16、モフモフが大好きなため 情報を集めよ
「うん…… それから、森の神殿でボスを倒すと転職できるぜ」
ネフェは攻略サイトを見ながら、話を口にする。
「えええ!モフモフは悪い子かしら?きっと何かを間違ったよね」
「それは、攻略サイトは……クリエニルは元々魔王軍の一員だったが、ある事情で魔王軍から離脱した。ただ本性を戻るわけってことかな?さぁ、行こぜ!」
「えっ!推測だけでモフモフを悪い子に決めた!?きっと何か理由があるよ!」
「うん……ボスを倒すとクエストがクリアだから、対話もないし……」
ネフェの答えを聞き、メアリーが腕を組んで考えている。
それを気付いたネフェが尋ねる。
「メアリー、何を思ってるの?」
「えぇ、なんか何処がおかしいと思ったけど、村人たちのこともちょっと気になる」
皆がクエストを攻略する目的は、アレアイテムを手に入れる或いは転職などの必須条件をクリアするためだろう。
そもそも、クエストのストーリーに疑問を持つのはほんの僅かな人だっただろう。
しかし、メアリーはその極少ない人なのだ。
「ネフェ、ちょっといい?」
「あたしは構わんけど、何をするつもり?」
「村人たちと話したい、きっと何かの情報があると思って」
子供のころ、隠れん坊の天才と呼ばれたメアリーの洞察力について、ネフェはよく知っている。
「まぁ、メアリーの言った通り、何かの隠しクエストがあるかも、あたしも手伝うぜ。二人なら効率もいいと思う」
「ありがとう!」
こうして、二人がそれぞれ村人と対話し始める。
しかし、誰と話してても、「クリエニル様がきっと我々を裏切ってしまったよ」のような返事しかなかった。
30分はあっという間に過ごしていた。
太陽が昇ると共に、村はだんだんと暑くなるため、二人は木陰に座って休んでいる。
「暑い、もうびしょびしょになっちゃった。何でゲームがこれほどまでリアルに似てるの?」
「ごめんね、今回は私が勘違いのようだ……」
「まぁ、へいきへいき、それで、そうろう行こっか」
「うん、よいしょっと……アレは?」
メアリーが立ち上げて、向こう側の木陰に人の姿を見つけた。
「ネフェ、さっきあっちの木陰に人が居たかしら?」
「いや、全く気付かなかったぜ。っていうか、あんな距離も見えたのか?」
「えぇ、前も言ったでしょう? 私の目がすっごく強いよ!えっと、うのめたって後は何かしら?」
「はいはい、『鵜の目鷹の目』でしょう? 早くあそこに行って探して見るぜ!」
二人は木陰に行き着いた。
メアリーが見た通り、十才くらいの子供があそこに隠れている。
二人の姿を見ると、無邪気な声で尋ねる。。
「お姉ちゃんたちは勇者様か?」
「はいはい、あたしたちは勇者よ~」
「ムムム……!」
メアリーは宝物を奪われた子供のように目を丸くしてネフェを睨む。
「わりいわりい、どうぞ」
「村の皆さんが神獣様の悪口を言ってしまう。お姉ちゃんたちも信じるの?」
「信じないよ~モフモフは悪い子じゃないもの」
「僕は真実を知ってるよ」
「やっぱりそういうことよね、お姉ちゃんに教えてくれないかしら?」
「一か月前に、僕が森で道に迷っちゃた。モンスターに襲われていた時、クリエニル様がモンスターを倒して僕を助けてくれた」
「言ったでしょう?モフモフはきっと悪い子じゃないもん!」
「しかし、その時、黒色煙が現れてクリエニル様を囲んでしまった。クリエニル様が悲しい鳴き声がすると姿が消えってしまった」
「えええええ!あの黒色煙のせいだな!よくもモフモフを!」
「あそこはこれしか残っていない」
子供がキラキラしている雫をメアリーに渡す。
『[クリエニルの涙]を取得しました』
「お願い、クリエニル様を助けてください!!」
「「任せてください! お姉ちゃんは勇者だもの〈だから〉!」」
二人は子供と別れて村から出た。
メアリーはフェルを召喚するため、詠唱を始める。
「闇の深淵から来たるものよ!今こそ我の前に姿を合わせ!出でよ、フェル!」
暗い魔法陣が輝き、可愛いフェルの姿が二人の目に映る。
「おや~これが噂のフェルちゃんか、お手~いい子いい子~」
フェルはネフェと会ったばかりなのに、すぐ仲良くしてきた。
メアリーはこれを見ると、ちょっとヤキモチしたので、フェルを抱き締めた。
「フェルはうちの子だもの!」
「えぇえ~メアリーのケチ!あたしもフェルちゃんと遊びたいぜ!」
「さっき誰が『早く行こうぜ』と言ったかしら?遊びは後で、モフモフは私たちを待っているよ!フェル、幻獣化!」
メアリーは命令を下すとフェルが3メートルの幻獣に変わった。二人はフェルに乗って神殿へと駆け出す。
晴天の午後、日光が空から鬱蒼とした森に降り注ぐ。
フェルが物凄いスピードで走るため、周りの風景が素早いスピードで後ろに飛ぶ。
爽やかな風が二人の顔に吹く。
「ウフフ~アハハハ~!」
「ネフェ?どうしていきなり?」
「楽しかった。美咲、いや、メアリーと一緒にゲームをやることが本当に楽しいぜ!」
「フフ~ 私もそう思うよ~ でもね、感心する場合じゃないよ。敵が現れたよ!」
「敵?どこどこ?あ……そう、メアリーしか見えなかったよね」
森の奥から複数の重い足音が地面の木の葉を踏み荒らして、全身が燃える炎のように赤い毛皮に覆われたクマの群れがメアリーたちの視野に入る。
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