13-6 縁
皆さんお久しぶりです。投票して頂いた方は1週間振りですが。
お久しぶりになのにブクマが減ってない事に喜びつつ、投稿してます。
いやはやまさかライン×マナンが1位とはね……作者もびっくりですよ。
さてもう2周年ですが、これからもよろしくお願いします。
改稿して新作品にする予定で途中で打ち切るかもしれませんが最新話を追っていただいてる方々は新作品の最新話から読めば大丈夫な予定ですのでご心配なさらず。ストーリーや描写が変わっているので楽しみたい方は最初から。
新作品としての投稿予定は未定です。まだまだ先の事ですけどお知らせしときます。
結局、アリサも付いてくる事になった。見つかってあれだけ言われた以上こっちは容認するしかなかった。あそこで騒がれても子供達に気付かれるし、彼女は何としても付いてくるだろう。
東京行きのリニアモーターカーの窓から外を眺める。今は夜で景色は見えないがたまに見える街並みの光が人が生活していることを実感させる。
ふと目の前に座るアリサの寝顔が目に入る。小さな寝息を立てて寝てる様子は普通の女の子だ。
まあ戦闘があって、泣いたら疲れるのは当たり前だ。
それにしても彼女があれほど強いとは……戦闘で大の男を倒していた。
普通の女の子に見える彼女があれほどの力を手に入れてるのはやはり柳生の賜物だろうか。
アリサの隣には寝ているのか、瞑想しているのか分からない師匠が座っている。布袋で刀と分からないようにして抱いて目を閉じている。
すると突然師匠が目を開いて目が合う。
「お前は人の寝顔を見る趣味でもあるのか」
「い、いえ、そんなことは……」
クソ、やっぱり起きていたのかよ!!
まあ気にならないと言えば嘘になるけど……
頭を捻って必死に言い訳を考えていたが師匠はこれ以上追求もせず、また目を閉じた。
助かったと安堵しながら、顔を照らす月を窓から見上げる。
エルス国から見上げるのと同じ月なはずなのに、何故かとても愛おしく感じた。
ーーーーー
東京ーー昔の日本の首都であり、現在でも日本の中心である。
聞いてた通り、人はものすごい多い。ここに1000万人も居るらしい。
昔はほとんどが日本人だったらしいが今は所々に外国人が居る。だから俺が歩いても目立たない。
もはや外国人は珍しくないらしい。地方に行けば珍しいが大都市圏は外国人だらけだ。
師匠達とは駅で別れ、買い物に向かう。
既にあのクソ警官が指名手配にしてそうだ。日本人で顔がバレている師匠達は指名手配されたらもはや外に出られない。
だから名前も顔もバレてない俺がアリサのパシりとなったのだ。
で、買う物は化粧品とかかよ。こんな時にも必要なのか……
長らく供にいたティナは化粧をしなかった。だから化粧は必ず必要ではないのかと思っていた。
だがこんな時にも必要になる化粧品はそれほど大事な物なのだろう。
メモを元に地図や案内板を頼りに店を探す。アリサが店指定しなければこんなに探さなくて良いのに。
ため息をついていると目の前の歩行者信号が赤になる。そして信号が青になり、車が行き交う。
車の凄い数に驚かさせられる。エルス国のウェリントンでもこんな数は居ないぞ。人口が集中している東京の狭さを感じる。
そして赤信号になり車が止まる。だが1台の車が信号を無視し、停止線を越えて行こうとする。ああいう輩は何処にもいる物だな。そこは日本もエルス国も変わらないようだ。
マナーが悪いなと思うだけで済むかと思ったら、そこに子供が飛び出していた。それも向こう側の母親を目がけて走っていた。
その子の母親が悲鳴を上げて、戻るように言うが子供には聞こえていない。また誰も助けようとはしないのだ。
そして猛スピードで侵入してくる車の速度は変わらない。ちくしょう!! よそ見運転か!!
咄嗟に足が出るが、理性が踏みとどめる。理論上魔法を使えばいろんな方法でも助けられる。車を方向転換させても良いし、止めても良い。そして子供を安全な場所に移動させても良い。そう魔法を使えば簡単な事なのだ。
だが自分の立場が邪魔をする。外では珍しい魔法師が外で魔法を使う。そしてどの魔法師も詰問を受けるだろう。そのとき俺は証明する身分証明書がない。そう身分のない魔法師は捕まるのが関の山だ。
子供を救う為に捕まる……目の前の命と自分の身を天秤に掛ける。
そして一つの結論に至った。
俺はどっちも諦めないと。
再度足に力を込めてバネのように使って飛び込む。その速度は魔法を使っている時よりもかなり遅かった。そして子供を抱いた時には目の前に車が来ていた。
目の前にいきなり現れた大きな物にびっくりして運転手はハンドルを切るが間に合わないーー
……痛みは不思議となかった。いや衝撃すら無かった。即死だったのだろうか。痛みすら感じる前に俺は逝ったのだろうか。
そして子供は無事なのだろうか。咄嗟に車に対して背中を向けたが、衝撃を受け止められたのだろうか。
次第にはっきりしていく意識の中何かに包まれている感覚がする。
そして覚醒した意識で俺は人に抱かれていると理解した。
目を開けるとそこには同じぐらいの年だろうか、珍しい白髪と赤い瞳をした細い体の大きい男が俺と子供を片腕で抱えていた。軽々と抱える様子に魔法師だと理解する。そしてもう交差点から抜けていた。
「大丈夫か? 怪我はないか?」
心配してくる瞳に嘘は無かった。本当に心配していた。
「い、いえ。あの、ありがとうございます」
何とか出て来た言葉は何ともたどたどしかった。
すると男はゆっくりと降ろしてくれる。もう踏めないと思った地面を踏む感覚がとても新鮮に感じる。
子供は地面に降ろさせると泣きながら母親に駆け出す。母親も泣きながら子供を抱きしめ、何度もお礼を言う。
その様子を微笑ましく見ている男はこっちを向いてニヤリと笑う。
「それにしても、お前も良い度胸だよ。もし俺が通りかからなかったら死んでたぞ?」
確かにその通りだった。速度も跳躍距離も足りなかった。一般人よりは早いかもしれないが、魔法を使った時に比べ、遥かに遅かった。
魔法習得してから魔法が使えない時が無かったので自分の尺度がおかしいのだろう。
今更だが、この人が居なかったら死んでたことを実感し、体が震える。飛び出した時は怖くなかったが今はものすごく怖い。
震えだした俺の体を見て、男は目を丸めて驚く。
「今更怖くなったのか!? 面白い奴だな」
くくく、とおかしくて笑う男に不思議と苛立ちは覚えなかった。助けてくれたのもあるが、何だろう、言い表せない何かがこの男との間に感じる。そう不快感じゃない。何か、何かがある。
分からない何かを考えていると男の隣に軍服を着た俺よりも若い真面目そうな男が現れる。
「こんな所に居たのですか。探しましたよ……」
大きなため息を吐く男に白髪の男はせせり笑う。
「ふっ、全く護衛はいらないと言ったろうが。俺に傷つけられる者が居たら会いたいな」
自信満々にそう宣言する白髪の男に真面目そうな軍服の男は眼鏡をクイッと上げる。
「そうですか、外で飯を食べると言いながら財布を忘れる上司居るわけありませんよね? ノエ特佐?」
ーーノエ!? まさかあの白い死神のーー
確かに特徴的なアルビノ。それで魔法師はノエしか思い当たらなかった。
ノエと呼ばれた男は頭を掻いて誤魔化す。
「そんな奴は知らないな。お、財布ここにあったか」
と瞬時に財布をひったくるノエ。
そしてそのまま逃げようとしていたノエは立ち止まり、振り返る。
「そういえば、お前の名前は?」
目の前の男はノエーー敵である火星独立軍のNO.6である光一族ノエだ。正に敵の幹部。だが俺の素性はバレてないらしく、彼の表情は穏やかだ。
名前ぐらいは大丈夫だろう。
「私の名前は……ラインです」
すると男は背中を向けて手を挙げて去って行く。
その後を追いかける真面目そうな男だった。
ーーーーー
魔法も使わず、無謀にも車に突っ込んだ男。俺が居なかったらアイツは死んでいた。それにもかかわらず、恐怖を感じたのはその後。
何とも面白い奴だった。
ライン。何故かこの男には縁がある気がする。そうまた遠くない内に会う気がするのだ。




