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1-3 サラに異変が……

 -火星 ユーリとサラの部屋-


 いつも通り、チャイムで2人とも飛び出すように起きた。最初は耳障りなチャイムだったが、最近は慣れて来た。学校のチャイムの目覚まし版と言えば分かりやすいだろうか。


 そしていつも通りご飯を食べ、作業をし、布団で寝た。


 たまに服の交換や風呂に入れた。入れた日は幸せである。


 小さな幸せを噛みしめながら毎日を過ごしていた。


 しかし少しずつ、幸せは崩れて行く……






 ------


 1ヶ月ぐらい経ち、作業にも慣れた頃だった。


 ユーリは作業を終え、部屋に帰って来て、ベッドでゴロゴロしているとサラが遅れて入って来た。


 いつもサラの方が早いのに今日は遅かったのである。


 ユーリは心配になり、サラに尋ねた。


「サラ、今日はどうしたの? 遅かったね」

「うん……友達と話してたの」


 サラはそう言い、ベッドに近づくと躓いて転んでしまった。


 ユーリは慌てて、サラに駆け寄る。


「サラ、大丈夫!?」


 サラの足を見ると怪我をしていた。


 その痛々しい様子にユーリは不安になり、サラに尋ねた。


 サラは苦笑いして、答える。


「私、階段で踏み外して転んだの……バカみたい」

「そうだったのか……手を貸すよ」


 ユーリはサラに手を差し出した。


 サラはありがとうと言って、手を取ってベッドに腰掛けた。


 ユーリは救急箱取って来ると言って、部屋を飛び出た。


 ユーリは確か救急箱は備品室にあったような……と逸る気持ちを抑え、出来るだけ早く備品室に走った。






 ------


 ユーリが戻った時、サラはすやすやと寝ていた。


 サラは怪我したのに良く寝れるな……


 と思ったが頭を切り替える。


 ふと、怪我を見るとアザに成っていた。


 やっぱり疲れてるのかな……今度マッサージでもしてあげようかな……


 もちろんユーリはマッサージ師の免許など無い。

 だがその優しさはサラに届くだろう。


 ユーリも布団に入ったらすぐに寝てしまった。

 慣れて来たと言えども重労働に変わりない。

 いつも通り深い眠りに落ちてしまった。






 -------


 いつも通り朝に放送が流れる。


 そしていつも通りに飛び起きて、食堂に向かうはずだった。


 ユーリは飛び起きたがサラが起きて来ないのであった。


(サラが起きてない……怪我かな?)


 ユーリはサラに近づいた。

 そして気づいてしまった。


 サラが泣いている事に。


「サラ! 怪我が痛むの?」

「う、うん。怪我が痛くて泣いちゃった」


 ユーリは考えた。食堂に早く行かなければこのままではサラは処刑されてしまう。


 必死なユーリの頭の中にふとひらめく。


 サラの事を話せば、ゆっくり行くのを認めてくれるのでは……と。


 ユーリは部屋を飛び出して、兵士に駆け寄った。


「すみません、ルームメイトが足を怪我をしているのでゆっくり行って良いですか?」

「……ルームメイトを見せろ」


 ユーリは兵士を部屋へ案内した。


 兵士はサラに近づき、怪我を見ると無線で一言二言伝えるとユーリを追い払う。


「お前は食堂に行ってろ。話は付けた」

「で、でもサラは?」

「俺が連れて行く。さっさと行け!」


 余りの兵士の気迫にユーリは一目サラを見て、走り去って行った。


 兵士の不敵な笑みを残して。


 その事にユーリは気付かなかった。




 -------


 ユーリは食堂に戻ると食事は始まっていた。

 だが、誰もユーリを咎める者も居なかった。


 ユーリは席に着くと食事を始めた。


 だが上の空である。


(サラ大丈夫かな? 後で食事貰えるよね? 治療して貰えるよね?)


 頭の中はサラの事でいっぱいだった。


 だが、食事の手は止めなかった。習慣付いているからである。


 逸る気持ちを抑え、食べる手を止めなかった。


 そしてユーリは時間になると作業に向かって行った。






 ------


 作業が終わると走って部屋に戻った。


 軽く息切れをしながら部屋を見たがサラは居なかった。


(まだ治療中なのかな……今日は戻って来ないかもしれないな)


 ユーリは不安を抑え布団に潜った。


 就寝時間まで待ったがサラは戻って来なかった。






 -----


 だが次の日もサラは帰って来なかった。




 ------


 次の日も……




 ------


 次の日も……





 ------


 さすがにサラが帰って来ない日が長いのでユーリは兵士に聞いてみた。


「すみません、ルームメイトのサラが帰って来ないのですが知りませんか?」

「まだ入院中だ。会わせる訳には行かん」

「何でですか!? 足の怪我ですよ!? 面会謝絶ってどういう事ですか!?」

「俺に言われても知らん。上の命令だ」

「会わせて下さいよ!」


 ユーリは兵士に掴みかかった。


 だが、相手は腐っても大人である。


「この!! クソガキが!!」


 兵士はユーリの腰を掴み投げ飛ばす。


 壁に思いっきり叩きつけられる。


(くっ、何でサラが帰って来ないんだ! サラは何もしてないのに!)


 しかし痛みを堪えながら問う問題に誰も答えてくれなかった……





 -----


 壁に打ちつけられたら痛みを堪えながら、ユーリは部屋に戻って考えていた。


(何でサラは捕まっているんだ? 怪我を治せば、また働けるのに……)


 だが、考えても考えても答えは出て来なかった。


 そして答えが出ないまま、睡魔が襲って来る。肉体的にも精神的にも疲れているユーリに抗うすべは無い。


 ユーリは考えている内に睡魔に落ちて行った。





 -----


 次の日ユーリはサイオンに聞いていた。


「サイオンさん。怪我人は戻って来ますよね?」


 初め、サイオンはその質問の意味が分からなかった。


「坊主、怪我人は治療が終わったら作業に戻されるのは当たり前だ」


 ユーリは少し考えてサイオンに尋ねた。


「じゃあ、なぜ僕のルームメイトは帰って来ないんですか?」


 サイオンは驚いたのと同時に頭の中に一つの可能性が過ぎる。


「坊主……まさかお前のルームメイトは女か?」


 ユーリはこくりと頷いた。


 サイオンは顎に手を置き、うーむと唸るとユーリに尋ねた。


「その子は痣が無かったか? 身体のどこかに」


 ユーリは再び頷いた。


 するとサイオンはため息をついた。

 ユーリはその様子を見て、不安そうに詰め寄る。


「サイオンさん! 何か知っているのなら教えてください!」


 サイオンは少し考えた後、口を開いた。


「実はな……」



 ------















 -サラサイド-


 時間は少し遡る。


 サラも作業に慣れはじめ、少し余裕が出て来た時、ある噂が耳に入る。


 今は作業が終わり、ベティの部屋で女子会をしようとする所である。


「おはよーサラ。ねえ、知ってるあの噂?」

「おはよーベティ。噂? 知らないわ。教えてー」

「最近ね、人が居なくなっているのよ」

「えっ? 脱走?」

「分からないわ。でも、愛の逃避行かもしれないわ!」


 そう言いながらベティは目を輝かせる。


「それが噂なの?」

「ええ、愛の逃避行……じゃなくて脱走の事よ」

「誰か見た人はいるの?」

「それが居ないのよ。確かに広めたらバレてしまうかもしれないからかもね」


 サラは考えた。


 もし、逃げ道が有るなら逃げたい。


 ユーリと一緒に……ユーリと一緒なら貧しくたっていい。


「ちょっと、サラ。聞いてるの?」


 サラはベティの呼びかけにはっとした。


 それを見たベティはニヤニヤし始める。


「サラ~? あなたには愛の逃避行する相手が居るのね? あっ、ルームメイトのユーリ君ね! いつも私に話すもんね~」

「えっ、あ、い、……そうよ」

「良いわね~青春して。私もボーイフレンド見つけようかしら」

「……いつかあなたにもでも出来るわよ」

「ちょっと! 最初の間は何!?」


 2人は楽しくイチャイチャしていた。


 だが非情にも魔の手はすぐ側まで来ていた。





 -----


(そろそろ帰ろうかしら……)


 サラはベティと話し終わって散策していた。


 散策と行っても、監獄内である。ベティの部屋から戻る途中であった。


 特に目的は無かったけど、何か新しい発見が見つかったら嬉しいぐらいの気持ちである。


 だが、今日はしなかった方が良かった。



 サラは廊下を歩いていると、兵士に声をかけられた。


「おい、お前は115236だな?」


 サラは少し怯えながら答えた。


「そうです」

「なら着いて来い。日頃の行いが良いから褒美をやろう」


 サラは少し不思議に思ったが、ユーリも喜んでくれれば良いかなと思って着いて行った。事実、行いが良いと物をくれる時がある。


 着いて行くとそこは兵士の詰め所だった。


 詰め所の奥に入ると兵士は床を触り、開けた。


(えっ? こんな所に地下の入り口が……)


「ほら、入れ」


 サラは兵士に連れられ入って行った。


 通路は2人がギリギリ横に並べるぐらいの横幅だった。


 奥に進むと門番が居た。


 兵士は門番と一言二言話すと扉を開けて貰った。


「この中にある。着いて来い」


 サラは兵士に着いて行くとそこには丸々と太った男が居た。


 太った男はニヤニヤしながらサラを上から下までじっくり見ると口を開いた。


「うむ! なかなかの上玉だ! 買おう!」


 男は懐から一枚の紙を出すと兵士に渡した。


「ありがとうございます。まさかこのぐらいの年齢が売れるなんてあなた様だけでございます。今後もご贔屓にお願いします。ではあちらの部屋をお使い下さい」


 と言いながら兵士は頭を下げた。


(えっ? 何が起きてるの? 誰なのこの男は?)


 サラは混乱していた。


 サラは太った男に恐る恐る質問した。


「あの……良いものが貰えるが貰えると思って来たのですが……」


 すると男はニヤニヤしながらサラに答えた。


「うむ! 極上のプレゼントをしてやろう! とても良いものだぞ!」


 と言いながら、サラの肩を抱いて奥に消えて行った……

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