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12-6 3度目の初陣

8月6、9、15日。戦争物を書く自分としては忘れてはいけない日です。あの悲劇から72年。あの日から人類の戦争は変わってしまった。自分すら滅ぼす核持ってしまったから。核の無い世界を祈って……


さてさて週2更新何とか出来ました。もう少し書ければ良いなぁと思いながら。

そういえばUA10000ありがとうございます!!


大きな目標だった10000ですが今ではまだまだと感じます。次は100000と行きたい所です。

これからもゆっくりですがよろしくお願いします<m(__)m>






 敵の響き渡る咆哮は敵を鼓舞し、こちらの足を竦ませた。その咆哮は理性を失った物では無く、気迫のこもった咆哮だった。


「お前らぁぁ!! 小便臭いガキのような惨めな戦いをしてんじゃねぇ!! 俺達はプロ、そうだろう!?」


「「「おう!!」」」


 バラバラだった敵の動きが一つの塊となって動き始める。先程までの動きとは全く違う。最初の時のような気迫を感じる。


 これがエリート部隊か。流れを変えるために声が通る咆哮をして、再度心をまとめる。この荒くれ者達をまとめられる指揮能力の高さに素直に尊敬する。

 だがそう感心してもいられない。敵がまとまったならピンチになるのはこちらだ。


「てめぇら!! 目指すのはただ一つ!! 頭の首だけだ!! 行くぞ!!」


 一丸となってこちらに向かってくる。どうやら俺の首がご所望らしい。


「前衛、隊列を組み直せ!! 突破させるなよ!! 後衛、斉射用意!! ……撃てぇぇぇ!!」


 銃火器や弓、魔法が無数に敵に襲い掛かる。ウォールシールドで防がれるが幾つかは敵に命中して地面に突っ伏させる。

 だがその突撃速度は変わらず前衛と衝突する。


 こうなるともはや後衛は手が出せない。いや集団戦すら危うい乱戦となる。先程の乱戦とは違い、敵は息を吹き返している。優勢どころか劣勢だ。もはや遠距離部隊は機能しない乱戦になるだろう。


「……これよりは白兵戦となる。全員、着剣!!」


 銃火器を扱う者は銃の先に銃剣を付け、弓、魔法の者はショートソードを抜く。

 俺もロングソードを抜いて、構える。


「行くぞ!! 味方を救うぞ!!」


 戦っている前衛を援護しに後衛部隊で駆けつける。後は奮戦するのみだ。


 部隊が左右に分かれてる為、挟み撃ちの形となっているが今回は裏目に出た。指揮官である俺の部隊は50人。そして敵も50人。


 後ろと横から味方が攻撃しているが、それでも敵の勢いは止まらない。後衛が前衛と合流するも既に押し込まれてきている。

 まだこの首とはお別れしたくないな……


 決死の覚悟で突っ込んで来る敵にこちらは完全に及び腰だった。

 みるみるうちに戦列の中央に穴が空く。

 そして先頭を走る敵と目が合ってしまう。

 血走った瞳でこちらを睨み、更に速度を上げる。余りの勢いに戦列が分かれ、俺への道が開けてしまう。


 慌てて剣を構えるがもはや気持ちは負けていた。敵の凄まじい気迫に、決死の覚悟に。

 戦争は何時死ぬか分からない。俺達はそれを承知で戦っている訳だが、本当に死んでもいいという人は居ない。それも今まで死とは無縁だった学生達だ。死ぬ覚悟で突っ込んで来る敵に道を譲るのが精一杯だろう。


 目をつぶりたい。恐怖の余り逃げ出したい。だがそれは負けな気がした。小さな抵抗だが最後まで敵に剣を向けよう。


 震える手に力を込めて敵に剣先を向ける。最後まで目を見開いて敵の目を見てやる。


 目の前まで迫った敵に剣を振るが易々と防がれ、返した刃が迫るーードスッーー


 ……ん? 痛くも痒くも無い。


 ふと体を見るが自分の体に傷一つどころか、1滴の血すら流れてない。


 そう目の前で敵が止まっていた。時が止まったように敵が固まっている。まさか時間でも止まったのかと周りを見るが、相変わらず激しい戦場にいる。

 混乱していると敵がそのまま地面に突っ伏す。その身体の後ろから現れたのは赤髪の男ーーグレンだった。


「いやぁ間一髪だったな、ライン」


 苦笑いするグレンに安心して腰を抜かしてしまう。


「ぐ、グレンかぁ……助かった……」


 地面に座り込んでしまった俺に手を伸ばして立ち上がらせるグレン。


「すまん。まさか突破されるとは思ってなかった。それにしても良く最後まで目をつぶらなかったな」


「……何にも出来なかったよ。俺は、俺は3年間一体何をして来たんだぁ!!」


 心底無力な自分に嫌気が差す。アカデミーではそれなりの実力を付けたはずだ。だが初めての実戦では恐怖の余り、まるで実力を発揮出来ず、軍人である自分は一般人のように死の刃が振り降ろされるのを見てるだけだった。


「あの時の無力な自分を変えたくて軍人になったのに俺は、俺はぁ!!」


 家族を失ったあの時にまるで動かなかった身体。もしあの時身体が動いていれば家族を助けられたかもしれない。もう無力感を感じたくなくて力を付けたのにこのザマだよ。


 自虐的に微笑む俺を見てグレンは俺の額にデコピンをする。


「痛っ!? ……何だよ」


 結構痛かったので睨みつけてしまう。だがグレンの表情を見て心臓に寒気がした。冷たく、悲しそうな表情だった。


「ライン、お前はまだ生きてる。そんな泣き言は死んでからしろ。いいか、ここは戦場だ。下を向いた奴から死んでいく。前を見てないと次は死ぬぞ」


 同じ年齢にしてこの表情と言葉。グレンは一体どんな生活を過ごして来たのだろうか。もはやこのような場が“慣れている“と言っても良いだろう。その過去にまだ触れてはいけない気がして、出かけた言葉を飲み込む。


「……そうだな、俺はまだ生きてる。生きる為に前を向かないと」


 精気を取り戻した俺の事を見て、グレンは満足そうに微笑む。


「しっかりやれよ、指揮官さんよぉ」


 乱戦となっている戦場にまた舞い戻るグレン。その背中はとてつもなく強い意志を背負っていた気がした。






 -----


 凄まじい気迫と勢いで押し込んでいた我々は正面の敵の戦列を一度開いたが敵の後ろや横の猛烈な攻撃によって次第に勢いを失っていた。


 また一人、また一人と同僚が倒れていく。同僚が倒れた事に動揺してない訳では無いが、そんな暇があるなら一度でも多く剣を振る。


 そんな努力も虚しく、3倍近くの敵に囲まれ攻撃されているのに良く耐えたと思う。


「先輩……」


 これからどうするかと視線を送って指示を仰ぐ。


 先輩は背中を向けてまま剣を振るって暫く答えない。そして振り返った先輩は決断する。


「作戦は失敗だ。これほどの数と強い敵を突破して敵本陣を叩くのは不可能。そして奇襲でも無くなった。被害と戦果が見合わない。

 全軍、退却する!! 各個散開しろ!! 回収地点は未だ機能してるはずだ。散開!!」


 ワイヤーの巣になっている所から我々は逃走を開始する。ワイヤーは魔法か剣で容易く切れる。


 もちろん敵も追撃を始めるが、その速度は遅い。


 まさか負けるとは思っていなかったこの戦いに背中を向けて逃げるのは悔しいが引く時には引くのが戦場の鉄則だ。






 -----


 敵は逃走を開始した。だがそれは戦意喪失で逃げるのでは無く、統率が取れた退却であった。

 迂闊に追撃出来ない陣容にこちらも追撃速度が落ちる。


「ライン、追撃は我々に任せろ。ここからは俺達の本領発揮が発揮出来る」


 ニヤリと笑うグレン。まだ本気出してないのかよ。


 頷いて承諾するとグレンは忍者達と教員陣を率いて追撃戦に移る。


 ここに残ったのは俺達アカデミー生とエマ先生。


 もう何人ものクラスメイトが地面に倒れている。エマ先生や医療技術のある生徒が治療を施している。

 そして誰もがあちこちに傷を負っていた。満身創痍じゃない人は居なかった。それだけこの戦いは厳しかった物だと分かる。

 俺もグレンの助けが無かったら今頃……


 顔に服が掛けられているクラスメイトも居る。それはもう助けられなかったクラスメイトだ。

 エマ先生一人では手が回らないのが現状だ。エマ先生以外の治療魔法が無い現状では止血が精々だ。


 エマ先生は重傷の子から治療魔法を掛けている。額には大粒の汗がたくさん浮かんでいる。小柄な身体に俺達の全てを託しているのは何とも言えぬ無力感に襲われる。

 ウェリントン基地に回収要請を送ったが前線も手一杯なので時間は掛かるだろう。


 すっかり景観が瓦礫まみれになってしまったこの場の瓦礫の上に座り込む。

 そして異様な疲れが襲いかかる。肉体的では無い。精神的な物だろう。

 そんな疲れている時に隣に人の気配を感じて、顔を上げるとマヤが居た。


「……お疲れさま」


 それだけ言うと隣に座る。

 初めの間には様々な思いが篭もっているのだろう。疲れた今はお疲れさま、だけが有り難かった。


「こちらこそ、お疲れさま」


 気の利いた事でも言いたかったが、これが最適で最短な気がした。


 マヤは疲れた微笑むでこちらを見ると目線が合う。もう言葉を吐かずとも分かる。お互いに疲れ切ったのだ。この何も考えなくて良い時間がこれほど幸せに感じるのは不思議だ。


 そんな無言で不思議で心地の良い雰囲気のこの場にまた動乱が迫ろうとしていた。



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