吸血鬼養成講座
モスキート注は、ホワイトボードに吸血鬼の特徴を箇条書きにした。
・吸血鬼は夜行性
・ニンニクに弱い
・十字架に弱い
・胸に杭を打たれると死んでしまう
・鏡に映らない
「以上のようなキャラ付けがなされていて、これにも段階があって、お前のような見習い吸血鬼は、怖がるものからして違うことにする」
「どういうことだべか」
「初心者吸血鬼が怖がるものはこれだ」
と冷蔵庫を開け果物の王様ドリアンを差し出した。
「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ。これは強烈すぎるだ」
「さあ本気で怖がれ、さもなくば本物の吸血鬼にはなれんぞ」
「ゲホッ、ゲホッ。もう辞めたくなってきただ」
「そう言わずによく嗅げ。ゴホッゴホッ」
「ドリアンなら吸血鬼も人間も共倒れですだ」
「さすがに臭いに苦しくなってきた」
「これを部屋から出したら早いんでないべか」
と言うや否や、窓を開けてドリアンを庭に投げる天内。
「馬鹿!高かったのに」
恨めしそうに庭に投げられて砕けたドリアンを見つめる、モスキート注だった。
二人とも窓を開けて空気を入れ替える。マントを脱いでバタバタさせて風を起こしている。
「お前はマントを脱がないのか」
「マントの下は何も着ていないもので」
「それではただの露出狂ではないか」
仕方なく、自分の服を天内に与えるモスキート注であった。
「ピッチピチでキツキツですだ」
「情けない奴。気品あふれる吸血鬼になるならもう少し体形に気を配れ」
「次に吸血鬼は十字架を怖がるが、お前は見習いだから×マークを怖がることにする」
「怖くてテストが見れないだ」
「そんな感じでよかろう」
急に天内は網戸を外して持ち出した。
「これ全部網の繊維が重なってるところが十字。すごく怖いだ」
「それは細かすぎる」
「あーあ、せっかく網戸を外したのに」
ぷーんと羽音がして数匹の蚊が入ってきた。
「こら、貴重な血を吸うな」
「蚊って友達みたいなもんでねえだか」
「自分が吸うのはいいが、吸われるのは嫌だ」
「案外心が狭いんだな」
モスキート注は全身を叩いて蚊を叩き潰した。
「鏡に映らないというのがあるが、これは努力でも無理なので、差し当たっては鏡を見ないこと」
「鏡に映った自分のナイスバディを見てウットリするのが唯一の趣味だでよ」
「お前のどこにウットリする要素があるんだ! 」
「我々は昼は棺桶の中で寝て、夜になると活動する。だから今のうち昼夜逆転の生活習慣をつけておけ」
「長年の引きこもり生活で、その点はバッチリですだ」
「喜んでいいのか、情けないと思うべきか」
「最後の杭に打たれて死んでしまうというのは誰でもそうだと思うだ」
「たいていの人間はそうだが。吸血鬼はこれ以外では退治できないのだ」
「あのー、太陽光線に当たると灰になるという設定はなんだべか」
「ううむ。そういう設定もあったな」
「不意に十字架見てショック死したりしないんだべか」
「いいや、そこまでメンタル弱くないし」
「ニンニクが大量に入った餃子を間違えて食べてアレルギーとか起きないんだべか」
「アレルギーで嫌っているわけでもない」
「そんなに弱点だらけでストレスたまって早死にしないんだべか」
「うるさい! もうこの話題はおしまい」
天内のしつこい質問攻めにキレるモスキート注であった。




