6-初恋と失礼なやつと
「俺は何組?」
優人が聞いてきた。
「俺と同じで4組。自分のクラスぐらい自分で確認しろよ。」
すると、2人の会話を聞いていた恵が話しかけてきた。
「私達も4組だよ!なんかすごい偶然だねー。」
恵がそう言うと、優人が少しニヤけたのを健太は見逃さなかった。
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教室に移動すると、すでに多くの人達がいて話したり椅子に座ったりしている。
恵と志織は積極的にいろんな女子と話している。健太は、あの時ニヤけていた理由を聞くチャンスは今しかないと思った。
「優人、恵と志織のどっちに惚れたの?」
優人は顔を真っ赤に染めた。
「な、な、な、なんだよ、きき急に。」
「お前、ピッチャーなのにポーカーフェイス出来ないのな。さっき、恵にクラス同じだって言われたときニヤニヤしてたのを俺は見逃さなかったぞ。どっちだ?」
「恵だけど…」
健太は驚いた。優人は恵に殴られていたから、十中八九恵はないと思っていたからだ。
しかし優人が続けていった言葉に健太はさっきの驚きよりもはるかに大きい衝撃を受けた。
「なんか、恵に殴られたときにひびっときた。」
「?!?!」
「だって、いままで親以外で俺のとこ殴る女子なんていなかったから…」
思い返すと優人は端正な顔立ちから女子の人気は高く何回も告白され、そのたびに振ってきた。まったく女の子と付き合わないのでソッチの疑惑をかけられたこともあったが、まさかその真相は優人はSの女が好きな本物のドMだったからなのか。
あまりの衝撃に健太が口をパクパクしていると背後から声が聞こえてきた。
「おい、もしかして高坂シニアの柴田?」
振り返ると小柄な男が立っていた。
「そうだけど、あんた誰?」
「うわ、初対面の人に『あんた誰?』はひどくね?俺は中浜シニアでセンターやってた久保だよ。試合もやったことあるじゃん!11-0だったけど。で、柴田くんと話してる君は誰?」
「お前も充分ひどいわ。俺は高坂シニアでキャッチャーやってた今吉k…。」
「あぁ、君が今吉くんか。名前は聞いたことあるな。」
健太はすこしイラッとした。すると向こうもそれがわかったようで笑いながら謝るジェスチャーをした。
「まぁ、二人とも野球部入るんでしょ?これからよろしくね!」