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告白なんて認めない

「あの……先輩、話聞いてますか?」



 その声に我に返る。

 目前にはブレザーの制服を着た可愛いセミロングの少女、知っているこの制服は近くの女子高の制服だ。

 だけど何故俺はこんな場所で彼女と話をしているのだろうか。


 駅の裏手にある駐輪場、俺はいつも帰りは特に寄る所もなく帰宅するのだが、今日は違っていた。夕暮れに染まる人気のない駐輪場にまるで映画のワンシーンのような状況。


「えっと…… ゴメンちょっとぼーっとしてて……」


 そういえば急に呼び止められ足を止めたのだった。

 彼女は俺の事を知っているようだが、俺はどこかで見かけたことがあるだろうか。

 いや、そもそもこんな可愛い子が俺に何の用なのだろうか。



「もう。 ちゃんと聞いててくださいっ、こっちも恥ずかしいんですから」


「あ、ああ、うん」



 少し照れたように怒るその少女に視線は釘付けとなる。



「だからですね…… その…… せ、先輩の事が好きなんです…… 付き合ってくれますか?」



 え? こんな可愛い子が……俺を!?


 思わず赤面し、手で顔を覆う。


 いやいやいや!? 嘘だろ…… 



「先輩は覚えてないかもしれないけど…… 私中学は一緒で……」



 え!? どうりで俺を知ってるわけだ。 でもいったいどこで知り合ったんだ!? 思い出せ!! 記憶を辿るんだ!!



「あの…… 返事のほうは……」


「もちろん! あっいや、俺の方もよろしく頼むよ」


「ほ、ほんとですか!?」


「ああ!!」



 照れたように微笑む彼女に思わずドキリとさせられる。

 こんな可愛い子が俺の彼女……

 ついに俺にも春が来たんだ……



「良かった…… 断られたらどうしようかと……」



 涙ぐむ彼女にそっとハンカチを差し出す。

 こういうのは男のエチケットだ。 今まで使われることのなかった俺のハンカチも今日は大変嬉しがっている事だろう。



「あ、ありがとう。 やっぱり湊先輩は優しいね」



 俺は今人生の絶頂にいるのではないだろうか……

 あまりにも可愛すぎるその笑顔に心に雷が落ちる衝撃が走る。



「で、でもほんとに私でいいんですか…… 私……」


「も、もちろんだよ!! むしろ逆に俺でいいのかなん……」


「ジジイじゃけど」



 気分は最高潮から最底辺へ。


■ ■ ■ ■ ■



「いいわけあるかぼけぇええええええ!!!」



 おはようございます。 湊です。 中島湊です。

 今最悪の目覚めです。 そんな都合のいい事なんてあるわけないよね。 うん、知ってた。


 可愛い少女の顔がジジイの顔に変わるのはもはやトラウマになりそうなほど。


 勢いよく叫びながら体を起こし、辺りを見渡せば知らない部屋だ。


 石造りの外壁と質素なランプ、窓辺から差し込む光は朝を告げる。


 俺はいつからここで寝ていたんだ……


 そんな思いが一瞬巡るが突如俺の右の真横がもぞりと動いたことに戦慄が走る。


 横というのは正確に言えば俺が寝ているベッドの上の事だ。 


 青ざめた顔でそっとかけられている布をめくる。


 そこには寝息を立てて眠るジジイの姿。


 水色のパジャマに身を包み、すやすやと眠るジジイの顔面を蹴り飛ばす!!



「どこで寝とるんじゃぁあああああ!!!」


「ふごぉおおおおお!!!!」



 勢いよく蹴ったジジイはベットの上から転げ落ちていく。


 あの悪夢はこいつのせいだ!!! よくも俺の純情な心を弄びやがって!!



「な、なにをするんじゃ…… 人が気持ちよく寝ていたというに……」



 コイツ…… あの蹴りを食らって無傷だと!?



「むっ!? すごい音がしたが、どうした!?」


「ふぁっ!?」



 どうしたじゃねぇええええ!!!なんでお前まで俺が寝ているベットの上で寝てるんだぁああああ!!!


 そこには黒いタンクトップ姿の筋肉ダルマことダージェフがあろうことか左側から起き上がる。


 なに!? 川の字なの? 三〇だったの!?


 慌てて自分の姿を確認する。 良かった乱れてもいないし、変に濡れてもいないし、尻も痛くない。 

 それにしてもベットでけぇな!!! 三人寝れるとかキングサイズかよ!!


 よくみれば部屋にはそのキングサイズのベット以外にはランプがあるだけ、そりゃそうだ部屋に対してあまりにもでかすぎるんだから!!

 よく入ったなこのベッド!!


 どうやら俺の貞操はなんとか守られたみたいだが……



「なぜお前らがここで一緒に寝てるんだ……」



 聞きたくはないが、もはや避けては通れない。



「む、この居住区はあまり住めるところが限られている。 それに客人として何かあったら困るからな、俺が見張りをしていたんだ」



 見張りも何もお前普通に寝てたからな。



 だからベットがでかすぎるから窓際ぐらいにしか立つスペース無いじゃねぇか。


 完全にこのベットのせいだわ!!



「しかしのう。 お主は起きるときも煩いのう」



 一体誰のせいだと思ってるんだ!!!


 ジジイはベットの上に這い上がると指をぱちんと鳴らす。


 みるみるうちに水色のパジャマはあの神父の服へと様変わりする。


 その誰に需要があるジジイの変身シーンを間近で見せられもはや言葉も出ない。

 そのキューティー〇ニーみたいな変身シーンを今すぐ止めろ!



「おお!? い、いったいどういう仕組みで!?」



 お前は食いつくんじゃない! 



「ジジイの秘密じゃ」



 知りたくもないわ、そんな秘密。



「さて、着替えも済んだことだし、行くとするかのう」


「え? どこに?」


「決まっておろう。 まずは飯じゃ」


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