02、モフモフが大好きなため ログインした
——王都:フランクス——
「うわぁ!これがゲームの中!?リアルとそっくり」
メアリーは初めての街を見渡す。
流行りのVRMMO と違い、最初から、大自然を伴う静かな町ではなく、立派な王都である。広い大通りの両側に西洋風の建物が建てられている。街にたくさんのプレイヤーが歩いていた。空から青く澄んで絹のような光は石の地面をキラキラと光らせている。
これこそは【NFW】の特徴の一つである。プレイヤーは召喚された勇者として、世界を守る冒険の物語である。
まぁ、初めてゲームをするメアリーが知るはずがないのだ。
「君のステータスはどんな感じか?」
「オレはSTRとAGIさらにDEXのバランスタイプだ。ほら、ステータス!」
傍にいるプレイヤーたちの話を耳に入ったメアリーは真似して同じ言葉を口に出す。
「ステータス!」
メアリーの前に半透明のパネルが浮かび上がる。
——————
名前:メアリー
LV1
職業:無し
称号:無し
HP30/30
MP20/20
[STR0]
[AGI0]
[INT0]
[DEX100(+12)]
[VIT0(+3)]
装備
頭 [空欄]
体 [初心者の服]
武器 [空欄]
腕 [初心者のグローブ]
靴 [空欄]
装飾品 [空欄]
[空欄]
スキル
ジョブスキル
[召喚Ⅰ][召喚モンスター強化Ⅰ][召喚術の素質Ⅰ][鷹の目Ⅰ][複製Ⅰ]
キャラスキル
無し
装備スキル
無し
——————
「アハハ……これは、流石に弱すぎるのかな……まぁいいか。モフモフと遊びたいだけだしね、気にしない気にしない」
このような[AGI]と[VIT]がゼロの育成方針では、敵からの攻撃を避けることも耐えることもどちらも出来なく、メアリーの言ったように貧弱過ぎる。しかも、[STR]がゼロの今、唯一の攻撃手段としての初期武器が5000ゼニに替わってしまった。
そもそも、こういう場合は誰でも直ちにやり直すだろう。
思考をやめたメアリーは道具欄を開けて確認をする。中には初期の10000ゼニと[スライム召喚石(お試し品)]3個しかなかった。
「お試しもあるのか?ゲームは優しいね、今すぐスライムを召喚しよう。出でよ、スライム君!」
メアリーはスキルの説明を読み、自分で想像したセリフを唱えながら召喚石を前にボールのように投げる。
「パタン!」と地面に落ちる石か何の変化も起きていなかった。
このような並みでない光景を見たプレイヤーたちは何も言わなく、じーっとメアリーを凝視する。
状況を意識したメアリーは頬を赤らめて、慌てて石を拾い上げる。
「アレ?何でだろう?説明通りに召喚石を投げたのに……」
「街でモンスター召喚は禁止だよ」
メアリーは手元の石をまじまじと観察していると
女性の声が耳に飛び込んできた。
声を辿ると、傍にある露店に琥珀色の長い髪をしている女プレイヤーの姿が目に映る。
「あっ、ありがとうございます」
「どういたしまして、あたしはメルラ、商人よ」
「はっ、初めまして、私はメアリーです」
「召喚術を選ぶなんて珍しいわね。理由を教えてもらえるかしら?」
「えっ、えっと、召喚獣たちと一緒に遊びたいと思って……」
「アハハ、成る程。あそこの大通りで真っ直ぐ行くと街の外だ。そこなら召喚できるよ、モンスターたちが弱いから、最初のレベル上げにちょうどいいかな」
「はい!ありがとう、メルラさん」
城の外に向かおうとした時、メアリーはその露店のある商品に目を奪われる。
「すみません、この眼帯は……」
「ウフフ〜、お客さんは御目が高いね〜 これは[闇の深淵]っていうレアアイテムよ。[DEX]を10ポイント上げるわ」
「これっていくらですか!?」
商品のいい所を説明するメルラは全く気付かなかった。メアリーはただその中二病オーラばかりのデザインに引かれるだけなのだ。
「これはね、メアリーちゃんは初心者さんだしね……予算は?」
「10000ゼニで足りないでしょうか?」
メアリーは自信満々で聞いてみる。
「うーん……それじゃ足りないわよ。せめて50000くらいは欲しいわよ」
メアリーは目が眩むような数字を聞き、さっきの自信が俄になくなっていった。
「まぁ、気付いた時には貯まっているわよ」
「メルラさんってずっとここよね」
「いいえ、明日から向こう側の店舗に引っ越すわ。あっ、そうだ、フレンド登録しましょう」
フレンド登録が終わり、メルラから貰ったHPポーションを持ち、メアリーは城の外へ向かう。
最初の城は三つの城門があるため、城の外にいる人は先程より少なかった。
メアリーは人気が少ない芝生のところを見つけた。
「出でよ、スライム君!」
投げ出した召喚石は、今回こそボムッと青い丸々のスライムに変わった。陽光で半透明の体がピカピカと光る。
「わあ、可愛いいいい!」
メアリーはスライムを抱き締めて、顔をくっつける。
「えへへ、冷たいよ」
初めて可愛いモノに嫌われなかったメアリーは天真爛漫な笑顔を浮かべた。
「では~ スライム君、鬼ごっこしましょう。まずは私から……」
町外の芝生で少女とスライムが笑いながら戯れている。傍を通るプレイヤーがその光景を見て、笑ってネット掲示板に書き込む。
「アレ、何ですぐあなたを見つけられるのかな?」
鬼ごっこに夢中で2時間があっという間に過ぎ去っていった時、メアリーはあることに気づいた。
最初の時は数分で草むらに隠れるスライムを見つけたが、少しずつ探す時間が縮まる。スライムは何処に隠れていても、一目で見つけられるのだ。
この不思議なことを考えている際、脳の中に音が響いた。半透明のパネルが浮かび上がる。
『スキル:[狩りの女神の目]を習得しました』
『スキル:[鷹の目Ⅳ]が[鷹の目Ⅴ]にレベルアップしました』
「これって、新しいスキルってね…… えぇぇぇぇ! 鷹の目はいつレベル5になったの? ひょっとして、さっきの音?」
メアリーは思い出した。遊んでいた時にこのような音が3回くらい響いていたのだ。
「うん、名前だけじゃ効果が分からないなぁ……なら、確かめよう」
——————
[狩りの女神の目]
[DEX、可視範囲、射程]が100%上昇する、プレイヤーから敵に与えるダメージが半分になる。
習得条件
同じ相手を2時間以上続けて索敵だけすること。
[鷹の目Ⅴ]
鷹の目Ⅴ:[DEX、可視範囲、射程]が50%上昇する。
——————
「アレ、これで[DEX255]になるのかな?確かレベルC以下の召喚はノークールタイムだよね。まぁ、今はレベルDしか召喚できないもんね」
[狩りの女神の目]はβ版に伝説レベルのスキルと呼ばれていた。回復職や弱体化スキルを使える呪術師、さらに、威力にこだわらず極限の射程距離を目指す遠距離職のプレイヤーにとって、夢の中でも追い求めるスキルであった。
しかし、索敵しながら2時間以上攻撃をしないことは誰もできるはずがなかった。
実は、スキル効果と[DEX]の補正によって、メアリーの視力はもう子供用の双眼鏡に追いついていたのだった。勿論、本人は全く気付かないが。
メアリーは考えているうちに、もう一体のスライムが現れた。
ぷよぷよとメアリーに這って向かう。
「あなたも一緒に遊びたいのかしら?」
野生のスライムは無邪気な顔で尋ねるメアリーに体当たりをしてくる。
「いててて、お前は悪い子ね!スライム君、こいつをお仕置しよう!!」
メアリーのスライムは命令を聞くと、野生のスライムにぷよぷよと向かってから体当たりをした。
勿論、敵は同じ体当たりで反撃した。
まぁ、全く緊張感を感じない戦いなのだ。
「スライム君!ファイト!」
元々、同じスライムの殴り合い結果は相殺に決まっているだろう。メアリーからの応援か、それとも[召喚モンスター強化Ⅰ]の効果か。一応、十回目の体当たりが当たった瞬間に、敵は光となって消えていた。
『レベルアップ!』
「ウフフ~ 悪を倒したよ。アハハハ!」
幸い、この中二病っぽいセリフは誰にも聞こえなかった。
「レベル上がったね、4ポイント増えてる。うん…… 全部DEXにしよう!」
僅か数秒間の考えで、メアリーは[DEX]後ろの[+]ボタンを連続4回押し、地面にピカピカと光るものに気付いた。
「これは……石?」
『[スライム召喚石]を取得しました』
「ラッキー!始めてすぐ落ちたよね。早速コピーしてみよう」
メアリーのゲーム歴はゼロだけど、かなりの心配性であった。
町から出る前に、既に複製を試したが。残念だが、お試し品はコピーできないアイテムだったのだ。
初めて召喚石を手に入れたメアリーは、興味津々で[複製Ⅰ]のスキルボタンを押す。
お読みいただきありがとうございます。
[スライム]
レベル D
HP 10
MP 0
STR 15
AGI 6
INT 2
DEX 8
VIT 14
スキル:[体当たり]自身の体で相手をぶつけること、消費MP無し。
この度、自分の拙作をお読み頂き、誠にありがとうございます。
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