始まり
男は走っていた。命の為に走っていた。
暗闇の森を木々をかき分け全力疾走する。
後ろから追いかけてくるのは、ただ者のでわない足音。
行く手を阻む木々をなぎ倒し男に近付いてくる。
男は暗闇のせいで足下が見えずに倒木に足を躓かせ、その場に倒れこんだ。
男は恐怖に染まった表情で振り返った。
ゆっくりと近付く足音。
男はもう、逃げるほどの気持ちは持っていなかった。
それが男の前に現れる。
体長約五メートルはあるだろう、巨大な猿。
全身は筋肉が盛り上がっており、体躯はゴリラに似ている。
男の脳内は真っ白だった。
暗闇に眩く光る赤い眼を光らせて、巨猿は持っているものを振り下ろした。
男の頭が肉塊となって飛び散る。当たりは真っ赤に染め上がった。
「こちら、エアライン航空205便機長。現在辺りは霧で覆われ我々はなにも見えない。応答せよ」
エアライン航空205便は五時間ほど前に成田空港を飛び立った。
20分ほど前に辺りは霧が急に濃くなり、管制塔との通信もできなくなってしまった。
「ダメですね。自分たちでなんとかするしかなさそうです」
副機長が残念そうに、機長に告げる。
そのころ、客席ではフィールドワークに向かっている大学生達が騒いでいた。
「ホントにありがとうございます。米倉教授。」
都内にある大学に通う大学生十二人は教授に連れられミャンマーに向かっていたに向かっていた。
「しっかしよう。教授もいきなり連れてってくれるなんて、教授研究のし過ぎでおかしくなったと思ったぜ」
男子生徒の一人、葛貫谷章大が笑いながら言う。
「もう、折角連れ的くれたのにそんな事言わないの」
隣に座る女生徒稲崎楓が脇腹を突っつく。
「偶然知り合いから、呼ばれてね。みんなも誘っていいって言われたからな。私じゃなくてそいつにお礼をしな」
赤い眼鏡をかけて、茶色い髪を腰ほどまでおろして米倉教授が答えた。
顔立ちがよく、身体もいい。そして尚且つ若い。
これらに理由により、男子生徒からかなり人気を得ている。
その時、機体に衝撃が走った。
女子生徒が悲鳴を挙げる。
「みんな、席に戻ってシートベルトを締めな」
教授が冷静に指示する。
「なにが起きてるんだ」
乗客の叫びがこだまする。
その時だった…
物凄い轟音で機体が分裂した。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
そのまま前後別の場所に墜落した。