表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/146

5-3 射撃試験

次話で試験は終了する予定です。

長らく説明回お疲れ様です


9/29改稿

 

 武芸を使った試験の後、あの三人組のリーダー格ーーエドウィンはグレンとの試合が原因で医務室に運ばれて行った。


 なんと哀れな……


 という風に皆の気持ちは同じだった。




 さすがに運動試験がこれだけあると疲労も溜まって来る。だから今日はもう終わりらしい。


 明日は射撃とHAWの操縦だ。今日に比べれば楽な感じはするが、どうなのだろうか。


 そんな事を思いながら寮に向かっていると、ティナとばったり出会う。

 ティナはラインより一足先に寮に戻っていて、既にシャワーを浴びたティナは上にはTシャツ1枚、下にはショートパンツというラフな格好だ。


 まあ、もう今日は飯と風呂と寝るだけだからな……


 とラインはどうでも良い事を考えていると、ティナはラインに目の前まで近づいて肩を掴み強く揺すって来る。


「ちょっと、ライン!! 一体グレンは何者なのよ!? あの身体捌きやナイフ捌き!! あれで魔法の痕跡が見えないなんておかしいわよ!!」


 肩を掴まれ、グワングワンと頭を揺らされるライン。詰め寄るティナの目は少し血走っていた。


 そんなティナにラインはもはや聞いておらず、ボーッとしてティナを眺めているとふとティナの胸元が目に入る。

 汗かシャワーの水か分からないが、その水滴が胸元に入って行くーーこのエロさにラインは目を奪われる。


 だが、直ぐにティナの声によって幸せから現実に呼び戻される。


「ちょっと、ライン聞いてるの?」


 そう言うティナはラインの目を覗き込む。

 ハッとしてラインは思考を取り戻す。


「ああ、すまない。疲れて、少しボーッとしていた。……グレンが強い理由は俺にも分からないんだ……」


 目を伏せて言うラインにティナは察したのかそれ以上は聞いて来なかった。


「そう。……まあ、これから明らかにしてやるわ。ライン、お休み」


 ティナは手をフリフリしながら部屋に戻っていく。


 その姿を見送りながら、


(グレン……俺の知らない間にお前に何があったんだ?)


 と思考を巡らすラインだった。






 -----


 次の日、次の試験ーー射撃試験が行われる。


 室内の射撃場に集合する。


 入って直ぐに左右仕切り付きの台がズラリと並び、その台から離れた所に人の形をした的がある。


 射撃場の中はかなり広く、射撃台の数も多い。


 ここは基本的に上級生も自主練習で使うので、人気は高い。だが今はライン達の試験の為、貸切となっている。


 ライン達がキョロキョロと射撃場を興味深く見回していると、射撃試験の教官が入って来る。


 それに気づいたライン達は引き締め敬礼をする。

 教官も同じく返しながら、前に立つ。


「初めまして。射撃教官のジェームズだ。これからここを利用するのは数え切れない程になるだろう。魔法が存在している今だが、未だ銃火器は主戦力だ」


 全体の割合で見ると魔法が使える者は1%にも遠く及ばない。


 地球連合国でも魔法師は3000人程度。エルス国は600人程度だ。


 国力を比べるとエルス国の魔法師の割合はとても多い。100倍以上の国力を持つ地球連合国に比べ、魔法師の差は6倍でしか無い。

 どれだけエルス国が魔法師の育成に掛けているかが一目瞭然だ。


 だがそんなエルス国でも魔法師の割合はほんの少しである。毎年60人近くが魔法師となっているが、依然、ほとんどの兵士が銃火器を使用する時代だ。


 また魔法には無い、銃のメリットが存在する。それは複数に渡るが、まずは発射速度。


 発射速度、魔法は魔力を術式に組み込み、変換するまでのタイムラグが発生する。

 だが銃はもはやコンマレベルのラグで撃てる。もちろん魔法も練習をこなせば早くなるが、銃のようになる日ははるか遠い。


 次に弾速だ。弾速は銃は音速を超える物ばかりだが、魔法はほとんどが精々野球の時速150kmぐらいだろうか。もちろん魔法に寄ってこれ以上の速さも実現出来るが、良く使われる魔法はこの程度だ。


 そして互換性。いやリロードと言うべきか。魔法は魔力が尽きたら終わりに対し、銃は弾の大きささえ合っていればリロードは無限大だ。


 まだまだ銃のメリットはあるがとりあえずこんな物だろう。


 こう並べると


 あれ? 魔法って弱くない?


 となるが魔法のメリットも少し挙げて行く。


 まず威力。もちろん人を殺すには銃で十分だが、魔法は範囲攻撃。また壁や建物を貫通する事すら可能だ。そして威力は簡単に戦車砲並みの威力を出せる。


 次に携帯性の良さ。銃火器とは違い、火力を出すにはその分重い物を持たなければならない事は無い。魔法師その身体一つあれば良い。魔力さえ尽きなければ、その火力は戦車大隊にも匹敵するだろう。


 そして汎用性の高さ。魔法師がいると火力から回復、防御、索敵等何でもこなせる。

 戦車砲以上の火力を保有し、戦車砲も防げる防御力を持ち、隠れても分かるレーダーを持ち、死んで無ければ治療出来る回復力。

 このように魔法師が居るだけで戦力はかなり変わってしまう。


 ざっとこの程度上げたが、魔法師がどれだけチートかお解り頂けたろうか。

 もちろんこの全てが出来る魔法師はそう居ない。


 このように魔法師は居るだけ居れば戦力の向上に繋がるのだが、各国未だ少数の育成しか出来て居ないのである。


 そして魔法師に銃を教えるのは魔法のデメリットを補う為である。銃と魔法を両方使いこなすと、かなり弱点が少なくなって来るのだ。






 -----


 ジェームズ教官は話を続ける。


「だから君達には銃を扱いを身に付けて貰う。今日は実弾は使わず、ペイント弾を使う。さあドンドン始めろ」


 空いている台に次々と生徒が入って行き、説明された通りに射撃を行う。事前に説明されたのは使い方と注意点、簡単なコツだけだ。


 弾は5発。20m離れた的にハンドガンで撃ち込む。


 そしてもちろん的に当たる生徒はほとんど居ない。たまに当たるのはマグレだ。


 そしてラインの番が来る。


 置いて有るハンドガンを手にするとその重みはかなりずっしりと手に来る。その重みはこれが本物なのかと実感させる物だった。


 銃を構え、的の中心を狙って引き金を引くーー


 バアァァァン


 という雷が落ちたような音と身体にタックルされたような衝撃を受ける。


 そして弾はーー天井に当たっていた。


 銃口は見事に反動で上を向いてしまい、その先は天井だ。


 ラインは呆然とするが、まだ試験の途中、次を撃つ。


 また雷が落ちたような音と強い衝撃がラインを襲うが、1回経験した分対処出来たがーー


 弾は的から遠く離れた所に弾着する。


 その後二発撃つが、同じように的には当たらない。


 そして最後の一発。ラインは集中して狙うーー


 バアァァァン


 と音を発して放たれた銃弾は


 ーー隣の的の中心に当たっていた。


 この結果に何とも言えない気持ちになったラインは呆然としながらトボトボと戻る。


 戻るとティナが顔を隠して肩を震わしていた。あれは絶対笑っている。


 ラインはムッとしたが、結果は見事な程ダメ。あきらめ半分だ。


 その後ティナも撃つが、これも見事な程全て天井。


 これにはラインも顔を隠して笑うしか無かった。






 -----


 そして、注目のグレン。


 今まで全ての試験に置いて、1位を取って来た優等生。もちろん態度は優等生に遠く及ばない。


 台に置いてあるハンドガンを手に取ると右手だけで持ち、的に右手を突き出して5連射する。


 長い轟音が終わった後、皆が的に注目する。


 的にはーー


 ーー1発も当たっていなかった。


 さすがに天井では無かったが、的には一発も当たって居らず皆呆然としていた。


 え? どういう事? 


 という雰囲気が流れる中、グレンは


「やっぱり映画通り行かないよなぁ」


 と落胆する。


 その言葉にジェームズ教官は反応する。


「君は遊んでいたのか!? 片手がダメなら両手で撃ちなさい」


 ジェームズ教官はグレンにもう一度やるよう催促するが、グレンは横に首を振る。


「俺は銃はダメだ。だからやる意味は無い」


 結局この後、グレンはやらされるのだが、両手でも全く当たらなかった。


 この時、皆は理解する。


 グレンでも出来ない物は有るんだなと。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ