8-4 グレン死す!?
後書きのネタ知っている人居たかな?
アリーナの中央に咲いた赤い花は地面を赤く染め、会場を騒然とさせていた。
軍人で、もう何人も殺した経験の有るアイリーンだったが想定外のグレンの死に、腕で自分を抱き、震えていた。
「私は殺す気なんて無かったのに……何で発動しないのっ!?」
悲鳴のような非難を上げるアイリーンにルーカスは何も言えなかった。
ーー何で発動しなかったんだ? 試合前にも入念にチェックされるはずだ。発動しないのは誰かの陰謀か? それとも……
グレンがわざと発動させないよう弄ったのではないかという考えが浮かんだが、それでは意図が分からない。
ルーカスがアイリーンを抱きながら考えていると、ブライスが隣に立つ。
「……申し訳ない。我々の不手際で不快な思いをさせてしまいました」
ブライスは神妙な面持ちで頭を下げる。
ルーカスは首を横に振る。
「いえ、アイリーンも軍人です。これぐらいの事すぐに立ち直るでしょう」
下げているブライスの頭を上げさせる。
「ご配慮感謝します。とりあえず休憩所へ案内致しまーー」
言葉を言い切ろうとしたブライスは瞬時に言葉を切って、顔付きを険しい物に変える。
それに気付いたルーカスは身構えるが何も起こらない。
ルーカスの頭の中にハテナが浮かんだ時ーーブライスが突如消える。
そしてルーカスの背後に現れ、何かを地面に抑えつける。
突如起こった事態に会場の視線が集まる。
ルーカスとアイリーンもブライスの手元に視線を移すーー
ーーっ!?
アイリーンが声にならない小さな悲鳴を上げる。
悲鳴を上げたアイリーンの目線の先にはーーブライスに押さえつけられた黒装束を全身に着たグレンが居た。
アイリーンは慌てて死体を見るが、そこには人形が真っ二つになっていた。
「え? ……じゃあ、あれは偽物で……グレン君は生きているのね?」
安堵したアイリーンは再び体の力が抜け、地面に座り込んでしまった。
それを見たルーカスはほっとする。
アイリーンが悩み苦しまなくて済んだからだ。
アイリーンと同様に人形を見たルーカスはふと疑問に思う。
何故あの人形を我々はグレンと見間違えたのだろうか? と。
確かに血と内蔵らしきものが中から出て来たのだ。
答えが知りたくなってグレンに視線を送るとブライスが察したのか、グレンを促す。
「分かりました、答えますからそろそろこの拘束を解いて頂けませんかね?」
顔色を伺いながら、自分の上に乗っているブライスにお願いする。
ブライスはため息を付きながらグレンの拘束を解く。
拘束を解かれたグレンは服に付いた汚れを叩きながら起き上がる。
その表情はいつものヘラヘラとした物だ。
身体の骨をボキボキ鳴らしながら、質問に答える。
「流石は神速の英傑様ですわ。えーと、あれは只の人形で、血糊と豚の内蔵です。もちろんそれだけでは歴戦の皆様には通用しないと思いましたので、えーと、幻影を使ってました」
「ほう、幻影ですか……確かにこの人数に幻術を掛けるのは不可能に近い」
グレンとブライスは会場を見渡して笑う。
だがすぐにブライスはグレンに視線を戻す。
「で、理論は分かったがさっきの行動の理由は?」
さっきの行動とはグレンが隠形ーー姿を隠して近づく事だ。ステルスとも言えるだろうか。
ブライスの鋭い視線を受け、冷や汗を掻くグレン。
「えーとあれは何と言いますか……」
と歯切れの悪い物言いをするグレンにブライスは背後に回る。
「はっきり言え」
「は、はい!」
グレンは身体を震わせ、答え始める。
「ルーカス長官を狙ったのは面白ろ半分で……も、もちろん傷つけるつもりは全く有りませんでしたよ!?」
グレンの言い分にブライスは盛大なため息を付く。
「はぁぁぁぁぁ~~………もう良い。おい、誰かコイツを連れて行きなさい」
屈強な兵士に囲まれ、為す術も無く連れて行かれるグレン。
さて、グレンは明日の朝日が見れるだろうか。
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「とんだご無礼を致しました」
再びルーカスに頭を下げるブライス。
申し訳なさそうにしているブライスにルーカスは苦労を察する。
「我々は大丈夫ですよ。それに本人も攻撃するつもりは無かったようですし」
屈強な兵士達に連れて行かれているグレンを遠目で見ながら微笑む。
この事は問題にしないと言う配慮にブライスは感謝する。
「ご配慮感謝します、ルーカス長官。アイリーン嬢、楽しめましたかな?」
チラッとアイリーンの顔色を伺うブライス。
アイリーンは精一杯の笑顔で応える。
「はい、とても有意義な時間でした。このような場を設けて頂き、ありがとう御座いました」
天使のような笑顔のアイリーンにブライスは安堵する。
「そうでしたか。楽しんで頂いたみたいで良かったです。さて、そろそろ遅めの昼食に参りましょうか」
ブライスに促され、アイリーンは着替えに。ルーカスとブライスはアイリーンが帰って来るまで歓談に花を咲かせるのだった。
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帰りの飛行機の中、ルーカスはアイリーンと話をしていた。
「アイリーン、作り笑い見事だった」
微笑むルーカスにアイリーンは安堵する。
「良かったです。何とか誤魔化せたみたいですね。……流石はルーカス長官、良く私の表情を見ておいでで」
ブライスの前では不問にしたが、本人達はやはり不快だった。それと同時にアイリーンは護衛としての自分の実力不足も感じていた。
また天使のような笑顔を見せるアイリーンにルーカスはうんざりした顔をする。
「その微笑み、お前には合わないから俺の前では辞めろ。どうにも、違和感しか感じない」
普段は仏頂面のアイリーンが天使のような笑顔なんて、あり得ない。もちろん、表情は変化するが他人と会うときはほとんどが仏頂面だ。俺と話す時は表情をころころと変える奴だが、気を許してるのだろうか。
ルーカスの表情がしかめっ面になっているとアイリーンが微笑む。
やはりその笑みは自然だ。
「じゃあ今度から怒った時には微笑みますね?」
「辞めろ、恐怖しか感じない」
「なら効果てきめんじゃないですか」
お互いの噴き出すような笑い声は一時の休息を2人に与えていた。




