濾過性病原体は自己増殖を続ける
23世紀、地球の科学は発展の一途を辿り、人類はついにウイルスの生態を解き明かした
人体や動物、植物に感染するウイルスは、自己増殖のためにその体を根城にすると今までは考えられていた
しかし、その理論は「なぜ感染者を殺すのか」という疑問により停滞していた
今回発見された理論はそれを覆す
いや、覆すというよりもその先が見えたのだ
自己増殖をするために感染するのに何故その感染者を殺すのか
その答えは実に明快であった
ウイルスは単細胞である、もはや生命ではない
違ったのだ
我々人間の脳みそからするとその行動原理は実に単一的だという考えが間違っていたからだ
ズバリ言おう、ウイルスは各々思考感情を持っており、それぞれが自分勝手な行動をしている
そしてこれこそが感染者を殺す理由でもあるのだ
集合的目標はあくまでも『増殖』である
そして個別的目標も『増殖』
個体としての増殖を優先させた結果、種としての増殖が行き過ぎ、感染者の体のキャパシティを越え、結果殺すことに至っていたのである
要はゴール地点は同じであるがその過程においての協調性の無さで結果的にゴールポストを破壊していたのだ
さて、話は変わるがまた別の研究結果でこのような発表があった
宇宙の構造と、我々人類の脳細胞の構造が酷似している、と
懸命な方ならもうお気付きであろう
23世紀現在、人間は地球内における資源の枯渇により地球外へ出て他惑星での資源確保やテラフォーミングを行っている
それは勿論人類が生きるため、子々孫々繁栄していくためである
そう、今回解き明かされたウイルスの生態と似てはいないだろうか
我々人類は、この広い宇宙で増殖を繰り返すウイルスであったのだ
ウイルスは、人体という狭い宇宙で増殖を繰り返す人類であったのである