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真実か理想の復讐者 The Avengers whith IoT(Ideal or Truth)  作者: 藍澄早瀬
第一章 真実を追う小説家 A Writer Who is Truthism
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第一章第十六話

「このウェブカメラからmirai(ミライ)ヴァイラスって呼ばれるコンピュータ・ヴァイラスが検出されたよ。これで遠隔操作されてたから、勝手に動き出したりしたんだよ。」翔騎(ショウキ)は、愛実(マナミ)たちにはよくわからない画面を示しながら言った。

「ミライ・ヴァイラス?ミライって、どんなスペリングなの?」

「そのまま、ローマ字だよ。miraiってね。」翔騎はアルファベットや記号でいっぱいの画面の一箇所を指した。そこには、miraiという文字が見えた。

「え、じゃあ、日本人が作ったヴァイラスなの?」

「うーん、それはどうかな……。一応、作成者のHNはanna(アンナ)senpai(センパイ)ってなっているけど、ライト・ノヴェルの登場人物らしいし、miraiって名前自体も日本の漫画の題名からとれれてるって話だよ。日本文化は世界にも広がってるから、日本人かどうかは怪しいね。」

「その、miraiヴァイラスってどういうものなの?」

「基本的にIoTデヴァイスをメインのターゲットにするマルウェアだね。かなり大規模なDDoS攻撃に使用されているって話だよ。miraiヴァイラスに感染したIoT機器からの攻撃で、Twitterなど、多くのウェブサイトが長時間アクセスできなくなったこともあるみたい。」

「へえ。」愛実と芽亜里(メアリ)は感心するしかできなかった。

「そんで、まあ、そっちは、定期的にパスワードを変更しつつ、常に新しいヴァイラス対策ソフトに更新するように言ってもらって、それで解決なんだけど、問題は、偶然発見した方なんだよね。」

「ん?偶然発見したってなにを?」

「やっぱり知らないのか」翔騎はため息をついた。

「え、なにを?」

「実は、本当に偶然のことなんだけど、このウェブカメラに、ボクがテストしたときにはなかったプログラムが見つかったんだ。」

「プログラム?」

「そのあと、この会社の在庫を調べたら、全部のIoT機器に同じプログラムが見つかったよ。多分、ボクがテストしたあとに書き換えられたプログラムだと思う。」

「え、ちょっと、待って。そのプログラムって、どんな?」

「ある、特定の、コンピュータにDDoS攻撃を仕掛ける、時限式のプログラムだよ。」

「そのコンピュータって?」

「……このジェリィ・フィッシュの顧客の一つ、全国の道府県警を統率する、警視庁のメイン・コンピュータ。」

「警視庁って!もし、そのプログラムが実行されたら、どうなるの?」

「たぶん、メイン・コンピュータはダウン。110番が通じない。警視庁が停電する。そして、警察無線が通じなくなる。それ以外にも、多くの影響が出ると思う。」

「『時限式』って言ったけど、それはいつなの?」

「今日の、十八時半。」

「今日!?」愛実は驚いた。爆破予告のあった日付と同じ!

 愛実はとっさに考えを巡らせた。新聞記事によると、爆破予告のあったパレイドは午後二時半から三時間に及ぶ盛大なものだ。終わりは五時半。爆破予告で最大限の警備体制を敷くことになるだろうから、警視庁内は通常より手薄になりがちだ。パレイドが行われるのは、警視庁から約二時間の地点。つまり、パレイド終了後、すぐに警視庁に戻ったとしても、DDoS攻撃はその前に仕掛けられる。今日、九月二十六日の日没時間は十七時三十三分だから、電源が落ちたら、暗闇に包まれる……。

「まずい、このままだと……!」愛実は腕時計を見た。無駄に移動に時間がかかったため、ときはすでに昼過ぎの一時だ。

 行かなければ!そう思ったとき、訊ねようと思っていた用事を思い出した。

「海月!事務所の顔認証システム、ここでは知ってるのは誰?」身体は退出しようとしながら、顔だけが翔騎に向かっている状態になった。

「え?顔認証?たぶん、俺と、社長。あとは、警視庁の顔認証システム作った社長の息子の鋼磨(コウマ)だよ。」

「ありがとう!」

「顔認証がどうしたって?」

「説明はあと!」愛実は戸惑っている芽亜里の手を引いて退出しようとした。

「ちょ、ちょっと待って、アイミ!」芽亜里が引き止めた。

「なに?」愛実は焦れったい思いをしながら立ち止まった。

「さっき、誤魔化そうとしたのってどういうことなの?」芽亜里は翔騎に訊ねた。

「誤魔化すってなんのこと?」

「さっき、『やっぱり知らないのか。』って言ったことよ。まるで、私たちが警視庁攻撃プログラムを知っているはずだ、っていう口ぶりだったけど?」

「ああ。それは、昨日進次にメイルを送ったからだよ。」

「え、メイル?いつ?」

「昨日の、六時四十分くらいだよ。」翔騎は自分のスマフォを取り出した。「うん、やっぱりそうだ。十八時四十一分。」

 愛実はそれが、進次が失踪するほんの少し前のことだと思い出した。公安の二人が訪ねてくるとき、進次は確かに、届いたメイルを確認していた。

「なんで、今日、私たちにもう一度それを知らせたの?」愛実は訊いた。「普通に考えて、ワトスンに知らせたのだから、それで充分だと思うけど。」

「その進次から、お前たちにも知らせてくれってメイルが来たんだよ。」

「え!進次から!?」芽亜里は驚きの声を上げた。その裏に、無事だとわかった安堵と、自分には無事を知らせないことへの苛立ちが混じっているように、愛実は感じた。

「ほら。」翔騎は進次からのメイルを見せた。たしかに文面は翔騎が言った通りだった。

「ありがとう。」二人は礼を言い、翔騎の部屋を退出した。


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