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感傷的な季節の日々

冬がやってくる

作者: DRtanuki

 暁の空を見上げる。薄い雲がかかっているがおおむね晴れている。


 吐く息が白い。手袋をするか、ポケットに手を突っ込んでいないとかじかむような寒さになってきた。太陽が昇り、昼にでもなればゆるゆると暖かくなっていくんだろうけど。


 大地を踏みしめる。ざくり、ざくりと硬い感触がスニーカーの靴底から足に響いてくる。氷を踏んで壊すとこんな感触を得られる。視線を地面に下ろすと、霜柱が一面を覆っている。歩を進める度に小気味良い音が聞こえる。


 朝晩が寒く、昼がまだ暖かい季節。寒暖差が激しいと亡くなってしまう人が多い。いや、暑さが苛烈な季節、寒さが厳しい季節どちらでもそれは同じか。それと変わり目の季節はやはり変化について行けずに亡くなる人も居る。どんな季節であれ人は死ぬと言う事なんだろうか。


 新聞を運ぶ原付のエンジン音がこだまする。止まっては走り、走っては止まる、朝の風物詩。乗って配る人を見たことはないけど。


 


 もう少し日にちが過ぎれば、分厚くて重苦しい雲が空を覆う日が続くだろう。


 日光を遮り、寒さが足元から忍び寄って体を芯から冷やしきるような日々。暑いのも嫌いだが、かといって寒いのに慣れているかというとそういうわけでもない。


 ここ数年は本当に寒さが堪えるようになり、こんな早い時期だと言うのに朝晩の石油ストーブによる暖房が欠かせない。寒いと頭も回らないし布団からも出る気が起きないくらいに寒い。最近は少し体を動かすようにしたからそれもマシになった。冬季鬱なのではと疑うも病院に行くまでの気力は起こらない。そこまでひどくもないと自分では思っているから。



 今日は休みだ。結局昨日というか、今朝方までほぼ徹夜して起きてしまっていたので散歩をしたら急に眠気が来て、水を飲んだ後二度寝をしてしまった。再び起きたのは昼を過ぎた辺り。カーテンの隙間から差し込んでくる陽の光が暖かい。でも窓を開けるとやっぱり少し、空気は肌寒い。


 ぼんやりとしている。


 別に何があるわけでもないけど、昼に起きるとちょっとだけ損してしまった気分になる。まあ今朝方まで起きてたのが悪いんだけど。


 部屋の布団を片付けて下に降りると、昨日の残りのおかずと鍋の残りがあったのでそれを食べて、録画したテレビ番組を見て、やらなければいけない事をやって。


 気が付けば夕方になっている。午後4時にもなればもう太陽は山の向こう側に顔を隠してしまう。それからすぐにもう夜が姿を現す。


 


 冬が来るたびに憂鬱になる。


 それは何気ないもので、何かがあるからというわけではない。


 冬の季節に生まれたから冬が良いかと言うとそんなことはない。


 寒さには慣れないし、雪もあまり好きではない。仕事を始めるようになってからは交通機関がマヒする事もあって余計に嫌いである。自分で車を運転するようになったら猶更だ。


 それほど雪は降らないとはいえ、それなりに対策を施さなければあとで苦労をする。本格的な雪国程の準備をしなくても良いと思っていると、その時に限って雪国並の雪が降ってどえらい苦労をする羽目になる。備えるに越したことはない。



 やっぱり冬は嫌いだ。



 ただ、冬の夜空は割と好きだ。


 澄んで乾燥した大気は星と月を鮮明に映し出してくれる。


 どれがアルタイルだかベガだかは星座に詳しくないのでわからないけど、散歩しながら空を見上げると満点の星空が広がっているのはたまらない良さがある。


 深夜の誰もいない道路のど真ん中を、街灯と月だけが照らす道をぶらぶらと缶コーヒーを飲みながら歩く。今でも時々やっている。


 


 夜が来る。


 いつの間にか薄雲は空から消え失せ、月が煌々と輝いているのが見える。


 窓越しにそれを眺めて、僕はまた机の前に座るのだ。


 少し遠めに、石油ストーブをおいて。


 火の力は凄い。何といってもすぐに温まる。


 手先足先が動かなくなる程に部屋が冷え切っていても、ものの5分で居心地の良い暖かみが部屋中に広がる。少しばかり乾燥するのがあれだけど、暖かみには代えられない。



 僕はパソコンの電源を点けた。


 目の前に広がるのは真っ白なテキストファイル。


 さて、何を書こうかな。

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