刺し]しっぽに生える針で相手を突き刺すこと。消費MP無し
この度、自分の拙作をお読み頂き、誠にありがとうございます。
『面白い』『続きが気になる』と思われましたら、是非ブックマークの登録をお願いします。
拙作を評価していただけるととても励みになりますので、大変嬉しいです。




