5-1 格闘術試験
9/29改稿
魔力量測定の後、全員、迷彩服に着替えてアリーナに向かう。
次のテストーー格闘術だ。
格闘術と言っても、空手などの武芸とは違う。
武芸は主に型や、心構えが中心とるが、格闘術は人を殺す為に見つけるのだ。
勿論、基本的な型や技は有るが、結局の所は個人の自由だ。自分がしっくり来るやり方をすれば良い。
しかし、型にも長年の経験と合理性が有るのも忘れてはいけない。
これを踏まえた上で自分の型を決めれば良い。
さて、アリーナの中で整列して待っていると教官ーーゴリが入って来る。
「敬礼!!」の声と共にゴリに対し、敬礼する。
これに対し、ゴリもビシィッという音が聞こえるのではというぐらい敬礼が決まっていた。
「ふむ、敬礼も様になって来たな。まあ、俺には適わんがな、ガハッハッハッ」
大声で自画自賛してくるゴリ。
(まだ入って来たばかりだから出来ないの当たり前だろ……)
と隠れながら苦笑いするラインだった。
試験内容は2人で格闘戦を行う事。
急所を狙うのは禁止。
急所以外ならば治療魔法で大体1日で回復する。
開始のホイッスルの共に戦いが始まる。
余りにも一方的、危険な行為があった場合、ゴリが止めに入り、エマが治療する。そのため試合は2人毎に行われる。
そして、試合が始まるがどちらも素人同士。子供の喧嘩のような試合ばかりだ。
大した怪我も無く、試合が消化されていく……
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そんな中、注目の試合が始まる。
グレンvsティナの試合だ。
今までの様子で二人が常人では無い事は薄明だ。
しかし、二人が魔法師で有るかも定かでは無い。
魔法師という定義は魔法ーー教育機関によって教えられるーーを習得している者を指す。
しかし、現実にはなぜか力を手にした者や一族の血筋によって力を手にする者も存在する。また魔法とは思えない力を使う者さえ存在する。
そう、ティナは魔法師であると言えるが、グレン……グレンが魔法師とは言えないのだ。
なぜか、グレンからは魔法の痕跡が感じられ無いのだ。
普通、魔法使う時には魔力を使い術式を起動させ、魔法を発動させるのだが、グレンはその予備動作、魔力の流れが読めないのだ。
まあ流れ等を感じているのは教師陣のエマやゴリだが。
ライン達には、ティナがスイッチを入れるような感じで戦うのが分かるのだがグレンはいつ魔法を発動させているのか分からない。
魔法というのは魔力を使う手段の一つで主に体系化された物で、他の人に教える事は理論上可能である(難易度やセンスがあるので誰でもとは……)
しかし、この世界には知られてない魔力の使い方があり、それを使える者を超能力者や超人と呼ぶ(意味不明な能力等)
そう、正しくティナが魔法師、グレンが魔法師以外と言った方が良いだろう。
魔法師以外には超能力者や超人と呼ばれたりする。
ホイッスルが鳴り、試合が始まる。
全員が固唾をのんで見守っている中、最初に動き出したのはティナ。
走り出す瞬間、スイッチを入れたような感じが見て分かる。
そこからはものすごい高速でグレンに一直線に突撃するーー
ーーだがグレンは身体を半身逸らして避けるーー
ーーがティナは自分の攻撃避けられるのが分かっていたのか、自分の先に魔力の壁を張り、蹴って方向転換する。
これを見たエマとゴリは感心する。
魔法師として習う事は教科書通りで応用力が少ない。
だから柔軟な考え方が出来る生徒が求められている中、ティナは自分で誰からも教えられずに発想の転換をしたのだ。
この変則的な動きに堪らず、グレンは両腕を交差させ防ぐが勢いを殺せず吹き飛ばされる。
飛ばされたグレンは両手を地面に付け、クルッと一回転。
地面に体操選手のように見事に着地。
「……ふう、見事な一発だわ。腕が折れたら女も抱けねえ」
攻撃をクロスして防御した両腕をプラプラとさせておどけるグレン。
その反応に
「それは惜しい事したわね。もう少し力を入れるべきだったかしら?」
と拳をパキパキと鳴らすティナ。
2人はやってる事はスゴイが、とても楽しそうだ。
さっきは余裕な発言をしたが、ティナは内心、焦っていた。
(コイツ、精一杯の一撃を食らっても腕すら折れないなんて……)
とグレンの実力の程度を測れずにいた。
グレンの口では『腕が折れそう』等と言っているが、見事な着地をする程の余裕さが有るように見える。
ーーこの程度では訳が無いのかもしれないーー
という考えがティナの頭の中を過ぎる。
そんなティナをよそにグレンはにやけた顔のままティナを手でクイクイと挑発してくる。
(ーーコイツ!!)
ティナはグレンの挑発に乗ってしまう。
(どんな手品か分からないけど、次は防御させない!!)
そんな強い思いで更なる攻撃を仕掛ける。高速で突撃し、外れたら、魔力の壁を蹴りまた突撃する。これを繰り返す。
正にライン達から見たら、グレンがかまいたちを受けているような感じだ。
しかし、グレンは身体を少し動かすだけで避けていた。もはやもてあそばれていたのである。
しばらく経つと飽きてきたのか、グレンは動き出す。
(くっ……当たらない……コイツ、後ろにも目が付いているとでも言うの!? さっきは正面だから防御されたけど、今回は死角からも攻撃してるのに掠りもしないなんて……)
少し焦りが出て来たティナに対し、グレンがチラッとこちらを見る。
(ーーっ!? こっちを見た!?)
そう思った瞬間、目の前にグレンが居た。
ーーえっ!?
と思った時には既に腹に掌底を打ち込まれていて、
ーーガハッ
という声にならない声がティナの口から漏れていた。
よろめいたティナは力を失ったように崩れ落ちる。
その瞬間試合終了のホイッスルが鳴り、エマが飛んで来るように素早くティナの診察と治療を始める。
(……掌底。掌底は外側より内側にダメージを与える技。普通の人には使えない技のはず。でもグレン君は見事な掌底だった)
エマも掌底が使えるが、熟練してる訳でも、スゴイ師匠が居た訳では無い。
それなのにグレンは18歳で、エマを超える見事な掌底を魅せたのであった。
(一体グレン君は何者なの?)
と治療しながら考えていると、ティナが少し呻いて意識を取り戻す。
(ーー嘘でしょ!? もう意識を取り戻すなんて!!)
掌底は内側にダメージを与える技。だから内臓が逝ってる可能性もあったのだ。
エマは一瞬頭を真っ白にさせるが、軍人であり、教師。頭を直ぐに切り替え診察する。
するとティナの身体は全くの正常だったのだ。
(まさか……グレン君の放った掌底は上手く脳振盪だけ起こしたというの!?)
信じられない事だが、ティナには不死身とか超回復とかの超能力は無いのでグレンの力量なのだろう。
そんな技量を何処で身に付けたのか、グレンの中学、高校時代が不明な点。
それしか無いとエマは自分に言い聞かせているのであった。




