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15、モフモフが大好きなため 友達と一緒にゲームをしよう

「お父さん、お母さん、行ってきまーす!」

「「いってらっしゃい」」


 三連休の翌日、晴れきった朝の日差しが透き通る。

 道の両側に生えている木の枝に、鮮やかな花が満開している。

 美咲は制服を着って親友の野々原瑠衣と一緒に学校へ向かう。


「はぁぁ……」


 美咲の顔色を気付いて、瑠衣が尋ねる。


「大丈夫?いい天気なのに、元気を出してくれよ」

「アハハ……ちょっと睡眠不足だもの、もう大丈夫よ」

「珍しいな、美咲は睡眠不足なんて、何をしてたのか?また徹夜で小説を読んだの?」

「いいえ、ちょっとゲームをやりすぎちゃった…」

「ええええええええええええええええ!」


 驚きの声が静かな町に木霊している。


「瑠衣!声が大き過ぎよ!」

「わりぃ!でもよ、ゲームって、どんなゲーム?」

「名前は確か【New Fantasy World】だよね。先日瑠衣がうちに買ったあれ」

「ええええ!じゃ、何故今まで教えてくれなかったの?」

「サプライズよ~ そして、私は何も分からない初心者だもの。もし最初から話したら、瑠衣がきっと面倒を見てくれるでしょう? それならゲームはつまないよ」

「そうそう~ 美咲はオーバーケアが嫌いよね。美咲がそう言ったら、きっと強いでしょう?」

「ウフフ~ 美咲様は強いよ~」

「おや~ 自信満々だね。って、美咲の職業は?」

「えっと、召喚術士だよ~ モフモフと一緒に遊ぶため」


 不遇職の召喚術士のことを聞き、瑠衣の顔色がちょっと変わったが、すぐ笑顔を見せた。


「まぁ、美咲はモフモフと一緒だけで満足でしょう?強くなくても大丈夫よ」

「いいえ、私結構強いよ!一人で隠しボスも倒せるよ!」

「ええええ!嘘?キャラの育成方針を教えてよ!」

「瑠衣なら、いいよ……」


 美咲はスキルとステータスのこと、そして三日間に起こったことをすべて話した。


「アハハハハ~!とんでもないやり方だぜ!たぶんそうやってたのは美咲だけよね?流石ゲーム屋の娘だ」

「ムムム……」


 美咲はリスのようににらめっこして、瑠衣を睨む。


「わりぃ、美咲はもう立派なゲーマーになるぜ。そして、ちゃんと新しい友達を作ったんだよね」

「あっ! そうだ、瑠衣もパーティーに入る、一緒にやろう」

「あたしはPVPが好きだから、パーティーのことは大丈夫ぜ!」

「PVPって、何のこと?」

「プレイヤーとプレイヤーの戦いのことさ。美咲にゲーム用語を教えないといけないな…… あたしのメモを貸してあげるぜ。基本的なゲーム用語がほとんど書いてるぜ!」

「それは良かった、知らない言葉はいっぱいだもの…… 助かるよ」

「いいぜ、あたしも頼みがあるよ、転職のクエスト、一緒に行ってみない?」

「瑠衣のことなら、美咲様に任せてくれ!」

「頼もし~ それじゃ、帰ったら一緒にゲームをやるぜ!」

「瑠衣と一緒にゲームをするか。もうワクワクするよ、放課はまだかしら?」

「まだ学校に着いていないよ。もう、美咲だら!」


 ◇◆◇◆◇◆◇


 メアリーはログインして、約束の場所に瑠衣を待っている。

 ある神秘的な銀色の髪をしている白いロブを纏う少女が近づき、声を掛ける。


「おや?此れは此れはどちらのお嬢ちゃんかな!飴ちゃん食べる~」


 いくら髪型と顔が変わっても、親友としてのメアリーは話し方で直ちに見分ける。


「もう、瑠衣だら!こんな色っぽい装備、私はもう立派な大人になったと思わないの!」

「いや、全然。そして、リアルの名前はNGよ、あたしはネフェだよ」

「はいはい~ ネフェ、私はメアリーよ。早くフレンド登録しよう」


 フレンド登録した二人は広場のベンチに座る。

 メアリーが尋ねる。


「ネフェの職業は?魔法使いなの?」

「今は魔法使いだけど、二次職がミラーマジシャンに転職するよ~」

「二次職だよね、知ってるよ。私の二次職はスピリットサモナーだよ。って、ミラーマジシャンって、鏡使いかしら?」

「その通りだぜ!ミラーマジシャンはね……」


 ミラーマジシャンでは、魔法使いから転職できる二次職の一種である。

 魔法使いのように高威力な魔法で敵を攻撃する攻撃職ではなく、鏡でパーティーメンバーの分身や、幻影などを作る支援職である。


「これはミラーマジシャンのことさ。でも、あたしはちょっと違ったけどね」

「へええ、そうなんだ。今日は転職のクエストよね~ 早く出発しよう!」


 二人は転送水晶でベルディナ村に移動した。

 昨日の宿題事件のせいで、メアリーは村の様子さえも見なかった。

 静かな春の日差しにうらうらとする。春独特の生温かい風が、花のにおいを含んで彷徨う。

 このような美しい景色に身を置けると、誰でも気分が爽やかになるだろう。

 しかし、村人たちはまるで心配事があるようで、戸惑う顔をしている。

 メアリーはこの違和感について思考している際に、ネフェが声を掛ける。


「大丈夫?何かを心配してるの?」

「あっ、ごめん、大丈夫よ。周りの皆さんの顔にちょっと気になっただけよ」

「まぁ、NPCだから、気にすんな。さぁ、クエストのNPCが教会の中に待ってるよ」

「あっ、うん、わかった」


 ゲームを始めたばかりのメアリーはまだNPCとプレイヤーを完全に見分けられなかった。メアリーにとって、どっちでも生身の人間なのだ。


 村の中心部に小さな教会が建っている。その扉にライオンの模様な紋章が彫っている。

 二人は教会に入り、さっきの紋章と同じライオンの彫像が目に映る。

 戸惑い顔をしている中年の男性が二人に声を掛ける。


「すみません、勇者様、私の願いを聞いてもいいですか?」

「まだ同じ言葉? もう!」

「確かに、ほとんどのクエストが始まる時はこういう感じさ。まぁ、それは無理もない、あたしたちは勇者様だからな」


『クエスト:正気を失う守護神 開始条件:レベル20以上の戦闘職、二人限定』


「それなら、始めよう」


 そう決めたら、メアリーは[YES]のボタンを押すと話が始まる。


「私たちの村を助けてください!勇者様よ!」

「はいはい」

「ベルディナ村が神話の時代から、神獣クリエニル様に守られているため。我々が森の奥にクリエニル様神殿を建てった。守護神として祀っている」

「いいじゃない。恩を返すってことよね~」

「しかし、ほぼ一か月前に、毎晩に神殿からクリエニル様の怒号が上がる。あぁ、きっと何かが起こったに違いないだ」

「ええええ! きっとあなたたちが悪いことをしたよね、モフモフが怒られないもん」

「クリエニル様は元々魔王軍の一員であった。ある事情で魔王軍から離脱してから神獣になった。もしかして、私たちを裏切ったのか?」

「ええええ! 嘘! 証拠もないのに……」

「勇者様! クリエニル様の怒りの原因をお調べいただきますようお願い申し上げます」

「しょうがないね、行ってみよ」


 前の職業クエストと同じ、メアリーはNPCとピッタリと対話していた。


「ウフフ~ アハハハハ!」


 先ほど話が始まる時から、ネフェはずっと我慢していいた。やっと限界値を突破して腹を抱えて爆笑してきた。


「ムムム…… 何よ! ネフェだら!」


 メアリーは顔を赤らめながらネフェを睨む。


「わりい、メアリーは相変わらずだね。しょうがないね、メアリーはテレビニュースでも対話できる人だから。アハハハハ!! でも、獅子ってモフモフか! アハハハハ!!!」


 ネフェは話しながら、まだ限界点を突き破って手を叩いて大爆笑する。

 いくら悪意がなさそうなので、「むむむ」と呟いているメアリーも臨界値を突破して、大声で叫び出す。


「もう!!! ネフェのバカ!!!」


 透き通った少女の声が小さな教会に木霊する。


お読みいただきありがとうございます。


この度、自分の拙作をお読み頂き、誠にありがとうございます。

『面白い』『続きが気になる』と思われましたら、是非ブックマークの登録をお願いします。

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