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賭け

 スパイダー事件から、一週間が経ちました。


 取り敢えず、使い魔・猫ちゃんが殺されていないようで何よりです。

 とはいえ、なんか手厚く迎えられているのと同時に、厳重な監視体制の下にも置かれているみたいで、再接続はちょっと難しい。

 いや、接続するだけなら簡単なんだけど、バレずにという所が難しい。


 すまぬ。まだ準備が整っておらぬのだ。

 武装勢力との安易な接触は二の足を踏む所存である。


 という訳で、野良猫から家猫にジョブチェンジして飼い慣らされておいてくれ。

 しばらくは放置一択である。


 で、使い魔二号であるスパイダー、仮名蜘蛛子。

 こいつが意外なほどに優秀。


 第一の利点。こいつ、実は結構小さい。


 あの五m越えの身体は鎧を纏った状態だったらしく、その鎧を脱いだ本体はかなり小型だったのだ。

 大体、30㎝くらい。

 地球に存在する蜘蛛としては相当に大きいけども、魔物として見れば物凄い小型だ。

 庭の陰に隠れていられるくらいで、大変に有難い。


 第二の利点。こいつ、飯の世話をしなくて良い。

 いや、霞を喰って生きている訳じゃないんだけどね。

 主食が庭を占拠しつつある魔草で良いらしく、庭で放牧しているだけで勝手にもしゃもしゃと飯を食っている。

 しかも、枯れかけだったり状態の悪い物を優先的に食べてくれるおかげで、魔草の質が微上昇するというオマケ付き。

 優秀。


 第三の利点。こいつ、思っていた以上に糸を吐き出してくれる。

 栄養状態が良いおかげか、かなりのペースで糸を生産してくれる。

 僅か一週間で、既に敷地を囲む結界は、市販のコピー用紙から蜘蛛糸製の魔布に代わっている。

 これまでとは比べ物にならない効率と耐久力を弾き出した魔布は、きちんと手入れしていれば数年は持つだろう。

 優秀。


 第四の利点。利点? こいつ、なんか勝手に成長してる。

 魔物の類だからな。

 当然、環境として魔力に満ちていた方が居心地が良い訳で。

 その点で考えると、うちの庭は地球上ではどこぞの霊山だとか聖域だとか、そんな場所に匹敵する魔界と化している。

 魔物にとっては楽園みたいなものだ。

 しかも、栄養たっぷりな魔草は食い放題である。

 天敵もおらず、のびのびと生活する蜘蛛子は、徐々に吐き出す糸の量と質が向上している。

 測定とかしてないから知らないけども、きっと身体能力とかも向上していると思われる。

 利用している身としては有難いのだが、いつか神話の超獣クラスまでなったりしないだろうか、と不安に思わない事もない。

 ……考えない事にしよう。うん、それが良い。


 まぁ、幸いなのは、こいつが協力的な事。

 私が何の危害も加えず、好きにさせているおかげか、好感度がかなり高め。

 きっと神話級になっても変わらずに私に忠誠を誓ってくれる事だろう。


 さてさて、まぁ、それは置いといて、問題がある。


 蜘蛛子の事ではない。

 こいつの事は深く考えない事にしたから問題ではない。


 それは、私の存在が確信されている事である。


 いや、まー、ほら、あの口裂け女の亜種みたいなのの時でさ、私という謎存在がいるだろう事はバレている訳だけどさ。

 でも、あれ一回だけで、それ以降は全て観戦に徹して手出しをしてこなかった訳よ。

 ピンチな場面も無かったし。


 だけど、今回は明らかな手出しをしている。

 傷付いた武士衆の治療は勿論の事、蜘蛛子をスカウトする際には莫大量の魔力を放出している。

 隠蔽魔法は使用していたけども、家に施している結界に比べればやっつけ仕事の気休め程度の物だ。


 バレるかもなー、と思ってたら、案の定、バレてやがんの。チッ。


 で、想像力豊かな連中は、どうも猫ちゃんの主と莫大魔力の主を同一人物であると決め打ちしているらしい。

 いやいや、そんな様々な可能性を考慮しない決め打ちはいけないと思うよ。

 そんな狭い視野だと、思わぬ落とし穴に嵌まってしまうよ。

 それは君たちも避けたいだろう。

 まぁ、正解なんだけどさー。


 どうしよう。


 何かをするなら家に籠ってやって、外では大人しく普通の子供らしく過ごしていれば、多分バレないと思う。

 蜘蛛子のおかげで庭の結界の性能も上がったし、きっと辿り着く事は出来ないだろう。


 でもにゃー、万が一って事も有り得るしにゃー。


 やっぱ、ちょっとは賭けに出なくてはならんのかね。

 嫌なんだよなー、賭けって。

 私は百%の自信がある時以外、賭け事はしない主義なんだけどなー。


「おい、蜘蛛子よ。どう思う?」

「シャー」

「うむうむ。成程」

「シャ、シャー」

「ほほぅ。そう思うか?」

「キシャー」

「ハッハッハッ」


 なんて言ってんのか、さっぱり分かんねー。

 いや、使い魔契約してるおかげで、なんとなく喜怒哀楽とかは分かるんだけど、今はまだ知能は発達してないからなー。

 ちゃんとした言語能力なんてない訳でして。


 うむ、良し!


 ちょっと接触してみよう。

 幸いにして、総魔鋼製魔力炉は計算通り一分くらいは持つ事が判明している。

 後先考えず本気でぶっ放す分には、一分もあれば十分である。

 地形とか盛大に変わったりするかもだが、なぁに、私の人生の為には細かい事だ。


 クククッ、待っているが良い、武士どもよ!

 今、異界の英雄(弱い)が会いに行くぞ!


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