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9-3 ライン達の初任務

 ラインが酒で火照った顔をしながらホテルの廊下を歩く。廊下の静かな雰囲気はラインにさっきの出来事を思い出させる。


 初めて女の人に抱き締められた。それも好意を持って。いや実は好意では無かったかもしれない。あれは接客の一つだったのかもしれないと彼女を信じられない自分が嫌になる。

 頭を振り払うラインに鼻腔に付く微かに残る彼女の香りがさっきの事は夢では無いと再認識させる。


 次会ったら謝ろう……と心に決めたラインは自分の部屋のドアを開ける。そこからは薄暗い中、テレビの明かりだけが照らしていた。


「マナン? 居るのか?」


 とのラインの呼びかけにマナンは布団からモゾモゾと顔だけを出して、答える。


「……ああ、お帰り、ライン」


 明らかに体調の悪そうなマナンに心配になる。


「どうしたんだ? 体調崩したのか? 薬貰ってこようか?」


 心配するラインにマナンは首を横に振る。


「いや……いいよ。正直寝不足で飲んだからだと思う。凄く眠くて……ふぁぁぁあ……お休み……」


 その言葉の直後、静かな寝息を立て始めたマナンにラインは安心する。


「何だ、寝不足かよ……心配させやがって」


 穏やかな顔で寝るマナンに怒る気にはなれない。


 自分も布団に入って、テレビを消そうとすると控え目にノックされる。


 こんな時間に誰だ? もう誰も起きてないはずなのに……


 若干来ていた眠気を飛ばして、ドアスコープから覗き込む。

 そこには黒のタンクトップと水色のショートパンツを穿いたティナが不安そうな顔で居た。


 ドアを開けると少し安心した表情になるティナ。


「どうしたんだ? こんな夜更けに」

「……とりあえず中に入れて貰えるかしら?」


 真剣な表情のティナに断れる雰囲気では無かった。


 中に入ったティナとラインはベットに腰掛ける。


「それで、どうしたんだ?」


 とのラインの問いかけにティナは話し出す。


「実は同じ部屋の子がどこにも居なくて……」


 ふう、何だ部屋の子の話か。真剣な顔してたからもっと重い話かと思ってた……


「トイレとか、お風呂に居ないなら、俺達みたいに誰かと逢い引きしてるかもよ?」


 ニヤリと笑うラインにティナは呆れて溜息を付く。


「……はあ、全く、男はすぐ恋愛に持って行く……それだったら良いんだけど……」


 含みを持たせる言い方にラインは頭を切り替える。


「……どういう事だ? そんなに見つからないのなら先生にーー」


 立ち上がったラインをティナは引き止める。


「待って!! ……おかしいの」

「何が?」

「……私達以外に誰も居ないの!!」


 衝撃の言葉にラインは開いた口が塞がらない。


 誰も居ない? グレンもエマ先生も? まさか従業員すら!? 


 まさかという視線を送るが、ティナは無言で頷く。


「本当に誰も居ないわ。廊下歩いてる時に不思議に思わなかった?」


 ーーっ!? 確かに廊下歩いた時に野郎共のうるさいいびきが一つも聞こえなかった。おかしい、部屋にいれば聞こえるはずなのに……


「……なあ、確か従業員は『部屋にお運び致します』と言ってたよな?」

「ええ。部屋に運んでいたはずーーっ!? でも私達は部屋に運んだのを確認していない……」


 まさかの答えにたどり着くライン達。いやまさか従業員達が何かを企んでいるのか?


 疑心暗鬼になるライン達にドタバタと足音と声が聞こえる。


「おい、ここら辺でテレビが付いてたらしい。まだ捕まえて無い奴が居るぞ」

「ああ、まあもう寝てると思うが一応構えて行けよ」


 次第に近づいて来る足音にライン達は動き出す。

 寝ているマナンを起こし、慌ててクローゼットの中に3人で入る。キツいが少しの辛抱だ。


 クローゼットの中に入ったと同時にドアが開いて、銃と迷彩服の完全武装の男が中に入って来る。


 電気を点けて、中を確認し始める。ベットの下や隅を覗き込む男に3人の心臓は激しく高鳴り、鳴り止まない。


 またラインは他の事も心臓の鼓動を早くしていた。密着しているティナから柔らかと風呂出たばかりなのかシャンプーの香りが香ってくる。その事が更にさっきリエとの事すら思い出させる。


 俺のバカ野郎!! こんな時に変な事考えるな!!


 などと脳内で攻防している間に男はテレビを消して部屋を出て行く。


 3人は崩れるようにクローゼットから出る。


「はぁぁ……怖かったぁ」


 胸に手を置くティナにマナンは詰め寄る。


「ねぇ!? これはどういう事なの!!」


 口調は激しいが、音量はかなり小さい。やはり雰囲気から何かを察しているのだろう。


「ちょっと、落ち着いて!! えーと、まだ確定では無いけど、グレン達が捕まっている可能性があるわ」


 その言葉に更に詰め寄るマナン。


「相手は? 戦力は? どこに?」


 矢継ぎ早に飛ばされる質問に頭を回すティナ。俺がフォローに入るか。


「マナン、正直な所、敵対勢力が複数人いて完全武装している事しか分からん。そして誰が敵かも分からない」


 悩むラインにマナンは落ち着きを取り戻す。


「分かった。……ラインはこれからどうするつもりなの?」


 もう動く前提でいるマナンにラインは満足気に微笑む。


「流石はマナンだな。話が早い。とりあえず、基本から行こう」


 ライン達は状況を整理し始める。


「まずは目的だ。何が勝利で、何が敗北なのか見極めなければならない。

 じゃあ俺達の勝利は?」


 2人を視線を向けるとポツリポツリと答える。


「敵の全滅?」


 ハテナマークが付くマナンにラインは付け加える。


「うん、もちろん敵の全滅が最高だが別にそうでも無くて良いだろう。最も低い条件で良い」


 首を捻るマナンに対して、ティナがはっと気付く。


「そっか!! グレン達の解放ね!!」


 100点満足の答えにラインは頷く。


「そうだ。最低グレン達が解放されればこちらは勝利だ。では敗北条件は?」


 次はマナンがすぐに答える。


「グレン達が殺される事かな」

「そう、グレン達に危害が及べば負けだ。そして俺達も誰も死んではならない」


 強い語尾に2人は頷く。

 もう誰も死なせたくは無い。


「良し、次は戦力の把握だ。こちらの戦力は?」

「僕達だけかな?」


 不安そうなマナンにティナがフォローする。


「いいえ、もしかしたら私達同様に隠れてる可能性が有るかもしれない」


 希望的観測だが、こちらの戦力を少しでも増やしたい今はこれが正解なはずだ。


「じゃあ、各部屋を当たって仲間を増やして行く感じ?」

「ああ、どこぞのゲームみたいだな」


 ふふっと笑うマナンとラインにティナが話を元に戻す。


「次に敵の戦力よね。これは分からないと言った方がいいわね」


 ティナの言葉に賛同する。


「ああ、人数も武装も魔法師の有無すらも分からない。こんな中、正面から仕掛けるのは愚行だ」


 敵がどこに居るかも分からないのに待ち伏せでもされていたら3秒も経たずに蜂の巣にされる俺達が容易に想像出来る。


「……とりあえず分かる事はこのくらいか。後は武器と偵察だな」


 頷くラインにマナンがちょっと待っててと声をかける。


 カバンを漁るマナンに一息付くライン達。


 ようやくカバンの中から出て来たのは黒塗りのハンドガン。


「は? 何で持ってきてんの?」


 驚くラインにマナンはどや顔で答える。


「どんな時も有事に備えとけってね」


 いやいや、まさかこんな事になるとは思って無かったでしょマナンさん。


 思い出したかのように銃を取り出したマナンにツッコミを入れるのは止めて、マナンに注意する。


「……ありがたいけど、今回は隠密作戦だ。だから銃よりは格闘の方が……」


 この言葉にマナンは落ち込み、ティナはガッツポーズする。

 はあ、まるで遊びの前じゃないか。


 緊張感の無い彼らにラインは自分の緊張が解けていくのを感じた。


 やっぱりこいつらとはやりやすいな。


 仲間のありがたみを再認識したラインは号令をかける。


「さて、行きましょうかね、俺達の初任務へ!!」


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